平日の練習時間2時間弱の西脇が強豪・育英に延長12回逆転サヨナラ勝ち!

 昨秋は2回戦で、近畿大会出場の津名に4対5の1点差で敗れ、悔しい負けを味わった西脇。その悔しさをバネに全国制覇経験のある育英を倒した。試合中、攻守ともにレベルが高い選手が揃った印象を受けたが、西脇の環境を聞いて驚かされた。 最終下校が6時半までと定められており、今年は最終下校が6時となることもあり、また7限授業参加する日もあれば、1時間も練習ができない日も多い。だが率いる西脇の上野監督は選手たちに、「でもその学校を選んだのは君たちだ。その中で何ができるかを考えていきなさい」と伝えていた。その中でも中身にこだわった。限られた中でも厳しい練習ができた自負はある。上野監督にとってうれしかったのは、「厳しい練習の中でも、選手が楽しさをもってやっていたことですね」つまりモチベーションを高く持ってやることができたということだろう。その成果は育英相手にも発揮した。 1回表、一死から2番村井が中前安打で出塁し、3番下出が右中間を破る適時二塁打で1点を先制すると、4番白井も右前安打で続き、一死一、三塁となり、さらに5番藤本修の四球で一死満塁とすると、6番河崎の内野ゴロの間に2点を先制する。

 育英の先発は、サイドで130キロ後半を計測する竹中 健志朗(3年)だ。この試合でも、常時135キロ〜140キロ(最速142キロ)を計測。100キロ台のカーブ、110キロ台のスライダーをうまく織り交ぜ、内容的には地区予選の時よりも上がっている。夏へ向けて、より球速が上がっていくものを感じさせた。そんな竹中に対し、西脇打線はどう対応したのだろうか。1番を打つ石井はこう答える。「ボールが速いのが分かっていたので、練習の中で、ボールの軌道などをイメージしながら打席に立ちました」と振り返るように、しっかりとイメージしながら打席に入っていたようだ。

 そして投げては左腕・藤本翔大が好投する。兵庫県内では注目を浴びていた好投手だが、2月に体調を崩していたようで、地区予選でも投げられなかったようだ。徐々に快方に向かっていたようだ。藤本はキレのあるストレート、制球力、コンビネーションで勝負する投手。左腕から投げ込む直球は常時120キロ〜135キロを計測。そのストレートが両サイド自在に投げ分けられる。ストレートのスピードも、うまく強弱をつけられる。そのため、90キロのカーブを続けたあとに、一気に130キロのストレートを見せたり、ストライク先行をしていくので、ややボール気味なところを投げて打たせて取るなど、投球を知っている投手である。

 育英打線を7回まで無失点に抑えていたが、8回表、一死二、三塁から1番押部に中前適時打を浴びて、同点を許し、試合は延長戦に。そして延長12回表に、二死三塁から山本達の適時打を浴び、2対3と初めてリードを許す。だが西脇ナイン、全く気落ちする様子は見られなかったようだ。上野監督は、「全く諦める雰囲気はなかったですよ」西脇ナインは育英の2番手・山本育を攻めたて、一死から9番小柴の四球とボークで伊一死二塁として、1番石井が右前適時打で3対3の同点に追いつく。そしてその後、二死一、二塁から4番白井が左越え適時打を放ち、サヨナラ勝ち。石井がホームインの瞬間。西脇ナインは石井の下へ駆け寄り、喜びをあらわした。上野監督は、「まだ1回勝ったばかりですが、選手たちにはよくやったと伝えたいです」と喜びを隠せない様子。サヨナラ安打を放った白井も「こういう試合に勝ったことで、次の試合へ向けて大きな自信になりました!」と笑顔を見せた。

 エースの藤本の好投、ナインたちの粘り強い戦い。練習時間が限られた中でも、これほど実力を発揮できるのは、常日頃から高い集中力とモチベーションで行っていたことだろう。この試合で今年の兵庫を盛り上げる存在と意識させる試合になったのは間違いない。

(文=河嶋 宗一)