中国人が韓国の慰安婦抗議活動を語る (C)孫向文/大洋図書

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 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2017年1月23日、韓国の大統領代行を務めるファン・ギョアン首相は、韓国の市民団体が中心となって設置された釜山市の慰安婦像について、「(慰安婦像設置は)政府でなく民間が行った。政府が関与し、こうしろああしろと言うのは難しい状況だ」と返答し、政府が市民団体の行為に関与することが困難な状態であることを発表しました。

■慰安婦抗議活動は韓国自身を傷つける?

 2015年12月、日本政府が日韓政府の慰安婦問題合意に基づいて設立された慰安婦財団(和解・癒し財団)に10億円を支払ったことにより韓国の慰安婦問題は解決したはずですが、現在の韓国では釜山市のみならず各地に慰安婦像が次々と設置されるなど、抗議活動がますます活発化しています。日本の野党議員、または左派・リベラル層の一部には韓国側を応援する声がありますが、一連の抗議活動は結果的に韓国側の首を絞める行為だと僕は思います。

 韓国側の抗議活動によって起こり得る弊害を記述します。現在、北朝鮮は積極的に核ミサイル開発を行っており、韓国側は対抗措置としてTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)の配備を進めています。本来は北朝鮮に対抗するためのTHAAD配備ですが、なぜか中国側が批判的な意見を寄せています。

 なぜなら韓国国内に大量のTHAADが設置されれば、中国が日米を標的に配備されている核ミサイルが発射された場合、迎撃可能になるためです。現在、中共政府は韓国の対応を受け「禁韓令」を発令し、韓国人タレントの中国での活動禁止、韓流ドラマの放送禁止、ネット上からの削除、バラエティー番組に出演した韓国人にモザイク処理をほどこすといったことを実施しています。禁韓令により中国からの韓国への広告収入は大幅に減少しており、これは経済が失速している韓国にとって大きな打撃となっています。

 現在、韓国の一部野党が執拗に賠償金を求める慰安婦財団の行為を「恥を知れ」と批判し、同時に慰安婦財団に干渉しない現在の韓国政権の態度を強く批判しています。さらに抗議活動の継続を受け、17年1月6日に日本政府は韓国との通貨スワップ協定(あらかじめ決定した為替レートで通貨交換する協定)の無期限中断を決定しました。

 現在、一部在日韓国人団体が抗議活動を中断するように求めていますが、これは日本側の制裁が長期化した場合、自らの経済に影響が及ぶと判断したからだと思います。いずれにせよ韓国側の抗議活動は日本側との経済、外交面を悪化させる行為です。これは中国から攻撃されている現在の韓国にとって大変不利な事情といえます。

 韓国の市民団体、慰安婦財団は従軍慰安婦問題に対する一連の抗議活動を「愛国行為」と呼びます。しかし、僕は全く異なると思います。もともと慰安婦問題は、日本の朝日新聞が1980年代に大々的に取り上げたことに端を発しており、後の調査で多くの誇張・捏造が記述されていたことが判明しました。

 創作同然の慰安婦問題ですが、経済が低迷している時に慰安婦財団を発足させ日本政府に賠償金を要求するなど、韓国側は日本からお金をたかる手口として利用しています。ですが上述の例を見ればわかるように、場当たり的なたかり行為は結果的に国家の信用を低下させます。つまり抗議活動は「売国行為」です。

 そして、現在でも韓国国内には伊藤博文を暗殺した安重根を英雄視する声が多数存在します。朝鮮併合を阻止しようとしたとされる安重根ですが、伊藤博文は明治維新後、多くの西洋文明を日本に輸入し和訳して近代化の土台を築き上げた人物の一人です。明治期の日本で作られた医学、化学、美術、音楽に関する技術や言葉は当時の中国、朝鮮半島に大量に輸出され浸透しました。いわば伊藤博文は「アジア近代文明の父」なのです。

 韓国では日本併合時代は「朝鮮半島への侵略、植民地支配」と呼ばれます。しかし日本併合により旧態然とした李氏朝鮮時代が終結し、朝鮮半島が近代化したのもまた事実です。いわば日本併合は朝鮮半島にとって日本の明治維新、あるいは中国の辛亥革命のような民主化革命ともいえます。

 一方、アジア近代文明の父を殺害した安重根は旧体制に依存した「売国奴」といえるでしょう。彼の行為は中国・清朝末期に封建的な王朝体制を擁護して攘夷運動を行った義和団と同様のものです。現在の中国では政府、国民ともども義和団の行為を正義として評価していません。僕は韓国が安重根を英雄視する限り真の民主国家にはなりえないと思います。

 韓国の市民団体・慰安婦財団の抗議活動は虚構を根拠にしたゆすり・たかり行為に過ぎません。僕は彼らの活動を擁護する日本の議員は国政に携わる資格がないと考えます。

 そしてパク・クネ大統領の弾劾により、近い将来、韓国には新大統領が誕生することが予想されますが、僕は冷静な視点をもち慰安婦抗議活動を規制できる人物の就任を期待します。

著者プロフィール


漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。