愛するクラブが長年拠点としてきたスタジアムに別れを告げるとなれば、記念に何かを持ち帰りたいと思うファンがいても不思議ではない。だが、まだ必要となるイスを持ち帰られたのでは、クラブもたまったものではないだろう。

アトレティコ・マドリーは16日、本拠地ビセンテ・カルデロンのイスをシーズンチケット保有者にいずれプレゼントすると発表した。それ以外のイスも売りに出すという。カルデロンに思い入れのあるサポーターにとっては朗報だ。


だが、クラブがこう決断したのには理由がある。10日に行われたチャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグで、一部のサポーターがイスを持ち帰ってしまったからだ。

アトレティコがレアル・マドリーに2-1と勝利したものの、2戦合計スコアで2-4と敗退を余儀なくされた10日の試合は、カルデロンでの最後のマドリッドダービーであり、欧州カップ戦の試合としてもラストゲームだった。そのため、一部のファンは記念として、スタジアムのイスを取り外して持ち帰ったのである。

しかし、カルデロンでの試合がすべて終了したわけではない。アトレティコは21日の最終節でアスレティック・ビルバオをカルデロンで迎え撃つ。また、27日に行われるバルセロナとアラベスのコパ・デル・レイ決勝も、舞台はカルデロンだ。

その翌日にも、アトレティコのレジェンドと現チームによるチャリティーマッチが予定されている。ほかにもガンズ・アンド・ローゼズのコンサートなど、今年いっぱいは数々のイベントでカルデロンが使用されるのだ。当然、イスがなくては問題となる。

そこで、クラブはCLの試合後にイスを持ち帰ったファンはすでに特定されていると明かし、シーズンチケットを6カ月から2年にわたって使用禁止とする可能性を示唆。さらにスペインの法律でも罰せられることがあると強調した。

そのうえで、アトレティコは21日のチーム最終戦後も同様の行為に及ばないように要求。ファンへの「信頼」を強調しつつ、全イベント終了後にイスを持ち帰れることにして報いると発表した。5月22日から6月30日まで、公式サイトを通じて申請できるという。

21日のビルバオ戦はアトレティコにとってカルデロンでの最後の公式戦となるため、最終節終了後にもファンがイスを持ち帰る「リスク」はある。クラブの粋な計らいに、サポーターも応えてほしいものだ。