■オフィシャル誌編集長のミラン便り2015〜2016(28)

 セリエA第31節は、ある厳しい判決を我々につきつけた。ミランはもう勝つことができない――という現実だ。

 ベルガモでのアウェー戦、対戦相手のアタランタはB降格を免れようと争っているようなチームだ。ミランは開始たった5分にPKで先制し、大勝を予感させた。しかし実際は前半終盤に同点に追いつかれ、後半半ばには逆転ゴールを決められてしまった。結果は2−1の敗戦......。

 代表戦での小休止は結果だけでなく、ミランのプレー自体にも悪影響を及ぼしてしまったようだ。この日のミランのプレーは鈍重で、手の内は相手にミエミエ。おまけにまるで覇気が感じられなかった。特にカルロス・バッカとルイス・アドリアーノの2トップは一度もチャンスになるようなクロスを受け取ることができず、敵のDFを抜くことはなかった。

 いくつ試合をこなしてきても、ミランの短所は変わらない。そこでシニシャ・ミハイロビッチ監督はチームトップの了解を得て、ある厳しい決断を下した。合宿練習を次の試合まで続けるということだ。

 次節、ミランはサン・シーロにユベントスを迎える。そのユベントスはエンポリを破って2位ナポリとの勝ち点差を6とし、5連覇に近づきつつある。波に乗った危険な相手だ。

 ミランはこれまで、これほど厳しい処置に出たことはなかった。が、それも仕方ない現実がある。ミランはここ4試合連続して自分たちより下位のチームと対戦しているというのに、たったの勝ち点2しかあげられなかったのだ。このまま放っておけば状況はどんどん悪い方向に進む可能性がある。ミランが今いる6位はヨーロッパリーグに参戦できる最後の砦だが、7位のサッスオーロがジリジリと点差を詰めてきており、今ではたったの1ポイント差だ。来シーズンもヨーロッパの舞台がないという状況だけは何が何でも避けなければならない。

 コッパ・イタリアの決勝で勝利すれば今シーズンはどうにか救われるかもしれないが、それでもリーグ戦でもっと闘志を見せるべきだ。クリスマス休暇後の、順位をぐんぐん上げていった頃をぜひまた再現してほしい。またシーズン終了まであと7試合となった現在、選手や監督は今シーズンの順位のためだけではなく、自分の来シーズンの立ち位置に向けてもプレーする必要がある。

 アタランタ戦では残念ながら本田圭佑の姿をピッチで見ることはできなかった。足の打撲での欠場だ。彼がいないことは試合を通して強く感じられ、皆、あらためて彼の重要性を認識したことだろう。アドリアーノ・ガッリアーニ(ミランCEO)もこう言っている。

「本田はいつも、その時自分が出せる100%の力でプレーする。敵を追い、汗を流し、決して止まることはない。しかし残念ながら、これは全ての選手にあてはまることではない」

 昨シーズンに比べると、数字からも本田のプレーが向上していることが分かる。失ったボールの数は316から274に減り、逆にチャンスを作った数は24回から32回にアップ、クロスは39回から51回、アシストも2から3に増えている。

 土曜日のユベントス戦は今のチームが、ロッソネロのユニホームを着てプレーするに値するチームであることを証明する最後のチャンスである。このユニホームはかつてチェーザレ・マルディーニ(パオロ・マルディーニの父で、ミランの往年の名選手。4月2日に84歳で死去)が347回袖を通し、4つのスクデットを勝ち取った栄光のユニホームだ。そのレジェンドが天国で嘆くような、そんなミランだけは決して見せてはいけない。

ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko