藤原竜也にはレジスタンスがよく似合う「そして、誰もいなくなった」6話

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「そして、誰もいなくなった」(日曜よる10時30分/日本テレビ/脚本:秦建日子 演出:佐藤東弥 出演:藤原竜也 玉山鉄二 二階堂ふみ 伊野尾慧(Hey! Say! JUMP)ほか)


第2章開始。第1章ではエンディングだったクリープハイプ「鬼」がオープニングに昇格。のっけからノリノリで ああもう疲れたよ疲れたよ疲れたよ  と畳み掛ける。

ドラマは刑務所に入れられて、お疲れ気味の小山内(玉山鉄二)の回想からはじまる。

「おれには大学時代の友人が3人いた。(中略)ふたりが死に、残りひとりが失踪して1ヶ月が経つ」
実に端的に、第1章を説明してくれる小山内。
 
失踪した藤堂(藤原竜也)は、母(黒木瞳)のケータイにウイルスメール(ミス・イレイズ)をプレゼントしてデータを消去し、アドレス登録していた人達にウイルスを拡散してしまう。
それが本物の藤堂なのかはわからない。
本物の藤堂は、日下(伊野尾慧〈Hey! Say! JUMP〉)の部屋に、ガキの使いこと馬場(小市慢太郎)と謎の女・君家砂央里(桜井日奈子)と4人で共同生活をはじめていた。
パーソナルナンバーがない者同士、「世界を孤独に。そのために、君たちは今から七つの罪を犯す」 という謎の使命を果たそうと運命共同体となったのだ。

いつものごとく速い展開、起る出来事いっぱいの6話の中で特筆したいのはこの共同生活シーン。
無防備に寝相悪く寝ている藤堂、砂央里の靴下を履いて怒られる馬場。「なんかいいなあ」と笑う藤堂。
大学時代の仲間も4人。今回も4人。
藤堂、友達を信じて疑わなかった大学時代に戻りたいのかもしれない、なんて思ってしまう。

でも馬場が、小山内を車のトランクに隠して「アデュー」とか言いながら海に飛び込んでしまう。小山内が水の中で苦しんでいる姿は出て来るが、馬場の姿は出てこない。気になる。

馬場が、車を止められてトランクの中を確認させろと詰め寄られる場面のスリルは抜群だった。小市慢太郎、もうずーっと渋いおじさまバイプレーヤーとしてイメージが固定化されていた気がするが、こういう軽みのある、ちょっとインチキぽい感じもいい。

癒しの存在のようで、なんだかやたら溜めの多い日下は、小山内に頼まれていただけかと思わせて、藤堂のお母さんと関係ありか? と揺さぶる、揺さぶる。

こんなふうに、まんまと作り手側の思惑に乗せられてしまっているが、それが心地よい。作りごとを、程よい刺激を受けながら気楽に楽しめる、この感じ、なんだかかつてどこかで味わったことがある気がして・・・考えてみたら、あ、良い時のフジテレビだと思った。

フラッシュバックやフラッシュフォワードでかく乱したり(98年「眠れる森」など)、ジェットコースター的な展開(91年「もう誰も愛さない」など)、水の中に沈む人物を意味深にとったり(99年「氷の世界」など)、ノリの良い音楽とかっこ良さげなタイトルバックで引きつけたり(07年「SP警視庁警備部警護課第四係」、10年「ストロベリーナイト」など)、そんな手法の数々がフジテレビのドラマを見ているような気分になる。最近、フジテレビがそういうのをやらなくなってきたかなあと思っていた時、4月期は関西テレビが「僕のヤバい妻」を作って盛り上がったっけ。
それは、かつて堤幸彦が「金田一少年の事件簿」(95年〜)で切り拓いた日本テレビの土9路線ともまた違う。
正攻法に派手にゴージャスに煽る、こういう方法論を、ゴールデンタイムよりも深夜枠に潜ってコアな人たち向けにした日テレの選択は鋭いのかもしれない。

それにしても、「明日世界は孤独になる」と極秘計画を始動させる藤堂たち。それによって日本国政府のデータサーバーが大変なことになるらしい。
藤原竜也はレジスタンス的な活動する役が似合う。
(木俣冬)