東京都は、時々手助けを必要とする「要支援者」を対象に絞った「高齢者の事故防止マニュアル」を配布している。日常生活で起きた家庭内外の事故を分析・紹介し、防止のポイントをまとめたもの。このマニュアルは6万部用意され、消費生活センターや区市町村の高齢者担当窓口などで入手できる。

 都内で生活する65歳以上の高齢者の数は2005年1月現在で218万人。都内全人口(1216万人)の17.9%を占める。99年度の調査では、65─79歳までの高齢者が全体の8割であったが、05年度の調査では、70─89歳が8割を占め、ここでも高齢化の傾向がうかがえる。

 高齢者の事故の多くは、普段の生活で慣れている場所で起きているという。家の中では、階段をはじめ、敷居や畳の縁などの小さな段差が原因だ。台所では、持っていた鍋を落とすなどの「自分の不注意・うっかりミス」が約40%を占める。滑りやすい浴室では、浴用椅子(いす)に座ろうとして転ぶなどの事故も少なくない。屋外でも、道路の段差やエスカレーターの乗降などの際に転倒事故が見られる。

 マニュアルには、事故防止のポイントとして、「自分の足に合ったルームシューズなどを使うようにしましょう」「浴室マットは洗い場全体に敷き、段差を作らないようにしましょう」などが具体的に紹介されている。

 高齢者の4人に1人が事故に遭い、7人に1人がケガをしている。そのうち、約9割が自分に原因があり、どこにも苦情を言わないという結果が出ている(05年度の東京都調べ)。都の生活文化局・消費生活部の佐藤岩雄課長は「同様の事故を防ぐためにも、事故にあった高齢者には遠慮なく、消費者生活センターなどに是非申し出てほしい」と話している。【了】