古豪対決、阪南大高に軍配

 甲子園出場回数は両校合わせて17回。昭和後期に黄金時代を築いた上宮対阪南大高という3回戦屈指の好カードを見ようと平日にもかかわらず、花園球場には多くの人が訪れた。

 上宮の先発は2年生左腕の加納龍之介。立ち上がりに一死から阪南大高の2番・城尾拓海(3年)に四球を与えると3番・山口塁(3年)は送りバント。一死から主軸打者のキャプテンにバントさせるというのはあまり見かけない作戦だが、裏を返せば阪南大高・片岡定治監督が山口のバント技術とエースで4番の長井陸(3年)の打撃力に信頼を置いている証拠でもある。

 いきなり得点圏にランナーを背負った加納、立ち上がりは変化球中心にカウントを稼ぎ、コースもほとんどがアウトコースという配球だったが長井に対してはストレート勝負を挑みサードゴロ、最初のピンチを無失点で切り抜けた。加納は気持ちの込もったストレートを投げ込む左腕であり、変化球中心だった初回も”かわす”というよりは”ズラす”という意味合いが強かった。2回からはストレートの割合も増え、ランナーを出しながらも序盤3イニングを無失点に封じる。

 2年生左腕を援護したい上宮打線の前に立ちふさがったのが、阪南大高のエース・長井。サイドスローから投げ込むキレのある球に苦しみ3イニング続けて三者凡退。特に下位打線は外に逃げて行くスライダーに全く対応出来ず3者連続三振。すると4回、エースの力投に阪南大高打線が応える。

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 一死からファールで粘った野辺雄一(2年)がセンター前ヒットで出塁すると、中田大智(3年)がライト線にタイムリーツーベースを放ち1点を先制。藪内直人(3年)もセンター前ヒットで続き一、三塁とすると、木村俊輝(3年)も鋭い当たりをセンターに放つ。これはセンター正面のライナーで上宮のキャプテン・増田麗音(3年)のグラブに収まったが犠牲フライとなり1点追加。3連打と犠飛で2点を奪い、二死一塁で打順がトップに返ると、2打席続けて変化球で凡退していた大塚貞人(3年)が同じような球を今度はきっちりセンター前に弾き返し、前の打席ではインストに詰まらされサードゴロに倒れていた城尾がまたしてもインストに詰まるが三遊間に落ちる内野安打で満塁に。このチャンスで3回の第2打席にスリーベースヒットを放っていた山口がベンチとスタンドの期待に応えるタイムリーヒットをレフト前に運ぶ。

 初回がノーヒット、2回がシングルヒット、3回はスリーベースと徐々にペースを上げていた阪南大高打線が4回は一死から3連打、犠飛を挟んで再び3連打とつながり上宮の先発・加納をKO。加納はピンチになっても失点しても逃げ腰にならず強い気持ちで向かって行ったが阪南大高打線の対応力がそれを上回っていた。もうこれ以上の失点が許されない上宮は背番号1の永橋翔吾(3年)をマウンドに送る。 しかし、4番・長井の打球は左中間を破る走者一掃のタイムリーツーベース。二塁に滑り込んだ後、立ち上がる際にはパンと両手を大きく叩いていたが、この追加点がいかに大きいかはマウンドが本職の自分が誰よりわかっていたのだろう。

 大量点を追う展開となった上宮はその裏二死から3番・谷優輔(3年)、4番・阪井瞭介(3年)の連打で一、三塁のチャンスを作ったが無得点。7点差で迎えた7回の攻撃も先頭の5番・杉山晃志郎(3年)がヒットを放ち、その後代打攻勢をかけたが最後までホームが遠かった。大量リードに守られた長井は終始自分のリズムを崩さず7回をシャットアウト、ランナーを出した際にはセットポジションの間合いを変えるなどバッターと勝負しながらランナーへの警戒も全く怠らず、投げるだけでない投手としてのセンス、能力の高さも感じさせた。投打に戦力が整う阪南大高と昨夏に就任した村田侑右新監督が指揮を執る発展途上の上宮、地力の差が4回の攻防に現れコールド決着。阪南大高が4回戦へ駒を進めた。

(文=小中 翔太)

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