近年、職住近接のコンパクトシティとして注目を浴びている福岡市。そこそこの都会でありながらも、身近なところに海や山といった自然が広がっているのも人気の秘密。人口も150万人を突破しています。

こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。ちょっと福岡に戻っているのですが、街中で自転車を漕いでるときに、見慣れた景色を掘り下げてみたいという誘惑に駆られました。人生の大半を過ごした場所だからこそ、私の知っている福岡を紹介したくなったのです。

◆通学路だった

高校の頃は自転車通学をしていました。のちの自転車世界一周に向けたトレーニングでした。福岡市の海沿いは平坦なので走りやすく、地元の姪浜から学校のある千代県庁口駅まで主に「明治通り」を通学路にしていました。ほぼ地下鉄の空港線に沿った道です。通い慣れた道だからこそ、15年経った今でもどこに何があるか分かります。そうしたこともあって、この通学路をベースに地元・福岡を紹介する記事を作りたいと思った次第です。

記事を作るとなったら写真が大事。旅行中もそうでしたが街歩きは自転車より徒歩の方が撮影の融通がききます。そういうことから、今回は姪浜から博多まで歩いてみることにしました。4月12日の挑戦です。



かつては博多駅から筑前簑島駅、筑前高宮駅、小笹駅、鳥飼駅、西新駅、姪浜駅とJR筑肥線が走っていたのですが、踏切も多く渋滞の要因となっていたようで、福岡市営地下鉄と一本化することで1983年に廃止。私鉄の西鉄も路面電車を運行していたのですが1979年に全廃しています。こうした理由から場所によっては電車がまったく地上を走ってないので、この区間は街がだいぶスッキリしているという印象です。

◆姪浜から博多まで歩く

こちらが起点となる姪浜駅。かつては写真の北口がメインでしたが、現在は開発の進んだ南口の方が賑わっています。



姪浜駅から北へ進んで明治通りへ。ここをずっとずっと天神に向かって歩いていくのです。

・愛宕神社

「日本三大愛宕」という枕詞が目を引く愛宕神社は地域一帯だと割りと大きめなしっかりとした神社です。そのつもりは無かったのですが、境内からの見晴らしは良かったものですから、ふと寄り道することにしてみました。愛宕山のてっぺんに神社があるのでちょっと山を登らないといけません。

愛宕神社 福岡

http://atagojinjya.com/

鳥居をくぐって山頂を目指します。



階段を駆け上って神社に到着。鈍った身体に心臓が口から飛び出しそうでした。



境内からは地域一帯が一望できます。



福岡タワーやヒルトン福岡シーホークといった百道浜(ももちはま)地区。



能古島という離島も博多湾に浮かんでいます。



階段を下りている途中に野球のバットとサッカーのボールを持ったお地蔵さんを発見。地元チームのソフトバンクホークスとアビスパ福岡を応援するお地蔵さんでした。



下りは車道を使いました。室見川の手前に出てきました。



・鳥飼ハウジング

神社から下りてくると、ゴリラがぶら下がっている鳥飼ハウジングのビルが目に飛び込んできます。地元の不動産会社です。



川側から見たゴリラビル。ちっちゃなときは車の窓からのゴリラが見える度にはしゃいでいました。ちょっと出かけた帰り道、このゴリラを通り過ぎると西区に戻ってきたと実感します。



頭にはピンクの花、まばゆい黄色のビキニ。実はお母さんという設定あり。



ぷりっとしたいいお尻でした。



不動産会社の鳥飼ハウジングではゴリラをモチーフにした「ゴリッパくん」というイメージキャラクターが活動しています。かつては、六本松にゴリッパくん(お父さん)、大濠公園に子どもと全部で3体がビルにぶら下がっていたのですが、2005年の福岡県西方沖地震の影響から、室見以外のゴリラは取り外されています。

鳥飼ハウジング ゴリッパくんの部屋

http://torikaih.com/other11_1.html

・室見川

ゴリラビルの先に福岡市の西区と早良区の境界となっている「室見川」があります。奥に見える福岡タワーの一帯が「百道浜(ももちはま)」です。椎名林檎さんの「正しい街」という曲に出てくる地名。



室見川を渡ったすぐのところにもう一つ「金屑川」という河川が出てきます。



・早良口

金屑川を渡った先にあるロイヤルホスト室見店。ここもずっと営業しています。



このロイヤルホストが角にある交差点は「早良口」という交通の要所。南に伸びる大きな道路は「原四つ角」「次郎丸」といった場所へと繋がります。



・藤崎バスターミナル

早良口の交差点を過ぎるとバスによる左折巻き込みに注意するポイントあり。



ロッテリア過ぎの「難所」という認識で気にも留めていなかったのですが、実は早良市民センターという公共施設でした。その隣は早良区役所。縁がない場所は気にしないと何の建物かも分からないですね。



