「本田圭佑はまた疲れて帰ってくるのか」と心配するミラン首脳陣
■オフィシャル誌編集長のミラン便り2015〜2016(27)
ラツィオとのホームでの試合、ミランで一番得点を量産しているカルロス・バッカがゴールを取り戻した。これでバッカは今シーズン13ゴール目だ。ただし試合の結果は1−1の引き分け......ミランはまたも勝利を手に入れることができなかった。これで3試合連続、勝利なし。長いリーグ戦も終盤に入り、ここにきて一気に疲れが出てきているのかもしれない。チームのこの状況はそのまま本田圭佑自身にも当てはまる。
ほんの数週間前まで、ミランは自信にあふれ、快調なテンポで歩みを進めていた。しかし中盤の両サイドの人材不足は明らかだった。左サイドでプレーできるのはジャコモ・ボナヴェントゥーラ、そして右サイドには本田しかいない。ミハイロヴィッチが要求するプレーを確実に実現できるのは、彼らだけなのだ。この2人は「絶対に欠くことはできない」と、監督も何度も言っている。しかし欠くことができないということは、彼らは絶対に休めないということだ。
ラツィオ戦の後の会見でミハイロヴィッチもこう言っている。
「本田とボナヴェントゥーラはずっと出ずっぱりだ。彼ら以外にこのポジションは任せられないが、彼らも使い続ければパワーも聡明さも失っていく。試合の流れを変えることができないのも、彼ら以外の解決策がないからだ」
この日の試合でも本田はいつもの自己犠牲の精神をもって、終始右サイドを上がったり下がったりしてカバーし続けていた。前半は何度もゴール前にチャンスボールを上げようとしていたが、それも後半に入ると明らかに疲れが見て取れるようになり、最後には交代させるしかなかった。
84分までプレーした本田は、49回ボールを持ち、23回有効なパスを出したが、20回ボールを失ったので、プラマイ0といったところだろうか。「本田が疲れている」といったミハイロヴィッチの言葉を裏付けるようなデータである。
キエーヴォ、サッスオーロ戦でいい結果を残せず、ミランはかなり叩かれた。順位を上げるために必要な根性やガッツがチームから感じられないというのがその最大の理由だ。
しかし本田に関して言えば、彼の態度は常にミハイロヴィッチが望んだ通りのものだ。読者のみなさんも、ミハイロヴィッチが何度も、彼の練習や、特に試合においての態度に賛辞を送ってきたことを覚えているだろう。「たとえプレーをミスすることがあっても、試合に臨む態度を誤ることはない」というのがミハイロヴィッチの本田評だ。彼は本田のことを、ミランのラストスパートの原動力の一つだと見ている。
ただし気持ちがどんなにあっても、フィジカル的に疲れていれば力を出すことはできない。そこが心配の種である。
来週、リーグ戦はイースター休暇でお休みだが、だからといってここで体を休められるわけではない。代表クラスの選手たちはみなそれぞれの国での代表戦があり、ミランでは実に12人の選手がよりハードなスケジュールをこなすことになる。本田も日本までの長い道のりを旅した上、W杯予選を2試合戦わなければならない。
ここで誰もが思い出すのが2015年の1月のことだ。それまで好調だった本田が、オーストラリアでのアジアカップを戦って帰ってきてからは全く別人に変わっており、彼と同調するかのようにミランもズルズルと順位を落としていった。「また疲れて戻ってくるのではないか」とミハイロヴィッチも心配顔だ。
リーグ戦が再開すれば本当のラストスパートが始まる。ミランの目標は今の6位より少しでも順位を上げること。ほんの1カ月前までチャンピオンズリーグ出場権を狙っていたチームにとってはあまりにも小さな目標だが、ミランはいつでもミラン。どんな状況にあっても少しでも上を目指す。それが重要だ。
ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko