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東京都内在住の主婦・マリコさん(30代)の楽しみの1つは、3歳の娘の写真や成長記録をFacebookやブログで公開することです。

「Facebookはリアルな友達関係でつながっているので、『●●に行きました〜』とか『こんなこと娘に言われちゃいました☆』とか、目線を入れずに写真と一緒に公開してます。ブログでは、目線は入れてますね。同じ年の子どもをもった人たちとつながっていますが、会ったこともない人なので」と話します。

そんなマリコさんですが、子どもの成長とともに、ある心配が芽生えてきました。

「子どもの写真を撮る時って、お友達が映っていたり、公園だと知らない子が映っている場合があります。こういう写真って、目線を入れても公開してはダメなんでしょうか?」

SNSで、集合写真や一緒に遊んでいる他の子どもが含まれた写真を公開すると、プライバシーの侵害など法的な問題が発生するのでしょうか? 伊藤雅浩弁護士に話を聞きました。

 ●「肖像権」「プライバシー権」への配慮は?

一般に、他人を写真撮影したり、ネットで公開したりする際、法的には、肖像権プライバシー権といった権利への配慮が必要になってきます。ただし、どんな場合でも、常に撮影や公開の際に、本人から同意を得なければならないというのは現実的に不可能であり、法もそこまで求めているわけではありません。

肖像権とは、判例上「何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない」権利だとされています。その権利の内容として「みだりに撮影されない権利」のほか、「撮影された写真を利用されない権利」も含むとされています。

もっとも、肖像権侵害となるのは、撮影された人の社会的地位や撮影された人の活動内容、撮影場所、撮影の目的、撮影の態様(様子)、撮影の必要性等を総合的に判断するとされており、一律に線引きできるものではありません。

過去に問題となった事例は、法廷内で被告人の容ぼうを描いたイラストや、著名人の私生活上の写真撮影等です。今回のケースのように「公共の場である公園での撮影で、わが子を映そうとしたときに他人が写り込んでしまった」という場合、肖像権侵害となるケースはあまり考えにくいでしょう。

 ●本人特定を避ける「写真加工」が重要

次に、「目線を入れて本人を特定できないように加工する」ことについて考えてみます。

前述したように、肖像権は「撮影されない自由」を含みますので、後から目線を入れるかどうかを問わず、撮影自体が問題になるとも言えます。しかし、総合的に判断する際には、本人を特定できないようにすれば、ほとんどのケースで問題にならないと考えられます。

また、本人を特定できないように加工することは肖像権の観点のほか、プライバシーへの配慮という意味でも重要でしょう。

肖像権プライバシー権のほかに考慮すべきなのは「子どもの安全」です。最近では、SNSにアップした子どもの写真から児童ポルノ画像に加工されたり、子どもが狙われたりということも生じかねません。

撮影する際には、むやみに他人の子を映さないような配慮が必要ですし、たとえ我が子の写真であっても、SNS等で幅広く公開することは避けるべきでしょう。



【取材協力弁護士】
伊藤 雅浩(いとう・まさひろ)弁護士
工学修士(情報工学専攻)。アクセンチュア等のコンサルティング会社に約8年間勤務した後、2008年弁護士登録。システム開発、ネットサービス等のIT関連法務を主に取り扱っている。経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」研究会メンバー。
事務所名:弁護士法人内田・鮫島法律事務所
事務所URL:http://www.uslf.jp/