マレーシアのナジブ首相はこのほど、同国の首都クアラルンプールとシンガポールをつなぐ高速鉄道建設計画の覚書が2016年中に締結される見通しと語った。計画どおりに進めば、17年第1四半期に入札が実施される見通しだが、入札には日本と中国のほか、フランス、ドイツなども参加の意向を示している。(イメージ写真提供:123RF)

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 マレーシアのナジブ首相はこのほど、同国の首都クアラルンプールとシンガポールをつなぐ高速鉄道建設計画の覚書が2016年中に締結される見通しと語った。計画どおりに進めば、17年第1四半期に入札が実施される見通しだが、入札には日本と中国のほか、フランス、ドイツなども参加の意向を示している。

 中国メディアの中国経営報はこのほど、同プロジェクトの受注競争を巡って日本と中国のそれぞれが抱いている思惑について説明する記事を掲載しつつ、「中国は競争を恐れてはおらず、むしろ望むところだ」とプロジェクトの受注に自信を示した。

 記事はまず、日本は中国に同プロジェクトを奪われることを「非常に恐れている」と主張。その理由として、東南アジア諸国がこれまで日本に様々な資源を供給し、日本の経済発展を多いに助けてきたが、近年は東南アジア諸国が中国に近寄りつつあり、高速鉄道プロジェクトまで中国に取られることは、日本にとって東南アジア全体を中国に奪われてしまうことを意味するためだと主張した。

 一方、中国としては「日本との価格競争に乗じてシンガポールとマレーシアが厳しい条件を提示し、条件を飲むよう圧力をかけてくる事態は防ぎたい」のが本音だと主張。だが、シンガポールは非常に公正な国家であり、プロジェクトに政府が過度に関与することは望んでおらず、中国が得意とする政治的な駆け引きは今回の受注競争に求められていないと紹介。あくまでも企業間の公正な競争によって受注が決まることになるとしたうえで、「中国は競争を恐れてはおらず、むしろ望むところだ」と自信を示した。

 現時点で日本と中国のどちらが有利なのだろうか。記事はマレーシアはコストを重視するが、シンガポールはより高い信頼性を重視していると指摘。またマレーシア側に大部分の路線が敷設されるからといって、両国の意図がそれぞれどれくらいのウエイトを持ってプロジェクトに反映されるかはわからないと説明している。

 今回のプロジェクトにおける受注競争は日本にとって非常に重要な意義を持っているようだ。東南アジアには経済発展における大きな潜在力があるが、マレーシアとシンガポール両国にまたがる高速鉄道の受注をきっかけに日本の新幹線が東南アジア諸国に次々に採用されてゆくなら、新幹線は東南アジアの潜在力を掘り起こすインフラとしてその力を大いに発揮することになるだろう。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)