先日、書店の外国人向けコーナーを何気なく見ていたところ、観光客の急増にともない、いわゆる「日本のガイドブック」が進化していることに気付いてびっくり。全編がコミック形式のものや、「ゲストハウス」や「駅弁」の情報を網羅したもの、「温泉マナー」について詳細に解説したものなどなど、マニアック化が進んでいるようす。

と、そんなわけで外国人観光客に向けた「日本のガイドブック」を長年にわたってリリースし続けている、「チャールズ・イー・タトル出版」になかでも人気がある本、反響があった本についてお話をうかがってみた。

写真より歴史やストーリーのテキストを重視



まずご紹介したいのは、なかでも人気があるという"タトル・トラベルパック"というシリーズの『Japan(日本)』。こ、これは……富士山や姫路城をあしらった、ザ・ニッポン的な表紙ですね。日本に興味を持ったら、最初に手にとってしまいそう。版元によれば、

「本書はイギリス出身のトラベルライター、 ロブ・ゴス氏が、外国人観光客にとって魅力のある日本の観光地を、歴史や文化背景の解説を交えながら紹介する本です。海外のガイドブックは、日本のものとは異なり、解説が多いのが特長です。外国人ツーリストにとって、歴史や文化背景などの詳細な情報が、その場所を訪れるべきか否かの重要な判断材料となります。従いまして、写真よりも解説が充実しているガイドブックが好まれる傾向が強いです」

とのことで、日本人向けの国内ガイドだと写真どーん!みたいな見た目のインパクトにこだわったものが多いが、海外では詳細な歴史やストーリーといったテキストが重視されるというのが、やや意外!?


今年3月発売の『Cool Japan Guide』。これはなんと、前述した全編コミックのガイドブックで、若い世代を対象にした進化系!?といえるかも。ヘタウマっぽい独特のゆる〜いタッチがたまらない。

「こちらは『アメイジング・スパイダーマン』の脚本を手掛けたニューヨーク在住のマンガ家、アビー・デンソン氏が著者です。コンビニや自動販売機など、日本独特の最新の情報を紹介する構成になっております」

読んでみたところ、いわゆる「ガチャガチャ」とか「クイックマッサージ」なども、外国人の目には珍しいものなんですね……。自動販売機でスープなど、ドリンク以外のものが買えるというのも驚きのようだ。

「ひきこもり」「萌え」を解説



続いて、表紙からしてサブカル感が漂う『A GEEK IN JAPAN』。こちらは1981年生まれのスペイン人が著者で、2011年の刊行以来、ロングセラーになっているという。観光情報にとどまらず、「本音と建前」「義理」「先輩と後輩」など日本人特有のメンタリティにもふれており、読み物としても抜群におもしろい。 日本のビジネス社会における、「根回しの重要性」なんてコラムも!

「本書が出版されるまで、日本の文化を紹介する書籍といえば、高度成長期までのものが中心でした。2000年代以降の日本、とりわけアニメやポップカルチャーや若者達の行動パターンを解説する本書が登場したことによって、英文による日本文化紹介書籍の幅が広がったように感じます」

とのことで、確かに著者おすすめの観光情報のみならず、「ひきこもり」「萌え」「ヴィジュアル系」など若者のライフスタイルやカルチャーにも言及していて、「どんなふうに説明されてるんだろう……」と思わず読み込んでしまった。

私たちが日々何気なくしている「血液型」の話題なんかも、外国人には不思議に思えるようだ。

本書は外国人観光客のみならず、国内のさまざまな事情を海外に伝えようとする日本人にもよく読まれているそう。また、日本の大学に留学している外国人留学生のクラスで、教科書として採用されたこともあるそうでびっくり!


『A GEEK IN JAPAN』 と同様のコンセプトの本としては、他にこの『Tokyo on Foot(東京散歩)』もおすすめだそう。

「フランス人のイラストレーター、フロラン・シャヴェ氏が、半年間の東京暮らしの中で体験したできごと、目に留まった景色をスケッチした一冊です。イラストに書き添えられたエスプリの効いたコメントも魅力的です。外国人の目から見た日本の日常生活を、スケッチにて紹介しています」

とのことで、いわゆる「建て売り住宅」を描いたイラストの表紙からしてもうぐっとくるものが……。まったく同じデザインの家が等間隔で3軒並んでいる、こういうのも、外国人から見ると珍しくて、おもしろいと感じるものなんですね……。

「以前は東京や京都など、ステレオタイプな日本を紹介するガイドブックが人気でした。今でも人気があるのですが、時代とともに、外国人観光客の好みは細分化されているように思います。たとえば、マンガフェスタやコミケ、中野ブロードウェイなど、いわゆる"オタクの聖地"を巡礼する外国人も増加しています。『トリップ・アドバイザー』といったサイトを利用する観光客が増えていることもあり、ますます詳細な解説と、日本の良いところを発見する独自の視点が出版社に求められているように感じています」

と、そんなわけでまさに「日本オタク」ともいうべき外国人が増えてるんだなあ……と、これらの出版物からしみじみ感じた次第。日本人である皆さんも、旅人になった気分で手にとってみては? 新たな視点での、国内旅行のヒントが見つかるかもしれませんよ。
(まめこ)