辛抱戦の展開、守りで粘り切った石岡一が1点差を逃げ切る

石岡一エースの木村 玲央君

 昨夏、甲子園出場を果たした藤代と、秋季大会でベスト4(試合レポート)に進出して、茨城県内の21世紀枠候補に推薦された石岡一。県内の公立校では、このところ安定した実績を残している両校の対戦である。ともに好投手を擁しており、エースナンバー対決だったが、お互いに、立ち上がりはやや硬さも感じられて、試合は序盤から、慌ただしく動いていった。

 まず石岡一は、二死から本多 啓直君が失策で出ると、ボークで二塁へ進み、岩本君が右翼線二塁打して先制。しかしその裏、藤代も先頭の浅野君が左前打すると、バントで進め、飯塚君の内野安打で一三塁とした後、立松峻君の左犠飛で同点とした。まずはお互いに4番打者の打点で点を取り合った。

 2回にも石岡一は一死後7番飛田君が左前打で出ると、きっちりバントで進め、9番下田君は135キロのストレートをつまりながらも右前へ運んで二走を帰した。これで、再び石岡一がリードした。ここから、徐々に試合は落ち着いていくが、石岡一の左腕木村 玲央君、藤代のストレートに威力のある山崎 誠君と投げ合っていった。

 木村君は多彩な球種が持ち味で、相手を見ていろいろ投げ分けながら、自分で工夫していくタイプだ。下田捕手が2年生ということもあるので、むしろ木村君がリードしていって、自分の投げたいボールを決めていくという感じでもあった。その投球が、立ち上がりよりも、投げていくたびに少しずつ自分のリズムをつかんでよくなっていったというこの日の出来だった。4、5、6回と先頭打者に安打されて、セットで投げることも多かったのだが、そこからの踏ん張りというか粘りも持ち味と言ってもいいのだろう。石岡一の川井政平監督も、「木村はスピードや球威以上の球のキレというのがあります。自分の意図で両サイドに投げ分けられる制球もありますから、そのあたりが我慢の投球につながったのだと思います」と、振り返っていた。

ストレートに威力のある山崎 誠君(藤代)

 9回も4番の先頭の立松峻君に大きな中飛を打たれたが、本多君が好捕した。よもや抜けていたら、たちまち同点から逆転につながるという場面だったが、本多君の反応は素晴らしかった。「3番に入っていて打てないんだったら、(守りで)あれぐらいのことをしてくれないと…」と、川井監督は言っていたが、それでも堅い守りに関してはある程度の自信も持っているようだ。

 試合を振り返って川井監督は、「辛抱戦になりましたけれども、よく耐えてくれました。どちらも大量点はないと思っていましたから、こうした小さい波をどれだけものにするかというところだと思ったのですが、前半のリードを何とか守り切れました」と、安堵していた。

 学校としての伝統は100年以上有しているが、普通の公立校である石岡一である。とりたてて図抜けた選手がいるわけではない。それでも、近年県内では安定した力を示して実績も残しているのは立派だといっていいだろう。「完璧な選手ではなく、何かが欠けているから、石岡一に来ているのですから、そのことをわかって、自分たちで何をやっていくのかを見つけていくこと。私も含めてそうした中で夏を獲るために、何をするべきなのかということです」と、川井監督は言い切るが、そのモチベーションは間違いなく選手に浸透していっている。

 1点届かなかった藤代の菊地一郎監督は、「夏(甲子園)が終わって新チームが出来た時は、どうなることかと思っていたのですけれども、ここまでまとまってきたとは思います」と選手の秋からの成長は評価していた。そして、山崎君に関しては、「連投も効くし、へこたれない子なので、その頑張りはいいですよ」と褒めていた。この日は最速136キロだったが、ボールそのものがグンと伸びてきていると、指の引っ掛かりがフィットしていけば140キロ越えもありそうな素材である。

 ただ、同じ公立校で似たような環境で切磋琢磨し合っている両校である。「もうちょっと上で当たりたかったなぁ」というのは、本心でもあろう。夏は、甲子園が見えてきたところでの対決を期待したい。

(文=手束 仁)