青柳 翔「僕には夢を共有できる仲間がいる」――『HiGH&LOW』で再確認したEXILE TRIBEの絆
体育会系のイメージが強いEXILE TRIBEにおいて、随一の人見知りを自任する。だからこそ、気心の知れたメンバーばかりの『HiGH&LOW』の現場は「気持ちが楽でした」とホッとした表情を見せる。もちろん、楽ばかりではない。付き合いの深い仲間との共演に、青柳 翔はいつも以上に燃えた。そして文字通り、本気の拳を交えた! 2シーズンにわたり放送された『HiGH&LOW〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜』(日本テレビ系)に続く劇場版『HiGH&LOW THE MOVIE』の公開を前に、青柳が映画について、そして仲間たちとの絆について、熱く語ってくれた。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
スタイリング/松川総 (TRON) ヘアメイク/鵜飼雄輔(TRON)
衣装協力/JUMPIN' JAP FLASH(ジャンピン ジャップ フラッシュ:tel.03-5724-7170)




九十九役に感じた「一歩引く男」の美学!



――EXILEのHIROさんが総合プロデュースを務め、EXILE TRIBEのメンバーが多数出演する本作ですが、連ドラでは“SWORD地区”と呼ばれる街に存在する5つの勢力の抗争が描かれました。

僕自身、ドラマに関しては、出演シーンが多くないこともあって、わりと客観的に楽しんでました。まず、従来のドラマにないような映像の質に驚いたし、世界観がカッコいいなと。

――青柳さん演じる九十九(つくも)は、ほぼ病院で眠っている状態でした…。

特にシーズン1は、コブラ(岩田剛典)やヤマト(鈴木伸之)ら“山王連合会”を中心に、彼らの絆やほっこりするようなエピソードが描かれていましたからね。ほかの勢力との戦いがあったり、幼馴染で刑務所にいたノボル(町田啓太)が帰ってきたりして、彼らがどうなっていくのかを楽しみに見てました。



――九十九はかつて、SWORD地区を支配していた伝説のチーム“ムゲン”のメンバーで、コブラやヤマトとも仲間だったわけですが、やはり九十九の視点でドラマを見て、コブラたちのことを心配したりも?

いや、それはなかったです…(笑)。放送が始まってからは、もう別の作品の撮影にも参加していたので、九十九という役はすでに抜けてました。

――その九十九ですが、ドラマではなぜ昏睡状態なのか? など、謎の部分が多かったですが、第2シーズンの最後に目を覚まし、映画では大活躍します! 特にかつてのムゲンの総長で、SWORD地区を再び支配するべく帰ってきた盟友・琥珀(AKIRA)との関係が映画では軸となりますね。

九十九はムゲン、そして琥珀に対して強い思いを持っています。それは依存とさえ言ってもいいくらいで、自己犠牲の精神で琥珀を支え、救おうとする。なぜそこまでするのか? その点に関しては監督ともじっくり話し合い、九十九という役にアプローチしていきました。



――青柳さん自身の言葉で、九十九という男を説明するなら?

琥珀と出会う以前の九十九は、本当に何も持っていなかった。そんな九十九にとって、琥珀という存在はドン底に差し込んできた光だったんだと思います。その光に照らされて歩んできたけど、ときが経つ中でその輝きは変化してしまった。今度は自分の側から琥珀を照らし返そうとしている。それがこの映画における九十九、そしてムゲンの物語なんだと思います。

――九十九の美学や哲学が映画で徐々に見えてきます。男が憧れるタイプの男だなと感じました。

一歩引いた男のカッコよさ、No.2の美学とでもいうべきものを持った男ですよね。「どんなことがあっても自分は琥珀を支える」――その強い思いを出せればという気持ちでしたし、ある種の男の理想像を形にできればと思いました。



――ラストシーン近くのアクションシーンは、動きの激しさはもちろん、ドラマとしての重みもあり、壮絶でした。

アクションとしてのこだわりもありましたが、何よりも琥珀、九十九、そしてコブラやヤマトを含めたムゲンの絆が凝縮されたシーンになっていると思います。ドラマのシーズン1から、山王連合をはじめ、それぞれのチームが紡いできたドラマを、最後の最後、ムゲンで受け止めたと言えるシーンで、過酷でしたが、燃えましたね。

――そのときの撮影現場の雰囲気は…?

