DirectX 12の異種混合GPU「EMA」でGeForceとRadeonをハイブリッドすると意外な結果に
Windows 10でサポートされたローレベルグラフィックAPI「DirectX 12」は、種類の異なる複数のGPUを混合して使う「Explicit Multi Adapter(EMA)」機能をサポートしています。これによってDirectX 12環境下では、NVIDIAのGeForceとAMDのRadeonを組み合わせてパフォーマンスを向上させる夢のコラボが実現するということで、高いパフォーマンスを求めるゲーマーだけでなく、余っているグラフィックボードを補助的に利用できるという点で多くのユーザーにメリットとなり得ます。そんなEMAを使った夢のコラボによるベンチマーク結果が続々と出そろい、予想通りの結果&意外な結果が明らかになっています。
http://www.gamersnexus.net/game-bench/2326-amd-nvidia-sli-directx-12-benchmark-explicit-multi-gpu
DirectX 12 Multi-GPU Technology Tested: GeForce and Radeon Paired Together > Benchmarks: 1600p Single & Multi-GPU Results - TechSpot
http://www.techspot.com/article/1137-directx-12-multi-gpu-geforce-radeon/page2.html
The impossible has happened: Testing Radeon and GeForce together in DirectX 12 | PCWorld
http://www.pcworld.com/article/3036760/hardware/the-impossible-has-happened-radeon-and-geforce-come-together-in-directx-12.html
◆異種混合GPU機能「EMA」
すでに複数のGPUを使ってパフォーマンスを上げる技術(マルチGPU)として、NVIDIAにはSLI、AMDにはCrossFireXがありますが、いずれの場合でも同種のグラフィックボードを使う必要があります。例えば、GeForce GTX 980をSLIで使うためには複数枚のGTX 980が必要で、GTX 980とGTX 970を使ってSLIを構成することはできません。もちろん、NVIDIA製のグラフィックボードとAMD製のグラフィックボードを混在させてパフォーマンスを上げることなど不可能でした。
しかし、DirectX 12のEMAでは、GTX 980+GTX970という異なるモデルのグラフィックボード同士はもちろん、NVIDIAのGeForce+AMDのRadeonという異なるメーカーの異なるブランドのグラフィックボードを組み合わせて機能させ、グラフィック性能を高めることができるようになっています。
さらにDirectX 12には「Split frame rendering(SFR)」という機能があり、マルチGPU環境でのグラフィックボードのGPUメモリを最大限に使うことが可能。従来のマルチGPUではGPUメモリのフレームバッファをミラーリングする(同期させる)必要があるため、GPUメモリが8GBのR9 390を2台、CrossFireで使っても、GPUメモリは8GBとして活用できるだけで16GB使えるわけではありません。これに対して、SFRでは画面を分割した上でそれぞれを各GPUが描画するという仕組みのためメモリを同期させる必要がなく、例えば4GBメモリのグラフィックボードと6GBメモリのグラフィックボードをEMAで使えば10GBのメモリを持つグラフィックボードとして取り扱えるというわけです。
◆GeForce+Radeonハイブリッドのベンチマーク
DirectX 12に早々と対応したゲーム「Ashes of the Singularity」が、ゲーム内のベンチマーク機能「DirectX 12 Benchmark Version 2」でEMAに正式に対応。ついに、GeForceとRadeonの夢のコラボが実現したということで、早くも「異なるグラフィックボードのEMA構成」によるベンチマーク計測が行われています。
・Gamers Nexusのテスト結果
Gamers Nexusは、マザーボード「EVGA X99 Classified」、CPU「Intel Core i7-5930K」、メモリ「Kingston 16GB DDR4 Predator」、SSD「(PDFファイル)Kingston HyperX Savage SSD」という構成で、ベンチマークを測定しています。なお、Gamers NexusはGeForce+Radeonの構成を「SLIFire」と名付けている模様。
Gamers Nexusによるベンチマークの結果は、以下のムービーで確認できます。
SLIFIRE: 390X + GTX 970 in DirectX 12 Benchmark - YouTube
GeForce GTX 970とRadeon R9 390Xを使ったフレームレートは以下の通り。GTX 970+R9 390Xは、GTX 970のSLI構成よりも約25%も速い結果になっています。
・TechSpotのテスト結果
続いて、TechSpotによるベンチマーク計測結果。グラフィックボード単体でのベンチマークは以下の通り、同一グレードのGPU性能の比較ではRadeonがGeForceをのきなみ上回る好成績を収めています。すでにDirectX 12ではAMD Radeonが有利になるという指摘がありましたが、その通りの結果となっています。
EMAでのプライマリーGPU(メインとなるグラフィックボード)とセカンダリGPU(サブとなるグラフィックボード)をそれぞれ入れ替えたベンチマーク結果は以下の通り。同じ組み合わせでも、Radeonをメイン・GeForceをサブにした方が、その逆の場合よりも高い性能を発揮しています。やはり、DirectX 12環境下でのRadeonの優勢ぶりがよく分かります。
・PCWorldのテスト結果
PCWorldのベンチマークテストでは、DirectX 12のEMAのパフォーマンスの高さが分かる結果が現れています。
注目すべきはGTX 980を2枚使った時のテスト結果。GTX 980をSLIで構成した場合よりも、SLIを無効化してEMAで構成した方がフレームレートが高く、高いグラフィック性能を発揮していることが分かります。
いずれのベンチマークテストからもDirectX 12環境下で異なるGPUを組み合わせるEMAの威力が証明されましたが、同時にAMDグラフィックボードの方が高い効果を発揮しやすいことも明らかになっています。これについてGamers NexusはNVIDIAのグラフィックドライバーが未成熟なことに原因があると指摘しています。
DirectX 12のEMAは、グラフィックボードだけでなく、AMD APUやIntel HD GraphicsなどのCPU内蔵のグラフィック機能を外付けのグラフィックボードと組み合わせることも可能だとのこと。DirectX 12対応のゲームが増えてくれば、GPU構成の幅が一気に増えることになりそうです。