差し出がましくない高畑充希「とと姉ちゃん」30話

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連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第5週「常子、新種を発見する」第30話 5月7日(土)放送より。 
脚本:西田征史 演出:松園武大


「ええ!」
星野武蔵(坂口健太郎)の事情を聞いて、字に書いたように驚く森田屋一同。
星野は、大学が休みだったため教授に報告できず、ゲラニウム・カロリニアヌム(あめりかふうろ〈アメリカ風露〉)が既に発見されていることを知らないまま、新種発見を祝ってもらいに森田屋へやって来た。
そのまま知らせないでおこうと気を使いまくる森田屋の面々というドタバタを経て、長谷川(浜野謙太)のドジによって、武蔵は衝撃の事実を知ってしまう。
「あっしの悪口入れこむのやめてください」なんていう台詞も用意され、浜野謙太、ほんとうに期待を裏切らない。善意にあふれた純朴な人たちの中で、ささやかなノイズを入れる役割を見事に担っている。

だが、この週、作者が書きたかったのは新種云々ではなく、その先のことだった。
ショックと日頃の不摂生がたたって倒れてしまった武蔵に、常子(高畑充希)はお味噌汁を作って食べさせる。
「お国が飛騨高山だと聞いていたので、もしかして赤味噌かなあと」と洞察力を発揮し、武蔵を喜ばせる常子。
「元気でいてください お国のご両親のためにも」と武蔵に食の大切さを説く常子。
常子は、何かに突出して秀でたカリスマ的人物では決してないが、人を応援する能力に秀でているタイプのキャラクターとして描かれている。近年の朝ドラだと、高畑充希も出ていた「ごちそうさん」(13年)のめ以子(杏)のタイプに近い。「まれ」(15年)も最初は「応援」キャラだったが、それをひねってへんな方向に行ってしまったので、安定の人気を保つためにも慎重に常子を描いていく必要があるだろう。その点、西田征史脚本は危険を冒さないタイプだし、高畑充希は29回のレビューで書いたように、みごとなまでに差し出がましくないキャラを演じきれるので、任せて安心だ。

まだいた、掛け持ち俳優


坂口健太郎、浜野謙太、川栄李奈が「とと姉ちゃん」と平行して他局のドラマに出演中とレビューに書いた。
もうひとりいた。
目が笑ってないけど意地悪ではない森田屋の女将さん照代役の平岩紙だ。
彼女は「私結婚できないんじゃなくて、しないんです」(TBS金曜よる10時〜)で中谷美紀演じる主人公の同級生を演じている。
「あさが来た」(15年)では、ディーン・フジオカが演じた五代が死んだ後、他局のドラマに出演、波瑠は
「あさが来た」終了後、4月期のドラマに出演。「まれ」では山崎賢人と清水冨美加が放送期間中、7月期のドラマに主要な役で出演していた。撮影時期とか出演決定時期とかはさておき、たいていは、若干時間差で別作品に出演している印象があったのが、今回、4人も同じ4月にはじまったドラマに平行出演。朝ドラ便乗キャスティングだと感じるにつけ、目下、朝ドラがドラマ界の指針になっていることを痛感せざるを得ない現象だ。
(木俣冬)