「女子バレー会場では、画面に選手の名前が映し出され、観客のコールを先導している。組織的な応援も日本の武器になっている」
試合後、女子バレーボール・タイ代表のキャテポン監督は「タイチームにとってアンフェアだ」と怒りを爆発させた。

5月22日まで日本で開催されていた、バレーボールのリオ五輪世界最終予選兼アジア予選。日本が勝利した18日のタイ戦のジャッジが、物議を醸している。第5セットまでもつれ込んだ接戦は、8対12とタイがリード。ところが、ここから遅延行為を理由に、タイにレッドカードが2枚立て続けに出されたのだ。レッドカードが出されると相手に得点が入るため、2点を得た日本が15対13で大接戦を制した。

この“疑惑”の判定に対し、「あれだけ競っていて、しかもファイナルセットは15点で決まるルール。簡単にレッドカードを出す必要はない。日本に有利に働いたと言われても仕方ない」と話すのは、あるスポーツジャーナリスト。スポーツ紙記者は「そもそもレッドカードはめったに出ない」と言う。

日本バレーボール協会は「『判定のおかげで日本が勝ったのではないか』という一般の方からの電話は、10件ほどありました。審判はメキシコの方。協会としては今回の判定はルールに則って、適確におこなわれた。間違っていたとは思っていません」と本誌に回答。疑惑のジャッジを否定した。とはいえ、タイが“アンフェア”と思うのも無理はない。なぜ、日本は優遇されるのか。

「観客動員も見込め、大会場で開催できるのは日本ぐらい。しかも日本のテレビ局は、世界と比べても高額の放映権料を払っている。国際バレーボール連盟(以下FIVB)は、日本に敗退してもらっては困るのです」(前出・スポーツジャーナリスト)

じつにFIVBの収入の6〜8割が、日本からのスポンサー料とテレビ放映権といわれている。

ジャパンマネーに加え、故・松平康隆日本バレーボール協会会長の存在が大きい。2008年に退任したFIVBのルーベン・アコスタ会長とは、長年にわたる蜜月時代があった。アコスタ会長は、日本開催の国際大会のたびに来日。車はリムジン、宿泊は一流ホテルのスイートルームと贅を尽くした。費用はもちろん、協会持ちだった。テクニカルタイムアウトの時間や、第2、第3セットの間の休憩時間が日本の試合だけ長くなる“特別ルール”は、アコスタ時代に生まれた。

不可解な笛に救われた日本代表。一方、タイはこの敗戦に奮起した。負ければ日本の五輪出場決定という条件でおこなわれた21日の韓国戦。タイは、日本に勝っている韓国を、フルセットの激闘のすえ破り、日本のリオ五輪行きに待ったをかけた。

日本は、その後おこなわれたイタリアとの試合で敗れたものの、2セットを奪取。勝ち点1を得て、自力で五輪出場を決める。さらに翌日、オランダに勝利し、今大会を3位で終えた。

「日本は世代交代の最中で、チーム力は銅メダルを獲ったロンドン五輪時より落ちている」(前出・スポーツ紙記者)

これほどのホームでも、スッキリとは勝ちきれなかった日本代表。実力のほどが割れた。

今大会の結果を受け、日本はリオ五輪1次リーグで、ブラジルと同じ組に入ることが決まった。今度は日本がアウェイの洗礼を受けることになる。

(週刊FLASH 2016年6月7日号)