泉本 行志 / 株式会社アウトブレイン

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一方で、著書「3D思考」でも書きましたが、
言葉と人の感情は結びついています。

私が一度やってしまった失敗例に、
「問題」と「課題」という言葉の違いがあります。

コンサルタントのような問題解決を仕事にしているならば、
「問題」と「課題」とは異なるものと認識しているでしょう。
「問題の裏返しが解決策にはならない。課題をどう定義するかが大切!」
など最初に学ぶはずです。

でも、一般の会社では、かなり曖昧に使われているケースがほとんど。
あるいは、意図的に都合よく曖昧に使ってる場合もあります。
「問題」といってしまうと深刻なイメージが強く
その問題の主体となり得る部署や責任者から過剰に反応されてしまいます。
そこで、「課題」といった方が前向きで受け入れやすくなる。

確かに、心情的に外部の人間から
「○○さんの部署の問題点は・・・」などと始められたら、
批判されているニュアンスが感じられ、何とか防御しよう、
反論しようという心理が働くのは、自然だと思います。

それよりは、「○○といった課題がありますね」
と言われた方が、これまでやってきたことは肯定された上で、
未来に向かってさらに良くするには、という意味にとることもでき、
心情的に受容しやすい。

ところが、昔そんな微妙な気遣いを理解せずに、
「それは問題、不具合ある現象であって課題ではないすよね!」
とクライアントの各部門が集まる場でやってしまったことがあります。。

問題解決の思考法として、問題と課題を分けるというのは重要にしても、
それは問題を解く人たちの間でやればよく、
言葉の定義にこだわって、将来協力を得たい人たちを無意味に刺激して、
抵抗にあっては意味がない。

厳密には「問題」と理解すべきことでも、状況に応じて、
「課題」あるいは「機会点」などと表現し、
結果的にとるべきアクションを特定できればそれでいい。

同じように定義があいまいで使われる言葉といえば、
「○○戦略」を筆頭に、「○○モデル」「○○スキーム」などなど、
「どういう意味で使ってます?」
と思わず突っ込みたくなるときもありますが、
言葉の定義を振り回して、無駄な軋轢や厄介ごとを起こしては、
本末転倒。

思考の論理さと人の心理と
ビジネスの現場では折り合いを付けることが求められる。