普段はみんな仲良くワイワイ話してるんですけど、そのときはとにかくそれぞれが自分の役に集中しなきゃいけなくて。みんな、同じ場所にいるのに微妙に距離があって、誰かが言い出したわけじゃないのに、準備段階から自然と役柄のままの状態でいる感じでした。



AKIRAは遠慮なく殴れる大先輩!?



――琥珀と九十九の関係性を作りだすために、事前にAKIRAさんと話し合ったりはされたんですか?

普段からよくご飯をご一緒させていただくので、そこで作品や役について話をする機会はちょくちょくあったんですけど、劇場版の仮台本が上がってきたときは、こちらから「ちょっとお話したいです」とお願いしたんです。そうしたらAKIRAさんが寿司屋に連れてってくれて、そこでじっくりとどうして行こうかと話をしました。

――AKIRAさんとは4歳の年齢差がありますが、青柳さんにとってはどんな存在ですか?

僕にとっては大先輩です。ただ、気さくでそういう年齢差をあまり感じさせず、垣根なく話をさせてもらえる存在なんですよね。遠慮がいらないというか…。

――琥珀と九十九の関係性にも通じますね。

アクションでは、やはり「はじめまして」の俳優さんが相手だと、まずケガをさせちゃいけないという意識も働くし、どれくらい思い切りいっていいのかな? と探りつつの部分もあります。僕自身は、できることならリアルに体をぶつけ合ったり、髪を掴んだりしながら激しくやりたいという思いはあるけど…。



――相手によってはそうもいかない部分もある。

そういう遠慮が、AKIRAさん相手なら必要ないんです。「AKIRAさんだっていいもの作りたいと思ってるでしょ?」って。それはAKIRAさんという人間、器の大きさがあってこそ。まあ、そう言うと「要は殴りたいんでしょ?」って返されるんですけど…(苦笑)。

――AKIRAさんだけでなく、気心の知れたEXILE TRIBEのメンバーが数多く出演していますが、その部分でこれまで出演してきた作品との違いは感じますか?

まず、これだけチャレンジしている作品はなかなかないですよね。そこに参加できる喜びはあります。そして、周りがみんなよく知る仲間だからこそ「みんなで一緒にいいもの作りたいね」という思いを最初からはっきりと共有できたと思います。あと、個人的には普段、外部の作品でまず突破しないといけない“人見知りの壁”がなかったのは大きい(笑)。



――人見知りの壁…(笑)。

なかなか、現場で先輩俳優さんに自分から話しかけられなかったり…(苦笑)。そういう苦労がなかったのはありがたかったです。とはいえ、決してなれ合いでもない。仲間だからこそのいい意味での緊張感もあったと思います。

――普段から、劇団EXILEやEXILE TRIBEといったグループ内での青柳さんのポジションやスタンスは? 九十九と似ている部分はありますか?

あんまり、リーダーとしてみんなをまとめるようなタイプではないです。九十九とも似てないかな…? そこは。わりと無責任というか、自由にやっていたいタイプ(笑)。

――琥珀やコブラのようにみんなを引っ張るでもなく、かといって九十九のようにNo.2として冷静に全体を見つめるでもなく…?(笑)

勝手にヤンチャしてる…。自分の気持ちに正直というか、自己チューなんです(笑)。

――改めて、青柳さんにとってEXILEや三代目 J Soul BrothersなどEXILE TRIBE内のグループはどういう存在でしょうか?

EXILEさんは、何より「偉大な先輩」ですし、三代目も同じ事務所の「仲間」という意識が一番強いですね。



――ライバル意識は? 特に今回、演技の世界という同じ土俵で仕事をするということで、俳優を本業とする劇団EXILEのメンツにかけて「負けられない!」といった意識などは…?

それはあまり感じないかな? 普段から、ライバル意識というのはないんですよね。先ほども言いましたが、お互いに仕事の場で、いい緊張感は持ってます。ただ「負けたくない」という気持ちよりも「一緒に盛り上げていこう」という気持ち、「支え合っていく仲間」という意識が強いですね。ご飯に行ったり飲みに行ったり、一緒にいる時間が多いですしね。

――ひとりの俳優として活動しつつ、そういう“家”のような存在があり、結びつきの強い仲間がいるのは大きいですね。

そこは、他事務所の俳優さんたちとは違う部分かもしれませんね。基本、俳優ってひとりで戦うものだし、孤独なものだと思います。僕もそういう部分はあるけど、どこかに夢を共有する仲間がいるという安心感があるのはありがたいことですね。