笑顔なき勝者

二番手・梁川匠(近大附)

 序盤に2点を先制されるが中盤に逆転。5点のリードを奪った近大附は4回からマウンドに上がっていた梁川匠(3年)がそのまま最後まで投げ切った。

 6回1失点の内容にも「まだまっすぐがコースに決まらない。全部抜けてしまって。相手が打ち損じてただけ。もっとコースに決めないと」梁川は肩を痛めており投球練習を再開したのは2月後半になってから。たまに右打者のアウトローに決まる手応えのある球もあったそうだが、全体的には全く納得していない。チームとしても3回までに先発・池田慎悟(3年)が5安打を浴び2失点、打線は摂津先発・福山拓実(3年)の前に沈黙と流れはよくなかった。

 それでも4回に末廣恵士(3年)、前田一樹(3年)の連続タイムリーで同点とすると5回に1点、6回に4点を挙げリードを奪った。ただしこの勝ち越し点は相手のミスでもらったようなもの。5回の得点はフォアボールで出塁したランナーがエラーで生還。6回もエラーをきっかけにランナーを出すと明らかにライト前に落ちそうな打球に対してライトがダイビングキャッチを試みる。無理にギャンブルした結果、タイムリースリーベースとなりビッグイニングへとつながった。

本塁打を放った日下龍治(摂津)

「基本的にはピッチャーを中心にした守りのチーム。荒れた展開になると返す力が無い。中盤から終盤にかけて1点差で戦えたらと思ってましたけど、エラーから流れが変わってしまった」

 初回に4番・小西航太朗(3年)のタイムリースリーベースで先制すると3回には日下龍治(3年)の本塁打で加点。序盤で長打を4本放ったが摂津の嶋田監督は「本来守りのチーム」だと強調。だからこそ嘆いたのは4回以降わずか3安打に抑えられた打線の方ではなく中盤に乱れた守備の方。「公立対公立なら何とかなるけど、私学は打球の質が違う。打ち取っていても中々処理できない」

 摂津には野球部用のグラウンドは無い。練習可能な部分はスペースが限られており、しかも使えるのは週2回だけ。ノックもまともに行えないことから「外野の判断はしょうがない」とある程度は織り込み済み。「グラウンド(のハンデ)を跳ね返すだけのディフェンス力を作ってしっかりとやりたい」2か月後の夏までに守備力向上を誓っていた。

 最後は5点差のついた試合だったが、勝利した近大附の藤本監督は不満顔。「自分らで崩れていた。相手の野球をされていた。ずっと課題。自分たちの野球ができない」試合会場が自前の球場だけあって試合後にはすぐさま打撃ゲージが準備されていた。ベンチ前で行われていたミーティングにはピリピリとした雰囲気が漂っており、まるで敗戦したかのよう。

 ベスト16入りとなった近大附、準々決勝進出を懸けて2日後に戦う相手は四條畷。今度こそすっきりと自分たちの野球で勝利したい。

(文=小中 翔太)