海外でスリ被害にあわないためにどうすべきか

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海外旅行でスリは最も身近に出合う犯罪だ。観光都市パリでもその被害は深刻で、地下鉄構内では常に注意喚起の放送は流れているし、日本をはじめ各国大使館も盗難に合わないように盛んに勧告を出している。


パリのシンボルであるエッフェル塔。現地メディアによれば、ここでスリは、1日で4,000ユーロ(約54万円)を外国人観光客から稼ぐこともあるという。彼らは主に、ルーマニアをはじめ国外からやって来たロマで、3〜4人のチーム、もしくはさらに大きな集団で動く。施設周辺だけではなくチケットを買い、施設内でも犯行を働くため、入場後も注意は必要だ。

スリを見分けるには?


彼らを見分けることはできるのか? じつはロマは特徴的な服装をしているため、少し現地の様子に慣れてくると、身なりで見分けることは可能だ。彼らの多くは浅黒い肌に、くたびれ薄汚れた格好をしている。女性の場合は長髪をまとめ、ロングスカートをはいていることが多い。
ただし観光客と同じような身なりに着替え、周囲からの疑いを減らしつつ仕事をする場合もある。

スリたちの独自テクニック


それぞれのスリは、独自のテクニックを編み出している。例えば自撮りをしながら、もしくは写真を撮るのを頼みながら近づくものや、観光客の行く手をブロックしたり、ぶつかったりして盗むもの。道を聞くなど、質問するふりをして近づくなどさまざまだ。署名を求めて、観光客が用紙に名前を書いた途端、金を請求したり、名前を書く最中に所持品を盗む手口は、どの観光スポットでもよく見られる光景だ。

列車内でもスリに注意


列車内でのスリも多い。地下鉄では列車のドアが閉まる直前に、観光客グループ1人だけをホームに引き込み、1人だけ残った相手から強引に現金を奪う場合もある。
特に、多額の現金を持ち歩く傾向にある中国人観光客は、スリにとって格好の標的になっている。例えばパリの中国大使館は、シャルル・ド・ゴール空港からパリ中心部へ向かう列車の利用は避けるようにという警告を出している。治安の悪い北郊外を通るその路線では、現金やパスポートなど身の回りの物の盗難が多いからだ。



所持する現金は最低限に


フランスはカード社会のため、その店でも大抵はクレジットカードを使える。そのため現金の所持は最低限に抑え、残りをクレジットカードかデビットカードを使うことで、仮に財布を盗まれたとしても、すぐにカード停止処置をすれば、最悪のケースは避けられる。現地のフランス人も現金を持ち歩いている人は少ない。パリのアメリカ大使館も、財布に入れる所持金は40〜50ユーロ(約5,000〜7,000円)と最低限にして、残りはカード利用を推奨している。

観光客から得た金を、彼らはどのように使っているのか? スリの中には、その金で良いホテルに泊まり、豪勢な滞在をするものもいるそうだ。残りは母国のルーマニアなどへ送られ、家など不動産投資に回されるという。

これら悪質なスリが出入りする職場環境に対し、今年5月22日、エッフェル塔の職員らはストライキを行い、施設を閉鎖した。施設内でスリが職員に対して暴力を振るう場合もあり、管理会社と警察は、これら犯罪に十分な対策を取っていないという理由からだ。犯罪軽減のための効果的な解決法と、地区の安全を求めたのだ。


フランス警察の対策と現状


ただしフランスの警察も対策を怠ってきたわけではない。ルーマニア大使館との共同し取り組むなどして、実際の被害割合も、2015年1月〜4月の統計では、昨年の同時期と比べて強盗、スリともに2割ほど減ったという。
しかしながら、例えばエッフェル塔は毎年700万人が訪れる施設だ。来場者の75%を外国人が占め、それらすべてを管理することはとても難しい。スリの他にもテロ目的の爆発物などさまざまな脅威にも目を配らねばならない。

世界有数の観光地からスリや詐欺師をなくすことは不可能に近い。楽しみにしていた旅行を嫌な思い出にしないように、華美な服装は避け、いかにスリに目をつけられず、被害に合っても最小限に抑えられるようにするか。一人一人が心がけることでしか、防ぐ方法はないのだ。
(加藤亨延)