セクハラ容疑をかけられたあとの対処法

写真拡大

相手の肩書の軽重で頭の下げ方を変えてはならぬが、「仕事の場面」別の謝罪効果を最大化するコツは知るべし。

■心の底から謝れ。無神経な男性ほど、軽んじてどツボにハマる

高井・岡芹法律事務所会長で人事・労務専門の弁護士として長年活躍する高井伸夫氏によれば、上司などにセクハラされた女性が、上司とその使用者である企業に対し、損害賠償・慰謝料請求するといった案件の取扱数は年々増えている。問題が深刻化しやすい背景のひとつが、男性側がセクハラしたつもりはないと言い張り、謝罪をしないことが多いからだという。

「男性にセクハラの意図がなくても、女性が嫌だと感じる行為があることを認識しましょう。そのうえで飲み会の席上、自分に落ち度や軽率な言動がなかったか思い起こします。少しでも心当たりがあれば、『酔余の勢いで不快な思いをさせてしまい、心より反省しております。今後あのような行為を行わないことを固くお約束します』と手書き文書で謝罪します」(高井氏)

セクハラ問題は男女間における認識のちがいが要因のひとつ。肩をたたくなどのボディタッチはもってのほかだが、年齢を尋ねたり、なぜ結婚・出産しないのか聞いたり、「こわい女だなあ」などと偏った固定観念に基づく発言をしたりすることもセクハラ認定される可能性が高い。立正大学講師で心理学者の内藤誼人氏も語る。

「ある海外の大学の調査では、女性に性生活などのことを聞いてくる男性に対して、どんな罰が適切か聞くと、男性は『メモや文書での注意』が最も多かったですが、女性は『自宅謹慎』『罷免』と、より思い罰を選択したそうです。つまり、女性は男性よりも重く受け止めて、怒るのです。よって、結果的にセクハラをしてしまったのなら、相手の立場に立って考え、心の底から謝ることが大事です」

もうひとつ、内藤氏がセクハラに関する謝罪で有効だと話すのが、「反論応酬話法」と呼ばれる話し方だ。

これは、怒っている相手に質問をして、意見を引き出すというもの。例えば、ある飲食店の客が「この店の味は落ちたね」と憤慨したとしたら、店側は最初に期待に応えられなかったことを詫びたうえで、「どのように味が落ちたか、今後のためにお教えください」と善後策を聞き出すというのだ。

「例えば、飲み会の席で酔って『○○さん、最近、すごくきれいになったねぇ』と言ったことをセクハラだと訴えられたとします。そんなとき上司は、女性に『僕は親しみを込めた表現のつもりだったんだけど、嫌な気持ちにさせてしまったんだよね。どのあたりが気に障ったのか聞かせてくれませんか』と質問するのです。セクハラ意識の欠如を正直に認め、相手の気持ちに寄り添った形できちんとお詫びするのも問題を大きくしない方法です」

なお、謝罪時は当人(女性)と1対1ではなく、第三者を交えて会うことも大切なエチケットだ。

謝罪の急所:必ず第三者を交えて、平謝り

----------

高井伸夫(たかい・のぶお)
弁護士。1937年生まれ。東京大学法学部卒業後、1963年に弁護士登録。企業の雇用調整によるリストラ問題、企業再生の各種相談や講演活動をおこなう。
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者。立正大学講師。有限会社アンギルド代表としてコンサルティング業務をする一方、執筆業に力を入れる心理学系アクティビスト。

----------

(大塚常好=構成)