【戸塚啓コラム】プロ野球とサッカー、キャンプでのファン対応に見る彼我の違い
先週の沖縄に続いて、宮崎へ行ってきた。今度もまた、Jリーグのキャンプ取材である。
宮崎ではJクラブだけでなく、プロ野球の数チームもキャンプを行っている。僕が滞在した7日の日曜日、福岡ソフトバンクホークスの練習には3万人の観客が詰めかけたそうだ。
日曜日で晴天に恵まれたとはいえ、キャンプに3万人とは! 日本シリーズを制したチームのポテンシャルを、プロ野球の底力を、感じざるを得ない。Jリーグのキャンプには、そこまでの集客能力はない。
そもそもお客さんの〈迎えかた〉が、プロ野球とサッカーでは違う。
プロ野球は午前中から午後遅くまで練習が行われ、スタジアムではいつ、どこで、どんな練習があるのかが、分かりやすく表示されている。チームのグッズを買うことができるし、飲食の選択肢もそれなりに充実している。キャンプ地ならではのお弁当などは、少しくらい高額でも買いたくなる。
余暇の過ごしかたとしても、時間潰しにふらりと訪れても、プロ野球のキャンプは楽しむことができる。家族連れでも、ひとりでもOKだ。「観に来てもらう」ことを前提に、観戦環境が考えられている。シーズン中にも似たスタンスで、ファンを迎えていると思う。
サッカーはどうか。
プロ野球とは違って、練習時間が短い。サッカーのキャンプが宿命的に背負う大きなハンディだ。午前と午後の2部練習をする場合も、午前練習の終了から午後練習の始まりまでは時間が空く。
だからだろうか、グッズの販売や飲食の用意は基本的にない。飲食の提供には保健所などの許可も必要なので、そもそも手間がかかる。一方で、サッカーのキャンプを訪れる観客は、プロ野球に比べればはるかに少ない。費用対効果を考えると、飲食には手を出しにくいかもしれない。グッズを販売しているクラブはあるが、それもケース・バイ・ケースだ。
個人的に残念なのは、ファンへ向けた選手の情報の少なさである。観戦の手引きが少ないのだ。
たとえば、背番号と名前の一覧表が配布される(置いてある)だけでも、ファンはありがたい。ペーパーをコピーするのが手間なら、模造紙に書き出して掲示してくれてもいい。手作り感満載で、まったく問題ない。
そのクラブやサッカーに通じているファンではなく、通りすがりの観戦者でも楽しめることを前提に、ファンサービスを考えてほしいのだ。選手の名前を知ったうえで練習や練習試合を観れば、何も分からないよりも楽しめるし、クラブや選手に親しみを抱くきっかけにもなる。グッズや飲食の販売よりも、こちらのほうははるかに重要である。
選手のコンディションに対するクラブ側の気配りに、柔軟性が欠けているなと感じる場面もある。これはもうキャンプに限らないのだが、「身体が冷えるので」とクラブ側が断りを入れ、選手がファンの前から離れていく場面を見ると、「もったいないな」と思うのだ。
万全の準備でシーズンの開幕を(あるいはシーズン中の試合を)迎え、結果を残すことで来場者を増やしたいとの考えは、プロスポーツの根本と言っていいものだ。そのために、クラブ側が選手を保護する気持ちは理解できる。
ただ、キャンプや練習場を訪れたのにサインをもらえなかったり、一緒に写真を撮ってもらえなかったりしたファンの気持ちには、おそらくヒビが入ってしまうだろう。クラブと選手にとっては連日の対応だとしても、ファンにとっては初めてかもしれないし、最初で最後のチャンスかもしれない。そこまで考えを巡らせたうえで、ファンと接してほしいと思うのだ。
宮崎ではJクラブだけでなく、プロ野球の数チームもキャンプを行っている。僕が滞在した7日の日曜日、福岡ソフトバンクホークスの練習には3万人の観客が詰めかけたそうだ。
日曜日で晴天に恵まれたとはいえ、キャンプに3万人とは! 日本シリーズを制したチームのポテンシャルを、プロ野球の底力を、感じざるを得ない。Jリーグのキャンプには、そこまでの集客能力はない。
プロ野球は午前中から午後遅くまで練習が行われ、スタジアムではいつ、どこで、どんな練習があるのかが、分かりやすく表示されている。チームのグッズを買うことができるし、飲食の選択肢もそれなりに充実している。キャンプ地ならではのお弁当などは、少しくらい高額でも買いたくなる。
余暇の過ごしかたとしても、時間潰しにふらりと訪れても、プロ野球のキャンプは楽しむことができる。家族連れでも、ひとりでもOKだ。「観に来てもらう」ことを前提に、観戦環境が考えられている。シーズン中にも似たスタンスで、ファンを迎えていると思う。
サッカーはどうか。
プロ野球とは違って、練習時間が短い。サッカーのキャンプが宿命的に背負う大きなハンディだ。午前と午後の2部練習をする場合も、午前練習の終了から午後練習の始まりまでは時間が空く。
だからだろうか、グッズの販売や飲食の用意は基本的にない。飲食の提供には保健所などの許可も必要なので、そもそも手間がかかる。一方で、サッカーのキャンプを訪れる観客は、プロ野球に比べればはるかに少ない。費用対効果を考えると、飲食には手を出しにくいかもしれない。グッズを販売しているクラブはあるが、それもケース・バイ・ケースだ。
個人的に残念なのは、ファンへ向けた選手の情報の少なさである。観戦の手引きが少ないのだ。
たとえば、背番号と名前の一覧表が配布される(置いてある)だけでも、ファンはありがたい。ペーパーをコピーするのが手間なら、模造紙に書き出して掲示してくれてもいい。手作り感満載で、まったく問題ない。
そのクラブやサッカーに通じているファンではなく、通りすがりの観戦者でも楽しめることを前提に、ファンサービスを考えてほしいのだ。選手の名前を知ったうえで練習や練習試合を観れば、何も分からないよりも楽しめるし、クラブや選手に親しみを抱くきっかけにもなる。グッズや飲食の販売よりも、こちらのほうははるかに重要である。
選手のコンディションに対するクラブ側の気配りに、柔軟性が欠けているなと感じる場面もある。これはもうキャンプに限らないのだが、「身体が冷えるので」とクラブ側が断りを入れ、選手がファンの前から離れていく場面を見ると、「もったいないな」と思うのだ。
万全の準備でシーズンの開幕を(あるいはシーズン中の試合を)迎え、結果を残すことで来場者を増やしたいとの考えは、プロスポーツの根本と言っていいものだ。そのために、クラブ側が選手を保護する気持ちは理解できる。
ただ、キャンプや練習場を訪れたのにサインをもらえなかったり、一緒に写真を撮ってもらえなかったりしたファンの気持ちには、おそらくヒビが入ってしまうだろう。クラブと選手にとっては連日の対応だとしても、ファンにとっては初めてかもしれないし、最初で最後のチャンスかもしれない。そこまで考えを巡らせたうえで、ファンと接してほしいと思うのだ。
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している