スーパーでバナナを買おうとすると、「なんか前より高くなっていないか」と感じる。「5−6本の1房98円」に出くわす機会が減った気がするのは、気のせいだろうか。円安の影響に加えて、主要な産地フィリピンで生産量が減っているからだという。そんな中、かつて日本のバナナ界の主役だった「台湾バナナ」が復活に向けて動きだしているようだ。(イメージ写真提供:123RF)

写真拡大

 スーパーでバナナを買おうとすると、「なんか前より高くなっていないか」と感じる。「5-6本の1房98円」に出くわす機会が減った気がするのは、気のせいだろうか。円安の影響に加えて、主要な産地フィリピンで生産量が減っているからだという。そんな中、かつて日本のバナナ界の主役だった「台湾バナナ」が復活に向けて動きだしているようだ。

 台湾メディア・自由時報電子版は9日「日本のおばさんが台湾バナナを食べて落涙 小さい頃に食べた味だ」と題した記事を掲載した。記事は、「台湾バナナが日本の栄養昼食市場に攻め込む」として、6日に静岡県御殿場市の小学校の給食で台湾バナナが提供されたことを紹介。ある小学生が自分で食べずに家に持ち帰って保護者に食べさせたところ「小さいころに食べた味だったゆえに、涙を流し『これが台湾バナナ』だと言った」と伝えている。

 いささかオーバーな表現だな、といった印象は拭えない。ただ、フィリピン産バナナが大量に日本に輸入されるようになるまでは、バナナと言えば「台湾バナナ」だったことは確かだ。記事は、ノスタルジーもあい混じって日本国内で台湾バナナの輸入を求める声が出始めていることを紹介したうえで、台湾の農業当局関係者が「台湾の業者にとっては、従来の日本市場に加えてより多くの商機を開発するチャンス」と語るとともに、台湾バナナの普及を通じて「より多くの日本人が台湾に遊びに来てくれることを期待している」とコメントしたことを紹介した。

 台湾バナナがフィリピンバナナに日本市場でのシェアを奪われたのは、昭和40年代のこと。感涙したとされる「おばさん」も、きっと今の小学生にとっておばあちゃん世代だろう。台湾はバナナの栽培地としては北限であり、台風が通過することもあり生産量が不安定かつ限定的だった。それゆえ南米産やフィリピン産に取って代わられてしまったのだが、ゆっくり育つことで強い甘みと香りがあるという。

 食卓に出回る主流のバナナとしての地位回復の道は険しい。しかし今は、何かとプレミアム感が物を言う時代。「日本人が好きだったバナナの元祖」としてその味を知る世代、知らない世代それぞれに売り込むことで、日本における台湾バナナの新たな立ち位置を得ることができるかもしれない。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)