一階はバスターミナルとなっています。ここも入った記憶がなく、地下鉄「藤崎駅」の出入り口もあって驚きました。



・リヤカー部隊

藤崎バス乗継ターミナルを過ぎると商店街への分岐があります。



自転車だと通らないのですが、歩きなのでちょっと覗いていみました。明治通りの一本南の道で「藤崎通り商店街」「高取商店街」「中西商店街」「西新中央商店街」といった商店街が連なっています。西新中央商店街はリヤカーを引いたおばちゃんが行商にやってくることで有名な場所。



・西新

西新あたりまで来ると福岡タワーが見えるポイントが出てきます。



福岡県立修猷館(しゅうゆうかん)高等学校は学区内随一の進学校。



・サザエさん通り

修猷館高校と先にあるドン・キホーテ西新店の間の道には「サザエさん通り」という名前が付けられています。ここの交差点も「脇山口」という交通の要所です。この脇山口から福岡タワー近くのシーサイドももち海浜公園入口までの南北の道がサザエさん通りになっていました。作者の長谷川町子さんは早良区百道の海辺を歩いていたときに、サザエさんの家族構成や名前を思い付いたそうで、そういった縁からサザエさんを活用した町おこしが行われています。

早良区 彩"食"健"美"の玉手箱 サザエさん通り

http://www.city.fukuoka.lg.jp/sawaraku/sawaraku-tamatebako/miryoku/sazaesan/

サザエさん通りを説明する大きな看板。



ドン・キホーテ西新店の手前にもシルエット像と案内板が設置されていました。



このサザエさん通り、誕生が2012年と真新しくピンとこない風景なので一度ちゃんと歩いてみたいところです。

・プラリバ

西新といえば地元の百貨店「岩田屋」の建物がランドマーク的な存在でした。ところが、岩田屋は経営不振によって2003年に撤退。代わりにいくつもの専門店が入った「プラリバ」という商業施設がオープンします。スーパーのサニー、無印良品、ユニクロ、本屋のリブロなどが営業していました。100円ショップのダイソーの大型店もあって便利でした。ですが、このプラリバも施設老朽化による建替えのために2015年7月末で閉店。

現在は解体作業中。見慣れた景色はどんな場所に生まれ変われるのでしょう。



更に進むと西新パレスというボウリング場があります。



またしても橋で「樋井川」という河川を渡ります。



・ヤフオクドーム

姪浜から5駅目の唐人町駅。



この唐人町駅はヤフオクドーム(福岡ドーム)の最寄り駅です。



またしても鳥飼ハウジングのバルーン。ゴリッパくんがウインクしています。



・ミスタードーナツ

姪浜から6駅目の大濠公園駅。その名の通りに大きな池のある公園があるのですが、その入口にミスタードーナツがあるのでちょっと休憩をはさみました。



ずいぶんと歩いたので糖分を補給します。初めての「ポン・デ・リング」でしたが、パン(小麦)でありながらモチモチと実に不思議な食感でした。



実はこの休憩にも意味がありまして、このミスタードーナツの店内にメリーゴーラウンドがあるのです。やけにファンシーな内装と気にはなっていたのですが、全国にも3店舗しかない珍しい店舗でした。使用不可でしたが、レトロな感じのジュークボックスもあって、ひと昔前のアメリカを彷彿させる店内です。

店内を遊園地のような華やか空気に変えてくれるメリーゴーラウンド。



パッパカ走るおうまさん。小さなお子さんを連れて行くと喜ぶかもしれませんね。



このメリーゴーラウンド、実際に動きます。

店内でメリーゴーラウンドが回るミスタードーナツ・大濠ショップ - YouTube

天井もガラス張りだったりと開放的で明るい店内でした。



姪浜からここまで1万0723歩です。



・大濠公園

休憩を済ませたところで、大濠公園の中に足を伸ばします。この大濠公園は、江戸時代には福岡城の外濠でした。今となっては信じられませんが、かつてこの場所は博多湾の入り江となっていて外海と繋がっていたそうです。昭和2年(1927年の)の東亜勧業博覧会に合わせて現在のような形に整備されます。大きな池のある公園で、橋や島を繋いで池の中央を歩いて渡ることができます。福岡市民憩いの場所です。

大濠公園|水と緑のオアシス

http://www.ohorikouen.jp/

大濠公園入口。



池を渡る道の途中にある浮見堂という東屋。



最近ではスワンボートや手こぎボートまであるんですね。



池には亀も生息していて、気持ちよさそうに甲羅干しをしていました。



大きな鯉も泳いでいました。両手で抱えると腰を落としてしまいそうな特大サイズ。



余談ですが、ベトナムのハノイにある「ホアンキエム湖」という観光スポットは、大濠公園のような景色が広がっていますので、福岡にお住まいの方はぜひ足を運んでみて下さい。私の場合は2年位地元を離れていたので、すごく懐かしくなりました。

・舞鶴公園

そのまま隣接する舞鶴公園へと進みます。ここは江戸時代、「福岡城」があった場所です。とはいっても他の都市のように天守がないので、お城の街という実感は地元民でも乏しかったり。

