ミラン番記者の現地発・本田圭佑「本田と同じ“態度”を他の選手も取れたなら……」
最終的な確認が必要ならば、ここではっきりさせておこう。
今シーズンのミランは「6位」のチームだ。
一番重要な、ここぞという時にも調子を上げることができなかったし、他のチームが躓いたことで順位を逆転する格好のチャンスがあった時にも、それモノにできなかった。9試合の連続無敗記録も、結局はあまり役には立たなかった……。
【試合レポート】ミラン 1-1 ラツィオ
残り2か月での目標は、コッパ・イタリア優勝――ユベントスが相手ではかなり難しいだろうが……――と、ヨーロッパリーグ出場の最後の砦、つまり現在の6位の座を死守することだ。
直近の3試合(1敗2分け)を客観的に分析する限り、ミランがこの先、もう一度盛り返すことはまずないだろう。
おまけに、オーナーのシルビオ・ベルルスコーニは、チームを落ち着かせるどころか、相変わらず不安を煽るようなことばかりしている。
「(監督のシニシャ・)ミハイロビッチが落ち着いて仕事に専念できるようにする。そうすれば、最後には結果が出るはずだ」と語ったその翌日には、「今シーズンのミランのプレーにはがっかりさせられる」などと言い出す始末。どう考えても、チームの助けにはなっていない。
そのミハイロビッチは少し前、FWに対する不満をぶちまけた。もちろん、期待外れだったのは攻撃陣だけではないが、それでも彼らは名指しで文句を言われても仕方がないところがある。
まず、ミランのFWは怪我が多く、コンディションの好不調の波も大きい。持続的にチームに貢献しているのは、カルロス・バッカだけだ。
そしてそれ以上に問題なのが、彼らの“態度”である。本田圭佑が見せるような試合に対する姿勢を、全員が共有できていない。そのことは、もう何度もこのコラムで繰り返してきたが、最近ではミハイロビッチもこう強調している。
「本田はいつも懸命に練習していて、取るべき態度を誤ることはない」
ミハイロビッチという人物を知る限り、これは彼の最上級の賛辞である。
態度――。そう、まさにこの言葉が、今のミランのキーワードだ。多くの選手は、このクラブの一員に相応しい態度が示せていない。
例えば? 最も顕著なのが、マリオ・バロテッリだ。彼は明確なミッションを持って、リバプールから持って戻ってきたはずだった。クラブで、そして代表チームで主役に返り咲くことだ。
そんな目標があるというのに、彼からは十分な闘志が感じられない。怪我が治ってピッチに戻ったマリオのプレーは、ほぼ毎回、無気力さに満ちている。足取りは重く、見る者をイラつかせる……。
そんな彼に対し、ミハイロビッチは公の場であろうと構わず叱責し、副会長のアドリアーノ・ガッリアーニも厳しいコメントを繰り返してきたが、これまでのところ(いつものように)ほとんど効果はないようだ。
あと9試合を残す時点で、バロテッリ獲得という賭けは失敗に終わったと言わざるをえない。ミランにとっても、そしてマリオ本人にとっても……。
ラツィオ戦の終盤、ミハイロビッチはルイス・アドリアーノを下げてバロテッリを投入したが、サン・シーロの観衆はL・アドリアーノに拍手を送った後、バロテッリにはブーイングを浴びせた。プレー前から自チームのサポーターにブーイングされるなど、これまでなかったことである。
それから、ジェレミー・メネーズ。背中の怪我で実に8か月もの欠場を余儀なくされ、復帰後もコンディションを取り戻すのに苦労している点は同情できるが、ラツィオ戦の後半で見せた彼の態度は、あまり感心できるものではなかった。
サブコーチの「アップしろ」という命令を、彼はわざと無視した。最後は無視し続けられなくなって渋々指示に従っていたが、プロのベンチの光景としては、見ていて気持ちの良いものではない。
そして、最後にエムバイ・ニアング。彼はこれまでにも“武勇伝”には事欠かない人物だったが、今回は大雨のなか、夜中の国道を愛車のアウディR8でぶっ飛ばし、住宅の壁に激突。これで足首に全治2か月の重傷を負い、自ら飛躍のチャンスを掴んだシーズンを終わらせてしまった。
ピッチのなかでも、そして外でも、ミランの一員として相応しい態度が取れていない選手たち……。この有様が、「もし26人の本田を得ることができるなら、どんな高い代金も支払う」とミハイロビッチに言わしめるのだ。
とはいえ、その本田も今、大きな問題を抱えている。
もちろん彼の場合、それは態度ではなく、疲労だ。リーグ、カップ戦と、休むことなくレギュラーとしてプレーしている本田には(実に17試合連続出場だ!)、明らかに疲労の色が見え、プレーの精度も能率も落ちてきている。
ラツィオ戦では、「光るプレー」と「ひどいミス」のあいだを行ったり来たりしていた感じ。絶好のポジションからのシュートを外し、得意のポジションからのFKもミスした。
「彼は骨の折れる仕事をしてくれたが、俊敏さが足りなかった」
試合後、ミハイロビッチは本田のプレーを振り返った後、こうも語っている。
「確かに、彼は疲れている。しかしベンチには、代わりになる選手がいない。ピッチに立つ力がある限りは、彼がプレーしなくてはいけない」
今週、セリエAは国際マッチウィークのため小休止に入ったが、それが本田を助けることはないだろう。それどころか、日本への長旅と1週間で2つの代表マッチ(それも大事なワールドカップ予選)……。疲弊してミラノに戻ってくるのは間違いない。
しかし、こればかりはどうしようもない。ミラン同様、日本代表も本田の力を必要としているのだから。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。
