買収手続きが完了したマンCが手始めに獲得したのがロビーニョ。移籍金は当時のプレミア史上最高額の4300万ユーロ(約52億円)だった。(C)Getty Images

写真拡大

 移籍の自由化が事実上認められた1995年のボスマン判決以降、トランスファーマーケットでは数々のドラマが生まれてきた。過去10年に絞っても、大物たちのビッグディールやクラブ買収など、人々を驚かせる出来事は少なくなかった。なかでも、とくに強いインパクトを市場に与えたのは――。厳選して振り返る。

≪2008年9月≫
カタール資本の参入!『ADUG』がマンCを買収

 UAEの政府系投資ファンド『アブダビ・ユナイテッド・グループ』がタクシン・チナワット前オーナーからマンチェスター・Cの経営権を取得。手始めに当時のプレミア史上最高額でレアル・マドリーからロビーニョを獲得すると、以降もダビド・シルバやセルヒオ・アグエロなど潤沢な資金力を背景に次々と実力者を加え、急成長を遂げていく。この8年間で獲得したタイトルは5つ。マンチェスター・Cはイングランドを代表する強豪へと成り上がったのだった。

≪2011年7月≫
クラブ経営の健全化へ――ファイナンシャル・フェアプレー施行

 クラブの健全経営を義務付けるべく、ミシェル・プラティニ前UEFA会長の提唱により2011-12シーズンから導入されたのがファイナンシャル・フェアプレーだ。オーナー/会長の個人資産での赤字補填を原則禁じるこの制度によって、採算を度外視した過剰な投資(=大型補強)が制限されることに。

 その第1回審査(2014年5月)で基準をクリアできなかった9クラブのうち、パリSGとマンチェスター・Cには、高額の罰金、2014-15シーズンの選手獲得予算の制限などの重いペナルティーが科された。

≪2015年2月≫
移籍金の高騰を助長!? プレミアリーグの放映権料が大幅アップ

 上位陣のみならず下位のクラブでも市場で高い競争力を誇るプレミアリーグ勢。それを可能にしているのが高額の放映権収入だ。2015年2月、プレミアリーグは『スカイ・スポーツ』などと2016-17シーズンからの3年間で総額95億ユーロ(約1兆1400億円)という巨額の契約を交わした。

 このうちの50パーセントが20クラブに均等に、25パーセントが最終順位、残る25パーセントが放映試合数に応じて分配され、各クラブは懐が大幅に潤った。

 ちなみに、リーガ・エスパニョーラは今シーズンからの3年で26億5000万ユーロ(約3180億円)、ブンデスリーガは2017-18シーズンからの4年で46億4000万ユーロ(約5568億円)。プレミアリーグの優勢性は明らかだ。

≪2016年冬≫
移籍マーケットに衝撃! 吹き荒れる中国勢の「爆買い」旋風

 江蘇蘇寧がアレックス・テイシェイラを5000万ユーロ(約60億円)、広州恒大がジャクソン・マルティネスを4200万ユーロ(約50億円)で獲得するなど、2016年冬の移籍市場には中国勢による「爆買い」旋風が吹き荒れた。看過できないのが、20代の一線級が次々と札束攻勢の前に陥落した点。年金生活を求めて重鎮が金満リーグに渡る、以前の流れとは大きく異なる。

 旋風はその後もやむことなく、昨夏にフッキを5580万ユーロ(約67億円)で確保した上海上港が、今冬には6000万ユーロ(約72億円)でオスカールを確保。他にも上海申花がカルロス・テベスを4000万ユーロ(約48億円)とも言われる高額年俸で引き抜き、話題を集めた。

≪2016年8月≫
史上最高額の移籍金でポグバがマンチェスター・ユナイテッドへ!

 移籍市場の歴史を変える交渉がまとまったのは2016年8月初旬。史上最高額の1億500万ユーロ(約126億円/ボーナスを含めると1億1000万ユーロ)の移籍金でポール・ポグバのマンチェスター・U行きが決まった。23歳の若者を「1億ユーロのプレーヤー」にしたマンUは、その4年前に無償でユーベにさらわれている。そんな選手を超破格で買い戻したその判断も、歴史的で衝撃的だった。

※ワールドサッカーダイジェスト2017.05.04号より加筆・修正