専門医が警鐘 冬の「肌断食」で受けるダメージとは

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肌のくすみやたるみ、シミやしわ。
女性にとって肌の老化は受け入れがたいものかもしれません。

だからこそ、最新の化粧品やスキンケアグッズは常にチェックしているという女性は多いはずですが、「それらにお金を費やすだけでなく、定期的に専門医にかかり、肌のメンテナンスをすべき」と語るのは、美容皮膚科医の花房火月さん。

今回は、花房さんの著書『だから差がつく! やっぱり美人は、かかりつけの美容皮膚科を持っていた』(雷鳥社刊)の内容を踏まえながら、その主張の理由について、そして効果的なスキンケア手法について語っていただきました。

■クリームだけで十分!肌保湿の最適解

――まず、本書をお書きになった経緯についてお聞かせ願えますか?

花房:私の専門分野である美容皮膚科は、今世界的に注目されていて、先進国であればどこでも増えているのですが、その一方で美容皮膚科についての整理された情報はほとんどありません。

そういう事情で、美容皮膚科とはどんな科で、どんな施術をするのかということを、一般の方にもわかりやすく解説する必要があると思い、書かせていただいた次第です。

――確かに、美容皮膚科という名前はまだ日本では浸透していません。

花房:昔からあるのですが、本格的に注目されはじめたのは10年ほど前からです。この10年で爆発的に増えている分野ですね。

――本の中で、肌のメンテナンスのために美容皮膚科に通う方が増えているとされています。一方で、こういったジャンルは美容整形外科の守備範囲と重なるようにも思えますが、両者の違いについて教えていただきたいです。

花房:たとえば手術によって目の形を変えるとか、もっと鼻を高くするなど、顔の形そのものを変える施術を行うのが美容整形外科です。それに対して、美容皮膚科はレーザーや注射などで、皮膚を若々しくきれいに整えるための施術をします。

大きなポイントは、美容整形外科の施術の多くが、一度行ってしまうともとに戻すことが難しいのに対して、美容皮膚科の施術は、効果の持続期間が長くても2年ほどで、万が一うまくいかなかった場合でも、いずれもとに戻る点です。これは大きなメリットだと思います。

美容皮膚科に通う方が増えている背景としては、高齢化があります。60代、70代になってもきれいでいたいという女性の方は多いですが、年齢的にいってもなかなか美容整形という選択肢は取りにくい。美容整形まではやりたくないけれど、きれいになりたいという人の受け皿になっているところがあるんです。

――美容は、特に女性にとって大きな関心事です。それだけに「肌を美しく保つ秘訣」といったことについては膨大な情報が飛び交っています。こうした情報のなかに、花房さんからみて間違っているのではないかと思えるものがありましたら教えていただきたいです。

花房:「肌断食」は気になっていますね。あれはやってもいい人と、やってはいけない人がいるんです。

――どういうことですか?

花房:「肌断食」は、保湿も含めてスキンケアをやめることで健康な肌を取り戻すというものですが、元々が乾燥肌の人はきちんと保湿してあげないと、余計に肌を乾燥させて痛めつけてしまうことになります。

都内に限っても冬はとても乾燥しますから、元々乾燥肌でない方でも乾燥に伴う肌トラブルを発症しやすい状況です。特にこの時期は、保湿はしっかりしていただきたいですね。

――保湿というと、化粧水やクリームなどを何種類も重ねてつける方もいますが、花房さんはクリームだけで十分だというご意見ですね。

花房:保湿剤のなかではクリームが一番理に適っているというのはあります。化粧水、乳液、クリームを全部つける方もいるのですが、医学的にはあまりメリットを感じません。単に保湿というだけであればクリームだけで問題ないと考えています。

――化粧品選びについてもお聞きしたいです。一朝一夕に効果が出るようなものではないため、どうしてもあれこれ試しすぎて、どれがいいのかわからない状態になる方が多いのではないかと思いますが、どういう基準を持って普段使う化粧品を選べばいいのでしょうか。

花房:これは難しい質問ですが、医師によるアレルギーテストをやったうえで、無添加、無香料のものを選ぶというのは前提としてやっておいた方がいいかなと思います。

――自分が「効きそう」と思ったものを買うべきというアドバイスがありましたが、こうした気持ちの部分が美容に与える影響についてどのようにお考えですか?

花房:化粧品に限らず、気持ちはあらゆることに影響を与えます。高血圧や高コレステロールも、偽薬でかなり改善されますからね。

ニキビなども、40%くらいは偽薬でよくなってしまう。私は以前に、新薬の治験に携ったことがあるのですが、製薬会社が開発した薬の効果が、偽薬の効果にたびたび負けてしまうんです。もちろん、効き目のある薬を作りたくて開発するんですけど、それでも一定数は偽薬の効果に勝てず、お蔵入りになってしまう。

そういう意味で言えば、高価な化粧品を買って「やっぱりすごい!」となるのは、薬の成分的なものよりも「高価なものだから効くはず」という気持ちの部分が大きいように思います。
(後編につづく)

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