街で見かけたネコの写真を撮り続け、インスタグラムのフォロワーが3万人を超えた人がいる。名前は沖昌之さん。下町で暮らすネコの写真を集めた『ぶさにゃん』(新潮社より発売中)も好評だ。まずは沖さんが撮影したネコの写真から。





「3番目の写真はメスネコが木に登ったところです。木のそばに発情したオスネコがいるんですけど、実はそのネコがしつこく後をついてきていて、それでメスネコが木の上に逃げてきたわけです。その一部始終を見ていたおばさんがほうきを持って走ってきて、オスネコを追い払ってました」

――なるほど!!
「ちなみに、僕に対しても『何やってんの!?』という感じで追い払われましたけど(涙)」

時間があればネコに会うためにウロウロしている沖さん。実は幼い頃にネコに近寄れなくなるエピソードがあったという。
「母が大のネコ好きで、実家でもネコのサスケを飼ってたんですけど、子どもの頃に僕がサスケのしっぽを握りまくって遊んでたんです。そしたらひっかかれてしまって。それ以降はどんなにかわいくても近寄れなくなったんです」
沖さんはネコに片思いの状態のまま、月日は流れた。
「2年前の大晦日。とある公園にいると、可愛いけど、どこかブサいくな表情のネコが現れたんです。僕はそのネコを『ぶさにゃん』と呼ぶようになりまして。ちょうどその時に一眼レフのカメラを持っていたので撮影してSNSで公開しました。すると国内外からたくさんの『いいね!』をもらえたんです」
当時、日常生活において、楽しいことがあまりなかったという沖さん。ぶさにゃんは沖さんの前に度々姿を表すようになり、沖さんは本気でぶさにゃん及び、ほかのネコの写真を撮るようになった。


――インスタグラムのフォロワー数がすごいことになってますよね。
「ありがたいことに3万人を超えてます。台湾をはじめ、海外からの反響も大きいです。今後、台湾で写真展ができればと思ってます」



沖さん流、撮影時に気をつけていることを聞いてみた


●ネコがミスをしても笑わない
「実際、ネコが獲物をとれなかった瞬間とか、何かに飛び移ろうとして失敗した瞬間に笑ってはダメというのをよく聞きますね。ネコのほうも『今のはわざとですよ』という表情をする時があります。そういう場面に出くわした瞬間、なるべく目を合わせないようにしています」


「ネコがブランコに乗ってたんですけど、撮れなかったんです。乗っている瞬間を見かけたので『あ!』と思って望遠レンズに変えようとした時は時すでに遅しでした」
ネコが降りたあと、ブランコがゆらゆらと揺れているのが気になるようで、触ろうとしていたそうだ。

●距離感を大切に

つかず離れずの関係が良いそうだが、悩ましいと思うこともあるそうだ。
「昨日は人懐っこく近づいてきてくれたのに、日が変わるとよそよそしくなっていることがありまして。思わず、『何かあったの?』と思ってしまいます(笑)」

●地域の人に話しかけられたら愛想よくする

ネコの写真を撮っている人の中で「昼間にカメラを持って住宅街をウロウロしていたら職務質問された」という人は少なくないのではなかろうか。その地域の人に声をかけられたら、愛想よく答えるようにしたいところ。
「僕は職務質問はされたことはありませんが、地域の人に声をかけられることはあります。すぐに『ネコを撮ってるんです』と言って、モニター画面を見せます(笑)」

●譲り合いを大切に

「路上にネコが現れて、そのネコを別の人が撮ろうとしていたら、その人に譲ります。焦って撮っても仕方がないですし」
本気でネコの写真を取り始めた頃は、一枚でも良い写真を撮ろうと欲張ろうとしたこともあったそうだ。



沖さんはたくさんの写真を撮っているうちに、ある考え方をするようになった。
「僕が一人でいる時にシャッターチャンスがあっても、タイミングが悪くて撮れない事があるんです。そんな時は『せっかくシャッターチャンスを与えてくれたのに、自分がうまく撮れなくて申し訳ない』って思うんです」
謙虚な沖さんは今日も謙虚にネコの写真を撮っている。
(取材・文/やきそばかおる)

「ぶさにゃん」(沖昌之著 新潮社刊)発売中


下町で遭遇したネコが見せてくれた色々な瞬間を収めた1冊。ぶさかわいい表情・しぐさにヘン顔、脱力ポーズ、思わず二度見のびっくりな体勢や、ほっこりするフワモフなお顔が心を癒す写真集。※記事中に紹介した写真も一部掲載されています。

猫写真家・沖昌之のブログ「野良ねこちゃんねる。」