by hehaden

人間は「人生の3分の1を寝て過ごしている」と言われていますが、毎日たった3〜4時間の睡眠を取るだけで普通の人と同じように問題なく生活できる「ショートスリーパー」と呼ばれる人々がいます。ショートスリーパーの人々はなぜ睡眠時間が極端に短くても健康的なのか、また、普通の人でも短時間睡眠をマスターできる方法などをBBCが公開しています。

BBC - Future - The people who need very little sleep

http://www.bbc.com/future/story/20150706-the-woman-who-barely-sleeps



アメリカ・フロリダ州に住む、元・心理学者のAbby Ross氏は、物心ついた頃からずっと毎日たった4時間の睡眠だけで健康的な生活を送っている「ショートスリーパー」です。Ross氏は「他の人よりも1日のうち起きている時間が長いことは幸せです。まるで人生を2倍長く生きているように感じます」と話します。「毎朝とてもいい気分で目が覚めます。周りはとても静かで、何でもできるように感じられるのです。早朝は大抵のお店がまだ閉まっているので、朝起きた後はネットで買い物したり本を読んだりして過ごします。誰も歩いていない道を散歩したり、世界中の他のタイムゾーンで暮らしている人たちとおしゃべりすることもあります」とRoss氏は毎朝の日課について語っています。



by Molly Sabourin

Ross氏のようなショートスリーパー体質の人々は、毎日朝4時〜5時に起きて活動を始めるのですが、日中に気だるくなったり、うたた寝したりしてしまうことは全くないそうです。有名な人物としては、イギリスのマーガレット・サッチャー元首相がショートスリーパーだったことは広く知られています。彼らが極端に短い睡眠時間でも健康的でいられるのは、遺伝子に原因があるそうです。

2009年にカリフォルニア大学で行われた研究では、「毎晩夜中に床に就いても翌朝4時に目が覚めてしまう」という女性とその家族を対象とした、遺伝子配列の比較実験が実施されました。実験の結果、研究チームはショートスリーパーの人たちの体内で「DEC2」という遺伝子が突然変異を起こしていることを発見。また、前述のショートスリーパーの女性の家族のうち、普通レベルの睡眠時間を必要とする人たちはDEC2遺伝子に異常が見られなかったそうです。



by Richard Ricciardi

「人は眠っている時に記憶を整理したり脳細胞のダメージを修復したり脳内の老廃物を取り除いたりしている」というのが通説です。カリフォルニア大学で睡眠の研究を行っているYing-Hui Fu教授によると、ショートスリーパーの人たちはDEC2遺伝子の突然変異によって脳内の情報整理を普通の人よりも短い時間で済ませることができるため、睡眠時間が短くても問題ないのではないかと考えられているそうです。

しかし、睡眠時間が短い場合、通常は健康状態や生活の質、寿命などに多大な影響を及ぼすだけでなく、気分が落ち込んだり体重が増えたり、脳卒中や糖尿病のリスクが高くなったりといった数々の問題が生じます。Ying教授は「睡眠は人生において重要なもので、十分に睡眠を取ることで認知症など多くの病気を予防することができ、逆に睡眠が不足していると脳の認知機能が低下してしまいます」と語っています。

Ying教授は今後、「短い睡眠時間しか取ることができない」という不眠症の患者ではなく、「短い睡眠時間でも毎日健康的に暮らしている」ショートスリーパーの人々を対象に研究を進めていきたい考えです。Ying教授は現在、複数のショートスリーパー家系の人々の遺伝子配列を研究していて、「研究が進めばいつか一般の人でもショートスリーパーになれる可能性がある」と話しています。



by Jeffrey Pott

「ショートスリーパー体質ではない人も短時間の睡眠で健康を維持することはできるのか?」という疑問に対して、睡眠コンサルタントのNeil Stanley氏は「睡眠を改善するための最も有効的な方法は、起床時間を毎日同じ時間に設定することです」と回答しています。Stanley氏によれば、毎日同じ時間に起きることで身体が起床時間を覚えていき、眠っている状態から目覚めやすくなるため生活サイクルが崩れにくくなるそうです。また、Stanley氏は「世の中の『睡眠時間は短い方がよい」という流れは無視して、自分の身体に合った睡眠時間を見極めることが重要です。自分の睡眠がどのようなタイプかが分かれば、人生の質が大きく変化するでしょう」ともコメントしています。



by Sam DeLong