Photo by Jackel51927(写真はイメージです)

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 山本一郎(やまもといちろう)です。炎上は許せませんよね。

 痛ましい事件となった東京デザインウィーク(TOKYO DESIGN WEEK)については、もう各種報道が出ている状況ですので、出火原因からオブジェ制作者の日本工業大学まで、さまざまなものが検証の対象になっております。大学を偏差値で語るのは良くないと思いつつも、木くずおがくずを配置して、電気流して白熱灯だ電源タップだと言われれば大学に縁のない人でも、火事の一つも起こしそうだということぐらい分かります。

 実際、NHKの報道によれば、事件4日前に火災を起こすかもしれないと指摘した人物もいたということで、事件の核心は「なぜ火災が起きたか」から「なぜ火災発生を止められなかったか」にシフトした感があります。このようなオブジェを制作した大学生グループも、そのようなオブジェを展示させた東京デザインウィークの関係者も、フォローのしようがないぐらい亡くなった男の子とご家族に深く謝罪して誠意ある対応を続けるほかないだろうというのが一般的な見方です。

 ところが、これだけの事件を起こしておいて、この東京デザインウィークは事件発生後すぐにイベントを中止することなく、そのまま平然と当日は新規入場だけを止めていたことが判明。また、その後に公表された謝罪文や記者会見も、まるで他人事かのように思わせるコメントや社会常識を欠く内容であったため、これはこれでどうなのという話になっています。

■誠意とは真逆の対応


 清水亮さんの記事でも指摘されている通り、杜撰な運営体制によって起こるべくして起きた事故としか言いようがなく、その事故がもたらした無念にも失われた子供の命に対する慙愧も後悔も反省ももう少しやりようがあるだろうし、これだけの不始末に対して必要な責任は刑事民事双方できちんととってもらうしかないのではないかと思うわけですよ。

 実際、もしも私の息子がそこで焼け死んだらと思うと、子供を助け出そうと自らもやけどを負った父親が、もっと頑張れば息子は生きられたかもしれないと嘆きながら一生を悔いて生きることは深い同情に値するものだと思います。楽しく遊んでいたところの突然のお別れなんて、本当に悲しすぎます。

 ちょっと考えれば火を噴くかもしれないという知識も持ち得なかった制作者の大学生グループも、またきちんと展示物を検分して適切な指導を行うことのなかった主催者も、いま一度立ち止まって胸に手を当てて考えたほうが良い事案であります。少なくとも、取り返しのつかない重篤な事故を起こしたのが分かったとき、即座にイベントを中止するという最低限の誠意もないような運営には、おざなりな対応では次がないかもしれないことをぜひ知ってほしいと思うのです。

 救いのない事件だからこそ、真摯に反省し再発を防ぐことの大事さを理解できない運営者によるイベントは、本気で次がなくなっても仕方がないんじゃないですかね。

著者プロフィール


ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

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やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/