ここは桜の名所でもあって、平日にも関わらず大勢の花見客で賑わっていました。といいますか、前日まで一週間ほどぐずついたお天気だったのでようやくのお花見日和だったのです。



桜並木を歩きます。



春の訪れを告げるピンクの桜。くっきりとした原色でなく控えめな色ながらも見事に咲き乱れる、日本の風土にあった花だと毎年思うのです。



天守は無いのですが、こちらの「潮見櫓」のような建物は残っております。



明治通りから見えるお城のお堀。



公園に戻りまして、陸上競技場の外側を歩きます。こちらも桜並木でした。



・平和台球場

陸上競技場を抜けた後に出てくる大きな広場はかつての平和台球場跡地です。福岡ドームができるまでダイエーホークスの本拠地となった球場がありました。



平和台球場の歴史を伝えるモニュメント。



・小便小僧

明治通りに戻って、姪浜から7駅目の赤坂駅は中央区役所と接続しています。この中央区役所の前には水時計と2体の小便小僧が設置されています。



鉢巻に法被(はっぴ)とお祭りである博多祇園山笠の格好をした小僧さん。いつも元気におしっこを飛ばしています。



赤坂を進んでいくとダビデ像のような裸像が置いてあるの福岡市立青年センターという施設があります。ここはなんと2016年の3月末で閉鎖になっていました。



更に進むと西鉄グランドホテルという大きなホテルがあります。このホテル前の歩道には、グラフィックデザイナー松永真さんのアート作品が数点設置されています。、松永真さんはカルビーやベネッセといった会社のロゴを手がけている著名なお方。



福岡銀行のビルは内部を大きく切り出したようになっていて大迫力。有名な建築家、黒川紀章さんによる設計です。



・天神

そして、天神に到着。この交差点を更に進んで中洲川端駅、呉服町駅を越えた千代県庁口駅の近くに通っていた高校がありました。



天神は福岡で一番の繁華街。南北に貫くこちらの渡辺通りの左右に大型の商業ビルやオフィスビルが連なっています。



かつては栄華を極めたダイエーの旗艦店。今はイオンになっているのですが、屋上の看板ロゴはなぜか真っ白でした。



「Eye Love, Love 愛眼〜」と福岡に縁のある方なら歌うことのできる天神愛眼グループのメガネビル。



下層に大丸百貨店と高層に西日本新聞の入る西日本渡辺ビル。



天神まで来ると博多まではあと少し。ここからは通学路でなかったので、だいたいの感覚で歩きました。

中洲のそばにあるキャナルシティ博多という大型商業施設。



・櫛田神社

この櫛田神社だけは、どうしても紹介したかったので立ち寄ります。



ここには、毎年7月に行われる博多祇園山笠の飾り山が常設されています。お祭りの山笠は福岡の夏の風物詩。にじり鉢巻、法被(はっぴ)にふんどしの男たちが、お神輿のような山笠をかついで、市内を駆け巡ります。この山笠は櫛田神社とその氏子が主体となった奉納行事。だからこそ、櫛田神社には常時、山笠に関係のある資料が置いてあるのです。

博多祇園山笠公式サイト

http://www.hakatayamakasa.com/

こちらが櫛田神社の飾り山。



飾りは前と後ろで違っています。



昔はこの飾り山が市内を走っていたのですが、電線に引っかかるという理由から廃止。展示のみの役割へと変わります。それとは別に背丈の低い「舁き山(かきやま)」が登場。現代の山笠ではこの舁き山が市内を走っております。(分離前を再現した「走る飾り山」というのも1本あるみたいです)

櫛田神社の境内で「え、インド?」と自然な形で牛が座っていました。



調べてみると撫牛(なでうし)という祈願物でした。どこか身体に悪い所があれば、牛の同じところを撫でると、悪い所が牛に移って病気が治るという信仰です。また、願掛けの意味もありまして、願いが叶うようにと牛を撫でたりするようでした。

やけにお鼻がテカっているのは病気じゃなくて願掛けですよね。



・博多駅

ここまで来れば博多駅まであと一息。

道端に金印のオブジェを発見。



ようやく見えた博多駅。井筒屋がテナントと入っていた頃のイメージの方が強いのですが、阪急や東急ハンズの入るきらびやかなビルに生まれ変わっております。



ここをゴールにしました。



姪浜から博多まで歩くと2万3684歩でした。



姪浜から11駅目の博多駅。地下鉄の営業キロ数は9.8kmとなっていました。やるまでは見当がつきませんが、意外に歩けるものでした。いつになるか分かりませんが、「歩く旅」をやりたいという夢もありまして、貴重な経験となりました。

駅ビルの隣にある日本郵便の商業ビルKITTE博多の入口に世にも珍しいハート型のポストを発見。



こうして記事をまとめてみると「地元もいいものだ」としみじみ感じてしまいます。気に留めていなかったことを知るいい機会となりました。福岡を知っている方、お気に入りのスポットとかありましたでしょうか。福岡を知らない方、いつかぜひとも遊びに来て下さいね。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン

自転車世界一周取材中 http://shuutak.com

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