中京vs至学館

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中京が4回、集中力を見せて一気に逆転

左サイドでいろいろ試していてやや変則の吐前 槙哉君(至学館)

 過去、春夏5回ずつの甲子園出場があり、中京商時代から岐阜県の高校野球をリードしてきた感のある岐阜中京は、今大会は15回目の出場となるが実は6年ぶりである。ちょっと意外な気がするが、県内では大垣日大の台頭などがあって、その間やや苦しんでいた期間でもあったということでもある。それに、昨年は軟式野球部が全国大会準決勝で、歴史に残る延長50回という試合を戦って勝利して、日本一になったことで、むしろそちらの話題の方で注目されていた。

 それだけに、硬式野球部としては、その存在を示したいところであろう。この4月から橋本哲也監督が就任したのだが、さっそく県大会優勝で、一つ結果が出たというところである。

 対する至学館は、創部6年目の2011(平成23)年夏に甲子園初出場を果たし、以来、愛知県内では「何か起こしそうな伏兵」というイメージを与え続けてきている。この春も、「こういうところまで、来られるようなチームじゃないんですけれどもね」と、麻王義之監督は言うものの、県大会ではセンバツ出場の豊橋工、投手のいい愛知産大三河に競り勝ち、名門中京大中京を下しての進出である。

 先行したのは至学館で2回、5番小林航輝君のライトへのソロホーマーと、さらに牧君の安打と失策と盗塁などでつかんだ二死二三塁で、舟橋君が左越二塁打してこの回3点が入った。これで、至学館が勢いづくかと思われたが、中京はすぐに反撃に出た。

 3点を追う中京は、4回に平君と手塚君という下位の連打で無死一三塁として、併殺の間に1点を返す。そして5回、四球と元田君の二塁打で一死二三塁とすると、振り逃げの間に三塁走者が帰って1点差。さらに、またしても平君、手塚君の連打もあっても逆転。

 中京の勢いはこれで留まらず、バントで二三塁とすると、1番服部君が左前打してリードを広げて、さらに連続四球で押し出し、3番西川君の左越二塁打も出て、この回6点とビッグイニングを作った。

 これで試合は中京の流れとなったが、橋本監督は、「このチームは、案外ビッグイニングを作ることが多いんですよ」と、嬉しそうに語る。

リリーフのマウンドに登った澤下君(中京)

 その裏、至学館は代打佐分利君の中越二塁打で1点を返すものの、結局ここまでで、中京が8回にもボークで進めた走者を2番堀田君の中越二塁打で帰して、ダメ押しともなる8点目を奪った。5回途中から、リリーフのマウンドに登った澤下君が丁寧に投げて、以降は至学館打線を無安打に抑えたのは見事だった。

 橋本監督は、「軟式が話題になったことは、選手たちにとってはいい刺激になっているのではないでしょうか。今度は、自分たちが(甲子園へ)行かないといかんという気持ちも強くなっていると思います」と、選手たちの意識をいい方向へ向けているようだ。

 風が強く、しかも舞っている感じでもあり、砂塵でプレー中断など、かなり集中力を欠いてしまうようなコンディションだったということも否めなかった。試合時間も2時間47分で、お互いに失策やボーク、暴投など記録に表れたミスだけではない小さなミスも多く出てしまった。

 ただ、中京は「集中を切らすということはないと思います。当然、相手も同じ条件になっているわけですし、そういう練習をしてきていますから」と、橋本監督は選手を信じ切った信頼のコメントだった。

 至学館は、ベンチ入りの20人全員を起用する戦いとなったが、「あまりにも、2回の3点がきれいに入りすぎましたね。それにしても、逆風であれだけ打たれるとは…」と麻王監督は中京打線に脱帽していた。注目の吐前 槙哉君は、故障上がりということで、あまり投げなかったが、リリースの確認の意味も含めて、サイドから投げるなど試行錯誤をしていたが、「何かやる至学館」という印象は十分に感じさせる試合ではあった。

(文=手束 仁)