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サラリーマンやOLにとって、ランチタイムは貴重な息抜きタイムだが、ストレスのもとになっている人もいるらしい。同僚とのランチをめぐって、あるネットニュースのサイトに掲載された「OLのボヤキ」が注目を集めた。

その話によると、東京都内の企業で働く41歳の女性は、同僚の男性社員から誘われるランチが憂鬱なのだという。男性が誘っておきながら、ランチをおごらないことに納得がいかないらしい。この女性は「女子に割り勘させるのはマナー違反だし、ある意味、パワハラだと思う」と言っているのだとか。

この話はネタなのではないかという指摘もあるが、男性から食事に誘われたらおごってほしいと考えている女性は、まだまだいるのではないか。だが、同僚の女性をランチに誘ったときに、おごらないで割り勘にしたら「パワハラ」になってしまうことはあるのだろうか? 男女関係の法律問題にくわしい原口未緒弁護士に聞いた。

●ランチに誘う行為も「パワハラ」になりうる

「まず注目してしまったのが、41歳という年齢です。以前、40代の女性と話をしていたときに発見したのですが、この世代は『女子に割り勘させるのはマナー違反』という感覚の方が多いように思います」

原口弁護士は初めにそう指摘した。たしかに、バブルの空気を吸った40代の女性と、不景気時代に社会に出た20代、30代の女性では、「割り勘」への感覚に違いがありそうだ。

「マナー違反かどうかはともかく、『パワハラ』になるかどうかについて考えると、今回のケースでは、相手の男性が上司か同僚かによって、違ってくると思います。場合によっては、ランチに誘うこと自体が、パワハラになる可能性もあります」

どんなケースで、パワハラになってしまうのか。

「たとえば、ランチに誘った男性社員が、女性に対して『仕事上の嫌がらせ』ができる立場にあり、誘いを断ることで、女性が仕事上不利益な扱いを受ける場合です。

不利益な扱いとは、具体的には、昇進ができない、希望部署への配置転換ができない、執拗に怒られる、面倒な仕事ばかり押し付けられるなど、明らかに他の社員と違う扱いをされて、職場に居づらくされるといったことです。

男性社員からの誘いを断ると、このような嫌がらせを受けることが予想される、もしくは、過去に誘いを断ったことで嫌がらせをされた、という場合には、女性社員としても断りづらいでしょう。その場合、ランチに誘うこと自体がパワハラになりうると考えます」

●「割り勘」はパワハラにはなりづらい

では、ただの同僚から「割り勘」を求められただけで、「パワハラだ!」といえる場合もあるのだろうか。

「男性は必ず女性におごらなくてはいけない、あるいは、誘った側は必ずおごらなくてはいけないとのルールはありません。そんな法律はないですし、社会通念上も、常にそうしなければいけないとは考えられていないでしょう。

逆にいえば、女性をランチに誘った男性が『割り勘』を求めることも、法的には何ら問題がありません」

このように原口弁護士は説明する。となると、「女子に割り勘させるのはパワハラ」という主張は、無理があるということだろうか。

「たとえば、明らかにランチをおごるような言動をしておきながら、会計のときになって割り勘を要求されたのであれば、釈然としないでしょう。しかし、そうでない場合、割り勘にするのが嫌ならば、ランチに一緒に行くのを断ることもできるのです。

それにもかかわらず、『女性はランチをおごってもらって当然』というのは、正当な主張とはいえません。したがって、よほど例外的な状況でない限り、同僚の男性が割り勘を求めても『パワハラ』とは言えないでしょう」

同僚との割り勘に「パワハラだ!」と騒ぐ前に、断り文句のバリエーションを増やすほうが、会社員としては正しい処世術なのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京護士会所属。ココロもケアするカウンセリング離婚弁護士。コーチング・カウンセリング・セラピーなどをもとに、調停・裁判をしないで円満離婚を実現する、『幸せになるための離婚』を提唱しています。

事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所
事務所URL:http://mio-law.com