中国新聞社によると山西省南部の洪洞県で、土葬された女性の遺体が盗まれる事件が続出している。過去3年間に27体が姿を消した。盗難防止のために、人家の近くに墓をつくる動きも出てきたという。(イメージ写真提供:(C)Morozova Tatiana/123RF.COM)

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 中国新聞社によると山西省南部の洪洞県で、土葬された女性の遺体が盗まれる事件が続出している。過去3年間に27体が姿を消した。盗難防止のために、人家の近くに墓をつくる動きも出てきたという。

 遺体が盗まれるのは「冥婚」または「陰婚」と呼ばれる風習に関係するとされる。配偶者がいない男性が死去した際に、生前は何の関係もない女性の遺体でも、一緒に埋葬すると「あの世でもさびしくない」と考える風習だ。また、「先祖があの世で満足していないと、子孫は繁栄しない」との考えもあるという。

 祖父母を一緒に埋葬したのに、祖母の遺体が盗まれたとして、「祖先の墓を守ることができなかった。申し訳ない」と、墓前で土下座をして詫びつづける村人もいるという。同地区では2013年から現在までの3年間あまりのうち、埋葬した女性の遺体ばかりが27体が盗まれた。

 農村部で土地が広く、墓が人家から離れた場所に散在しているのも、盗難が発生しやすい理由と考えられている。そのため、墓のすぐそばに小屋を作り、埋葬後の3カ月ほどは泊まって監視する人や、費用はかかるが墓全体を鉄筋コンクリートで固める人もいる。また、墓を自分の家に近い、人家が比較的多い場所に作る人も出始めた。

 配偶者がなく死亡した男性の遺族が女性の遺体を掘り出すのではなく、何者かが掘り出して、「販売」する場合がほとんどと考えられている。匿名を条件に取材に応じた男性は、「一番上の兄は生涯独身で、亡くなった時に女性の遺体を3000元(約5万2000円)で買った」と証言した。

 同地区の高齢者の間では男女を問わず、「何十年も連れ添ったのに、死んでから引き離されるかもしれない」との不安が広がっているという。

 親族の遺体を盗まれた人は警察に届けるが、警察は「時間が相当に経過してから遺体がなくなったことに気づくので、捜査は難しい」と説明した。

 これまで、住人が思い思いに墓を作っていたのは、人口の少ない、いわゆる「僻地」だったからだ。女性の遺体の盗難を防ぐには、「冥婚」は封建的な迷信にすぎず、遺体を盗んだ場合には窃盗や遺体侮辱罪で懲役3年以下の刑罰が科せられることなどの住民に対する啓発活動を進めることが肝要だが、僻地であるほど「公共墓地を作ってきちんと管理する」ことが必要とする意見もある。

 山西省では2015年12月にも、同省中部の呂梁市文水県でも同様の事件が多発していると伝えられた。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:(C)Morozova Tatiana/123RF.COM)