今シーズンのミランは「6位」のチームだ。
一番重要な、ここぞという時にも調子を上げることができなかったし、他のチームが躓いたことで順位を逆転する格好のチャンスがあった時にも、それモノにできなかった。9試合の連続無敗記録も、結局はあまり役には立たなかった……。
【試合レポート】ミラン 1-1 ラツィオ
残り2か月での目標は、コッパ・イタリア優勝――ユベントスが相手ではかなり難しいだろうが……――と、ヨーロッパリーグ出場の最後の砦、つまり現在の6位の座を死守することだ。
直近の3試合(1敗2分け)を客観的に分析する限り、ミランがこの先、もう一度盛り返すことはまずないだろう。
おまけに、オーナーのシルビオ・ベルルスコーニは、チームを落ち着かせるどころか、相変わらず不安を煽るようなことばかりしている。
「(監督のシニシャ・)ミハイロビッチが落ち着いて仕事に専念できるようにする。そうすれば、最後には結果が出るはずだ」と語ったその翌日には、「今シーズンのミランのプレーにはがっかりさせられる」などと言い出す始末。どう考えても、チームの助けにはなっていない。
そのミハイロビッチは少し前、FWに対する不満をぶちまけた。もちろん、期待外れだったのは攻撃陣だけではないが、それでも彼らは名指しで文句を言われても仕方がないところがある。
まず、ミランのFWは怪我が多く、コンディションの好不調の波も大きい。持続的にチームに貢献しているのは、カルロス・バッカだけだ。
そしてそれ以上に問題なのが、彼らの“態度”である。本田圭佑が見せるような試合に対する姿勢を、全員が共有できていない。そのことは、もう何度もこのコラムで繰り返してきたが、最近ではミハイロビッチもこう強調している。
「本田はいつも懸命に練習していて、取るべき態度を誤ることはない」
ミハイロビッチという人物を知る限り、これは彼の最上級の賛辞である。
態度――。そう、まさにこの言葉が、今のミランのキーワードだ。多くの選手は、このクラブの一員に相応しい態度が示せていない。
例えば? 最も顕著なのが、マリオ・バロテッリだ。彼は明確なミッションを持って、リバプールから持って戻ってきたはずだった。クラブで、そして代表チームで主役に返り咲くことだ。
そんな目標があるというのに、彼からは十分な闘志が感じられない。怪我が治ってピッチに戻ったマリオのプレーは、ほぼ毎回、無気力さに満ちている。足取りは重く、見る者をイラつかせる……。
そんな彼に対し、ミハイロビッチは公の場であろうと構わず叱責し、副会長のアドリアーノ・ガッリアーニも厳しいコメントを繰り返してきたが、これまでのところ(いつものように)ほとんど効果はないようだ。
あと9試合を残す時点で、バロテッリ獲得という賭けは失敗に終わったと言わざるをえない。ミランにとっても、そしてマリオ本人にとっても……。
ラツィオ戦の終盤、ミハイロビッチはルイス・アドリアーノを下げてバロテッリを投入したが、サン・シーロの観衆はL・アドリアーノに拍手を送った後、バロテッリにはブーイングを浴びせた。プレー前から自チームのサポーターにブーイングされるなど、これまでなかったことである。
それから、ジェレミー・メネーズ。背中の怪我で実に8か月もの欠場を余儀なくされ、復帰後もコンディションを取り戻すのに苦労している点は同情できるが、ラツィオ戦の後半で見せた彼の態度は、あまり感心できるものではなかった。
サブコーチの「アップしろ」という命令を、彼はわざと無視した。最後は無視し続けられなくなって渋々指示に従っていたが、プロのベンチの光景としては、見ていて気持ちの良いものではない。
そして、最後にエムバイ・ニアング。彼はこれまでにも“武勇伝”には事欠かない人物だったが、今回は大雨のなか、夜中の国道を愛車のアウディR8でぶっ飛ばし、住宅の壁に激突。これで足首に全治2か月の重傷を負い、自ら飛躍のチャンスを掴んだシーズンを終わらせてしまった。
ピッチのなかでも、そして外でも、ミランの一員として相応しい態度が取れていない選手たち……。この有様が、「もし26人の本田を得ることができるなら、どんな高い代金も支払う」とミハイロビッチに言わしめるのだ。
とはいえ、その本田も今、大きな問題を抱えている。
もちろん彼の場合、それは態度ではなく、疲労だ。リーグ、カップ戦と、休むことなくレギュラーとしてプレーしている本田には(実に17試合連続出場だ!)、明らかに疲労の色が見え、プレーの精度も能率も落ちてきている。
ラツィオ戦では、「光るプレー」と「ひどいミス」のあいだを行ったり来たりしていた感じ。絶好のポジションからのシュートを外し、得意のポジションからのFKもミスした。
「彼は骨の折れる仕事をしてくれたが、俊敏さが足りなかった」
試合後、ミハイロビッチは本田のプレーを振り返った後、こうも語っている。
「確かに、彼は疲れている。しかしベンチには、代わりになる選手がいない。ピッチに立つ力がある限りは、彼がプレーしなくてはいけない」
今週、セリエAは国際マッチウィークのため小休止に入ったが、それが本田を助けることはないだろう。それどころか、日本への長旅と1週間で2つの代表マッチ(それも大事なワールドカップ予選)……。疲弊してミラノに戻ってくるのは間違いない。
しかし、こればかりはどうしようもない。ミラン同様、日本代表も本田の力を必要としているのだから。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。