CKからゴールを奪った澤。復帰戦で結果を残し、チームメイトからも祝福された。(C)Getty Images

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 1-0で勝利したニュージーランド戦で364日ぶりに、澤穂希が代表のピッチに戻ってきた。最後の代表戦出場は、昨年5月25日、ベトナムで行なわれたアジアカップの決勝・オーストラリア戦。その後のアジア大会、カナダ遠征、そして今春のアルガルベカップと招集が見送られ、復帰したチームにはかつての“指定席”はなかった。
 
 佐々木則夫監督は、今回のワールドカップメンバーについて「戦える選手を選んだつもりだが、どの選手も『23名に入ったからOK』ではなく、レギュラーを獲るための競争をしてくれている」と評価したが、澤もそのひとり。6月6日にカナダで開幕するワールドカップに向けた香川・丸亀での合宿では他の選手と横一線でスタートし、積極的な姿勢でトレーニングに励み、ニュージーランド戦のスタメンの座を勝ち獲った。
 
 ボランチで組んだ川村優理とは初コンビだったが、守備に重点を置きながら、バランスを保つ。持ち味である球際の強さも見せ、体格で勝るニュージーランドの選手にも当たり負けしなかった。
 
 そして、ハイライトは24分の左CK。宮間あやが蹴ったボールにニアで大儀見優季が反応し、これにDFが釣られ、澤の前にボールが流れてくる。その瞬間、右足を一閃。代表最年長出場記録とともに、代表最年長得点記録をもあっさり更新した。
 
「(宮間)あやのボールが良かったので触るだけでした。日本代表で高いパフォーマンスを求められながら、得点という結果を残せたことは、嬉しかった」(澤)
 ゲーム前のプランでは、後半途中で交代する予定だったが、川村が接触プレーで負傷したこともあり、指揮官は澤をピッチに残し、フルタイム出場となった。代表戦で90分間プレーできたことは、本大会に向けて「自信になりました」(澤)。
 
 もちろん、劣勢を強いられた時間もあったチーム同様、100パーセントの出来ではない。指揮官も「“澤の神”に助けられた」と口にしながら、手放しでの称賛は控えた。
 
「後半の途中までは非常に良かったのですが、終盤には多少、疲労の色も見られた。守備の部分では良かったのですが、攻撃に向けた展開で、前にスペースがあるのに、そこを見つけられず、パスを受けても出し手へ返すだけになってしまう部分があった」(佐々木監督)
 
 28日に行なわれる、イタリア戦では、おそらく阪口夢穂が復帰する。この日途中出場した宇津木瑠美や、田中明日菜など、ボランチのレギュラー争いは激しい。本大会でも対戦相手やコンディションを踏まえたうえでのローテーション起用が考えられる。
 
 それでも「意識し過ぎるのはいけないんですが、やはり特別な選手」(宮間)の復調は、頼もしい限りであり、対戦国には大きな重圧になるはずだ。
 
取材・文:西森 彰(フリーライター)