大島vs鹿児島工

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力強くないけど、粘り強い!・大島

1失点完投勝利のエース前山優樹(大島)

 先制したのは鹿児島工。2回一死一三塁で9番・黒飛健留(3年)がウエストボールに食らいついてスクイズを決めた。3回以降リリーフした2年生左腕・竹ノ下僚の好投で、終盤まで大島に得点を許さなかった。

 先制された大島は、エース前山 優樹(3年)を中心に粘り強く守り、追加点を許さなかった。8回に7番・大山竜生(2年)のレフト前タイムリーで同点に追いつき延長11回、3番・白井翔吾主将(3年)のセンター前タイムリーで劇的な勝利を手にした。

「力強くはないけど、粘り強い」(渡邉恵尋監督)。今年の大島の真骨頂のような戦いぶりで、延長戦をものにした。

「身体が開いてボールがシュート回転して直球が走っていなかった」とエース前山。立ち上がりから毎回のように先頭打者にヒットを打たれ、走者を背負いながらの苦しい投球が続いた。

 だが「悪いながらも修正できるようになった」と前山。直球が走らない分、カーブを中心にした変化球の制球が生命線だ。力で押す投球が持ち味だが、夏をにらんで、緩いボールを織り交ぜて力の出し入れを考える投球ができるようになることを課題にしていた。尻上がりに変化球の制球が安定し、打たせて取る投球で三回以降、追加点を許さなかった。

大島サヨナラ勝利

 延長11回、2時間23分の緊迫した展開だったが、渡邉監督は一度も守備の伝令を送っていない。「バッテリーが落ち着いていたので安心して見ていられた」からだ。守る野手も、毎回走者がいるのは「正直ヤバくて、しんどい」(白井主将)が、春以降こういう試合をものにして勝ち抜いてきた経験と自信がある。

 4回にはライト・中田 優(3年)が珍しいライトゴロに仕留めた。6回にはエンドランがかかって逆を突かれたショート・大山が、きっちり一塁でアウトをとるなど、技ありのプレーで粘投を続けるバッテリーを盛り上げた。

 バント失敗、3併殺など拙攻が続いた攻撃も、ようやく終盤にリズムが出てきた。8回裏に7番・大山の適時打で同点に追いつき、延長11回一死二三塁と、最大のヤマ場で3番・白井主将が打席に立つ。

 3回の好機に変化球を打ち損じた白井は「直球を待ちながら変化球に対応する」と決めていた。変化球で追い込まれたが、唯一甘く入ってきた直球を逃さず中前に弾き返し、熱戦にケリをつけた。

 厳しい試合をものにして「チーム全体の成長を感じた」と前山。準々決勝で対戦する相手は強豪・鹿児島実。「小さい頃から名前を知っている強豪校。自分たちの野球を思い切りぶつけて勝ちにいく」と闘志をみなぎらせていた。

(文=政 純一郎)