千葉敬愛vs敬愛学園vs横芝敬愛

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敬愛グループ3校試合は、仲良く1勝1敗ずつだが得失点差で敬愛学園が1位

 今年で17年目となった千葉県の敬愛グループの交流試合。正式には、「長戸路記念3校親善野球大会」として、学園の行事の一つとなっている。毎年、5月の第2土曜日に開催されるのが恒例となっている。これは、学園の創設者長戸路政司初代理事長の名を冠したものである。学校法人としては、厳密には学校法人千葉敬愛学園としての傘下に千葉敬愛と敬愛学園、さらには敬愛大と千葉敬愛短期大がある。そして、学校法人長戸路学園傘下に横芝敬愛と八日市場敬愛があるのだが、八日市場は野球部がないので3校での交流試合となっている。

 折しも、今年は春季千葉県大会で千葉敬愛が健闘してベスト4に進出した。折しも、今年は千葉敬愛が当番校ということもあって、関係者たちも寄り力が入っているといっていいだろう。

 イベントとしては、朝8時15分から選手行進から始める開会式を行う。行進は、「栄冠は君に輝く」の曲に合わせて行われている。これは、夏へ向けてのモチベーションを高めていこうという意識もあるようだ。この大会を始めた当初は、「5年のうちには、この3校の中から甲子園出場校を出そう」という思いもあった。しかし、現実にはなかなか壁は厳しく、手が届きそうで届かないというのが正直なところであろうか。それに、千葉県の場合は関東の中でも群雄割拠というか、抜けた存在がない分だけ、30校近くがほぼ横一線に並んでいるといっても過言ではあるまい。この3校も、そんな横一線の中にいると言えよう。しかし、抜け出せないのも現実なのである。

 ただ、こうして系列校同士で切磋琢磨し合っていくことは、お互いの刺激にもなると、意識を高めていくことにもなっていくであろう。「杜の都の早慶戦」などとも呼ばれている宮城県の仙台一と仙台二の定期戦や、静岡県の静岡高と静岡商や熊本県の済々黌と熊本高の定期戦など、その地域を代表する伝統的なライバル校同士の定期戦はいくつか存在していて、私学の系列校同士の定期戦というのは静岡県の常葉菊川と常葉橘で行っているというが、他にはあまり耳にしていない。しかも、3校がクロスしての変則ダブルのように行われるのは、比較的珍しい。

 大会として、順位もつけているのだが、今年は3校が仲良く1勝1敗で三すくみ状態になった。しかし、この場合は得失点を計算して順位を決めるということになっているのだが、その結果、1点差で千葉敬愛に敗れて第2試合で横芝敬愛にコールド勝ちした敬愛学園が1位という扱いになって、優勝旗とボール3ダースが授与された。ボールは、部費を維持するためにも、貴重でありがたいことであろう。

中野渡投手(千葉敬愛)

 千葉敬愛は、県大会ベスト4進出の立役者となったエース左腕の吉野君はこの日は投げずに温存ということもあって、横芝敬愛との試合では投手がつかまって、勝ちきれなかった。山崎祐司監督は、「3年生が27人いるのですけれども、夏にベンチに入れないであろう選手のことも配慮していかなくてはいけませんからね」という思いもあって、後半は選手交代が多くなっていたのは否めないことであろう。

面白い存在だったのは、第1試合で先発した中野渡君だ。3回まではスリークォーターだったフォームが、4回から突然下手投げになっていた。山崎監督は、「本人から言い出したのですけれども、面白いからやってみようということにしました。春季大会で試す機会がなかったのですが、イニングごとに(投げ方を)変えてもいいし、打者によって変えていくこともありですからね」と、変則二刀流への期待もあるようだった。

 横芝敬愛では、第3試合に先発した伊藤翔君のスピードとキレのいいストレートが光った。5回を投げたが、2回に連打された以外は初回に四球走者を盗塁で刺したのを含めて4イニングを3人で抑えた。伊藤匠監督も、「2年生なのですが、今のところは、一番安心して任せられる投手と言っていいでしょう」と、信頼も高い。

話を聞く横芝敬愛ナイン

 敬愛学園は、浅羽君と渡邉君という春季県大会でも10番と1番をつけた二人がそれぞれ完投したが、打線の好調ぶりも光った。第1試合では4番で主将の千鳥君が3安打2打点と存在を示し5番角田君も2安打で打点を挙げていた。

また、第2試合では満塁で走者一掃の三塁打を放った女良君が2安打、2番赤塚君は、リードオフマンとして出場した第1試合では2打席で途中交代となったことに第1試合では2打席で交代となってしまったことに発奮したのか、3本の内野安打を含めて4安打と気を吐いた。

 敬愛学園としては、負けた千葉敬愛との試合ので、1点リードの8回に、無死二三塁の場面、鈴木ケネス君の中犠飛で同点とされたのは仕方ないとしても、その送球が三塁へ進もうとしていた走者の足に当たり、思わぬ方向へ転がってしまって、生還を許して、これが決勝点となったことが悔やまれる。

(文=手束 仁)