大阪桐蔭vs大阪偕星学園

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“春季大会”のエースが躍動!

“春季大会”のエース・高山優希投手                  (大阪桐蔭)

 4回表の大阪偕星学園の攻撃。一死二、三塁から7番・濱口尚弥(3年)が3バントスクイズを仕掛けてきた場面が最初の勝負のポイントだ。一塁線上に転がった打球を、大阪桐蔭の先発・高山 優希(2年)は、「切れそうだったので」とファウルになる可能性を信じて捕球せずに見送る判断をした。しかし打球は線上で止まり、判定はフェア。三塁走者が生還。ファウルになれば3バント失敗でバッターの濱口は三振だっただけに大阪偕星学園にとってはラッキーな形で、大阪桐蔭にとってはアンラッキーな形で試合は1対1の同点となった。

 だがこれでギアが上がったのが、失点をしてしまった大阪桐蔭・高山の方である。「切り替えてとベンチからも言われた」と話したように、まだ同点だったことをポジティブに捉えて、攻めのピッチングで残ったピンチを防ぐ。そして5回以降は、再び力強い直球とキレの良い変化球で大阪偕星学園打線を抑えていった。結局、5回から9回までで出した走者は四球による1回だけ。15個のアウトのうち三振は3個で、残り12のアウトをほとんどのポジションの選手に万遍なく裁かせる形でのノーヒットピッチングは見事としか言いようがないほどだった。

 今大会を、「高山を育てたいというのがずっとありました」と話した西谷浩一監督。言葉通り春季大会8試合中7試合で高山が先発した。準決勝からの連投だったこの日も、「6回くらいでバテるかなと思っていましたが、最後まで投げられたのは大収穫」と指揮官は“春季大会のエース”のピッチングに目を細めた。

 高山自身も、「以前と比べて体力がついた。とても良い経験になりましたし、自信がつきました。ピンチの時でも余裕を持ってしっかり投げられて、コントロールもつくようになってきた」と成長を実感している。決勝では本来のエースである田中 誠也(3年)がブルペンでスタンバイしていたが、耐えるピッチングを強いられる展開だったこともあり「完投したいと思っていた」と最後まで投げ切れたことに満足そうな表情を浮かべた。

 終わって見れば、田中と手首をケガしていた主将の福田 光輝(3年)が試合に出ない状況でも大阪を制し、府内公式戦30連勝とした大阪桐蔭。ただし次の近畿大会ではこれまでの20人から18人しかベンチに入れないことになる。試合後すぐにミーティングを開いた西谷監督は、「(この20人は)これで解散」と選手に話した。まずは近畿大会の為に18枚の背番号を目指した競争が繰り広げられる。

 一方、初の決勝進出で準優勝となった大阪偕星学園だが、左腕・光田 悠哉(3年)の好投が目を引いた。特に無死二、三塁のピンチだった1回のマウンドを、3番・藤井 健平(3年)の犠牲フライによる1点だけで防いだことがこのゲームを引き締める要因となった。大阪桐蔭の西谷監督も、「良い投手。高山にとっても参考になるピッチングだった」と敵ながら光田のピッチングを讃えた。

 大阪桐蔭相手にも最少失点に抑えていけば勝負になることを示した光田の粘りは、他の大阪のピッチャーに大きな勇気を与えるものだったのではないだろうか。

 それだけに惜しまれるのは6回の4失点が、守備のミスによるものだったこと。特に無死満塁でサードゴロをさばいた戸嶋泰貴(3年)が本塁への送球をランナーに当ててしまったのはもったいなかった。その後にベンチの指示で大阪桐蔭のランナー・藤井の守備妨害を指摘したが、審判に質問するまでに時間を要したのも悔やまれる。失点してしまったショックが強かったのかもしれないが、もし本当に守備妨害と感じたのならば、インプレーが切れてすぐに質問してみてはどうだろうか。結果は審判の判定が絶対ではあるが、四人で協議をしてくれるかもしれないし、流れを相手に渡さないための貴重な間を取ることができるかもしれない。

 光田が力を示し、準々決勝で右腕の姫野 優也(3年)が大器の片鱗を見せた大阪偕星学園。夏へ向けて大きな収穫と課題を得られた春季大会だったように感じる。夏の大阪大会が非常に楽しみなチームだ。