海? それとも山? バカンス好きフランス人はどちらを選ぶのか

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「山と海、どっちが好き?」という会話を一度はしたことがあると思う。
友人と話していても好みは人それぞれのように、日本は調査媒体により割合にばらつきがあるみたいだ。

さて、年に5週間の有給休暇を取れるバカンス大国フランス。山派と海派が同じくらいの割合である日本に対し、フランスではどちらが多いのだろうか? 


【海を好む? フランス人の傾向】


仏国立統計経済研究所がまとめたフランス人の40年間のバカンス動向によれば、フランス人は夏の休暇先として、明らかに山より海を好むそうだ。休みに海を選ぶ人は5割に近く、山は2割ほどしかない。

彼らはどのような滞在を好むのか?
平均宿泊数は海に行く人の場合が11.2泊、山は10.9泊。もっとも人気のあるアクティビティは散策だという。次いでビーチまたはプールが続き、3位以下は市内観光、自然遺産、美術館や歴史遺産となる。
つまり、観光スポットを巡るような形態はあまり好まない。私たちがイメージする通り、ある程度のまとまった休みを取り、そのなかでゆっくり過ごすという滞在スタイルである。

しかし10日以上も出かけると、ホテル代だけでもかなりの出費になるのでは……。家族全員で出かければ、それこそかなりの額に……。フランス人はどのように、それら費用を捻出しているのか。


【フランス人はホテル代を払わず?】


実は払っていないのだ。
前述の統計にある宿泊先の詳細を見ると、家族の家に泊まると回答した人が30%、友人の家が6%、別荘が17%いた。
その一方、お金を払って泊まる商業宿泊施設は、キャンプ場が11%、ホテルが9%、ツーリストレジデンスが7%、民宿が4%だった。予想に反してホテルなどの商業宿泊施設の割合が高くない。宿泊費をなるべく抑えつつ、現地では散策などをして楽しむという、お金のかからない滞在方法で過ごしている。

そもそもの質問に戻ってみよう。本当にフランス人は、皆バカンスへ出かけているのだろうか? 

【バカンスに出かけるフランス人の割合】


統計によればバカンスに出かける人は全体の6割半だという。フランスにとってバカンスは、元々富裕層の習慣であり、彼らのステータスだった。ところが労働条件の改善などが進み、労働時間や休暇が法的に整備され、バカンスの習慣が国民全体に広がった。1964年に43%だった割合は、40年後には20%近く上がっている。

もちろん出かけられない人もいる。年齢が若いほど経済的な理由が多くなるし、年齢が高くなれば健康面での理由が多くなる。15〜44歳の世代には、仕事もしくは学業のためにバカンスへ行けない人が1割半〜3割弱いる。


「バカンス」という言葉を聞くと、私たちは大層なことをイメージしがちだ。しかし、このように統計を見ていくと、フランス人のバカンスは10日間ほどの休みを田舎の実家や親戚の家で過ごし(海沿いであればなお良し!)、どこかへ行くわけでもなく現地を散歩するというもの。もちろん中には絵に描いたような豪華な滞在をする人もいるが、一般的なフランス人にとってはこれがバカンスの感覚なのだ。
(加藤亨延)