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●スマートウオッチにもなる血圧計
米ラスベガスで開催されたCES 2017において、オムロン ヘルスケアは2つの試作品を展示してみせた。

ひとつは、「Project Zero 2.0」の名称で参考展示した腕時計型の血圧計だ。これまでの血圧計は、常時、身に着けておくことが難しかったが、カフ部の小型化をはじめ全体の小型軽量化を図り、腕時計のように取り付けることが可能になった。24時間、いつでも計測できるようになるという。

同社は昨年のCES 2016でも、超小型の手首式血圧計を参考展示していた。CES 2017の新たな製品では、それに比べて約半分の薄さと重量を実現できた模様だ。ただし、血圧を測定する技術の薄型化など、詳細については明らかにしなかった。

腕時計型血圧計のProject Zero 2.0では、ボタンを押すだけで、血圧や脈拍を計測する。加えて、歩いた歩数や距離、消費カロリー、快適な睡眠ができているかといった睡眠の質についても表示。自分の健康状態を、24時間セルフチェックできる。もちろん、時計としても機能し、メール確認なども可能だ。

血圧を測る際には、腕時計型血圧計を心臓部分よりも上に持ち上げる必要がある。腕時計で時刻を見るのと違って不自然な格好にならざるを得ないが、それでも約30秒で、どこでも血圧を測れる手軽さは大きな特徴だ。

オムロン ヘルスケアは循環器事業において、「脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」を掲げている。血圧測定の頻度をあげるために、ウェアラブル型の血圧計を開発することに力を注いでいるのだ。

「日本人の死因として3番目にあがっている脳・心血管疾患の発症原因として、夜間の高血圧や、急激な血圧上昇が大きく影響すると指摘されている。血圧は一日のなかで常に変化するものであり、血圧を正しく理解するために、一日に数回は計測することが望ましいと言われている。

血圧測定の頻度を高め、一人ひとりが自らの血圧変動の傾向を知り、疾病リスクを把握することが必要。そのためには、血圧を手軽に測ることが大切。腕時計型血圧計はこうした狙いから開発したものである」(オムロン ヘルスケア)。

血圧測定の頻度を高めることで、ゼロイベントを実現する狙いがあるというわけだ。

Project Zero 2.0は、2018年中の発売を目指して開発中であり、米FDAなどの関係当局による認可後に発売するという。ちなみに、Project Zero 2.0は製品名ではなく、米国での発売時には、別の製品名が付与される可能性が高い。

●「超小型手首式血圧計」「ワイヤレス型本体・カフ一体型上腕式血圧計」
一方で、CES 2016で参考展示した「超小型手首式血圧計」および「ワイヤレス型本体・カフ一体型上腕式血圧計」は、米国市場において「HEARTVUE」と「EVOLV」の名称で、2017年1月から発売することも発表した。

超小型手首式血圧計のHEARTVUEは、日常的に携行することを可能とした初の血圧計となる。血圧測定のほか、加速度センサーなどの各種センサーにより、一日の歩数や消費カロリー、睡眠の質なども計測可能だ。服薬状況などを記録する機能も搭載しており、Bluetoothを通じて、オムロンのスマホ向け健康管理アプリ「OMRON connect」(オムロン コネクト)で各種データを管理できる。米国での価格は349ドル。

ワイヤレス型本体・カフ一体型上腕式血圧計のEVOLVは、同社独自の心臓健康アルゴリズム「Advanced Accuracy」を採用。多くのデータポイントを測定し、より正確な読み取りを可能にした血圧計だ。単4形乾電池×4本で動くため、持ち運んで利用したり、電源確保を意識せずに生活動線のなかに配置したりといったことが可能。血圧の計測回数を増やすことに貢献する。「OMRON connect」アプリとの連携にも対応し、米国での価格は99ドル。

●喘息(ぜんそく)発作を検知する喘鳴(ぜいめい)検知器
もうひとつの参考展示は、喘息(ぜんそく)発作を検知できる喘鳴(ぜいめい)検知器だ。オムロンヘルスケアが独自に開発した音検知技術を活用することで、喘息の喘鳴音を捕捉。約30秒で呼吸状態などをチェックし、喘息発作が出ているかどうかを確認できるという。

スティックタイプの形状をしており、上部にある円形の部分を、心臓から離れた右側の鎖骨部分などに当てればいい。心臓から離すのは、喘息の的確な音を検知するためだ。約30秒の計測後、喘息発作が出ているか、喘息ではないかを判定して表示する。

「喘息患者は全世界で増加しており、適切なタイミングでの薬の投与が発作を抑えることにつながっている。喘息患者の喘鳴を検知することによって、乳幼児など、自分で喘息発作を確認できない場合にも有効。喘息患者の削減に寄与したい」(オムロン ヘルスケア)。

オムロンヘルスケアでは、ネブライザー(喘息用吸入器)も商品化している。今回の喘息喘鳴検知器は、2018年の発売に向けて、開発を進めているとのことだ。

(大河原克行)