サッカー新名言:「サッカー、全然見ないんです……。 もう『Jリーグ』とか意味がよく分からないし(笑)」(女優・森川葵さん)
●●、全然見ないんです……。もう『●●●●』とか意味がよく分からないし(笑)!

素直な心の奥からまっすぐぶつけられた感情に、慄く瞬間があります。自分がしでかした悪事やマナー違反などを通りかかった子どもに見咎められたとき、オトナに同じことを見咎められたときよりも、遥かに大きなダメージを負うような感覚です。「どうして?」という他意のない疑問が、真っ直ぐ刃を突き立てたぶん深くまで突き刺さるような。

僕は昨日、名言を目撃しました。それはモデルで女優の森川葵さんが、「サッカーゲームキング」という雑誌の取材で発したもの。その号の表紙を森川さんがつとめたことから、サッカーのユニフォームでキレイな写真を撮らせてもらいつつ、「ゲーム」「サッカー」との関わりを聞いていくという趣旨のものです。

あらかじめ言っておくと、僕は森川さんの名言に怒りや苛立ちを感じたわけでも、都合のいい弾丸として利用するつもりでも、ましてや揚げ足とって笑おうということでもありません。紗栄子さんのブログを読むときとはまったく違う、文字通りの名言として受け止めています。真っ直ぐ届く、深い示唆ある言葉としてです。

↓謝ることはない!そのままでいい!矢口真里さんみたいに話をイイ感じに盛る必要はないんだ!

サッカー、全然見ないんです……。ワールドカップも見なかったし、もう『Jリーグ』とか意味がよく分からないし(笑)。憧れの先輩? サッカー部には……いなかったですねえ。野球部のほうが良かった(笑)。もう本当に、こんなでごめんなさい!」

「ゲームは何系でも好きです。お兄ちゃんがすごくゲームが好きで、私も小さい頃から一緒にやってました。ほっこりしたゲームも好きですけど、今は“狩り系”のゲームにハマってます。ずーっとやってますね。もう、ずーーっと(笑)」

「今までに演じた役はそれぞれ楽しかったです。これからもいろいろできたらいいと思います。演技は好き……です? はい……。いや、好きっていうのやめます。どういうところって言われると分からないから(笑)」


この雑誌、とどのつまりはゲーム誌だろ!

ゲーム好きな美人にオファーを出して何が悪い!

そして、知らないものを知らないと言って何が悪い!

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森川さんはこの取材の中で、3つの物事との関わりを語っています。ひとつは「サッカー」、ひとつは「ゲーム」、ひとつは「芝居」です。サッカーゲームキングという雑誌の取材で女優さんにインタビューするのですから、まぁ当たり前というか、ごくごくありふれた質問です。取材者としても、本当に欲しいものは「ユニフォーム姿の写真」であり、インタビューは添え物だったのでしょう。無言で写真撮るのもバカバカしいですからね。

その3つとの関わりを語る中で飛び出したのが、「サッカー、全然見ないんです……。もう『Jリーグ』とか意味がよく分からないし(笑)」という名言です。初見では、僕も正直戸惑いました。「意味がわからない」という感覚自体の意味がわからなかったのです。JリーグはJリーグだろ、日本でやっているサッカーのプロリーグだよ、意味も何もないし、わかったりわからなかったりするものじゃないだろ……と。

彼女はその後「ゲームは何系でも好きです」「演技は好き……です? はい……。いや、好きっていうのやめます。どういうところって言われると分からないから(笑)」と残り2つの物事についても、自身との関わりを明かしていきます。似たような別の質問&回答をなぞることで、僕もようやく名言についての咀嚼が進んでいきました。

ゲームについての発言と置き換えるとちょうどいいでしょう。例えば、「ゲーム、全然しないんです……。もう『ハンティングアクション』とか意味がよく分からないし(笑)」という感じで。ハンティングアクションと言えば、当然ゲーム好きならモンスターハンターのことだとわかりますし、森川さんが挙げている「狩り系」のゲームもモンハンのことでしょう。ゴッドイーターかもしれませんが、それはナイと思いますので。

ここで彼女にとって同格なのは「サッカー」と「ゲーム」です。そして、それをさらに細分化し、ジャンル分けしていったときに同格に立つのが「狩り系」と「ワールドカップ/Jリーグ」なのです。サッカーというエンタメの存在は認知しているが、それをより細分化した作品あるいはジャンルとしての「Jリーグ」は意味がわからない。これは十分にあり得ることであり、もっと意識的に捉えておくべきものだったのです。

もう少し、わかりやすい例を挙げれば音楽も同じです。「音楽」というエンタメ、その中にある「ロック」や「ジャズ」といったジャンル。「音楽は全然聞かないです……。もう『プログレッシブロック』とか意味がよくわからないし(笑)」という感覚は、音楽に疎い人にはおなじみのものでしょう。聞いてもわからないし、説明されてもわからない。何かそういうモノがあるんですね、ふーん、としか言いようがない謎世界感。

この名言から汲み取るべきは、『Jリーグ』が「日本の国内リーグ」という文字通りの意味から離れ始めているのではないかという危惧です。サッカーというものの存在は認識し、ワールドカップを知っている人が、「意味が分からない」と表現する何らかのモノへと変容してきているのではないかという疑いの視点です。

そもそも『Jリーグ』には何の意味もないのに、さも意味がある何かのように捉えられ始めているのではないか。有り体に言えば「小難しい何か」に見え始めているのではないか。Jリーグと時を同じくして誕生した『J-POP』が何か特別なジャンルででもあるかのようにひとり歩きしていった感じで、区切る必要がないところを、無理に区切ってしまっているのかもしれません。

『J-POP』が衰退すれば日本の関係者は困るでしょうが、エンタメ全体として見れば「音楽」が愛されているならばそれでいいはず。音楽配信やYoutubeなどの登場によって、ほかの国で流行っているものや評価の高いものを身近に観測できるようになれば、国内のある限定したジャンルは存在感を失うかもしれません。が、巡り巡って「音楽」というエンタメが大きくなれば、一周して還元されるものもあるはず。

同じように、日本のサッカー文化を考えるときに、どうしても「Jリーグ」を根幹に据えてしまいがちですが、大切なのは総体としての「サッカー」であったのです。Jリーグの観客が減ればヤバイぞヤバイぞと焦り、ACLで負ければヤバイぞヤバイぞと思案しますが、そのぶん欧州チャンピオンズリーグやブンデスリーガを楽しんでもらえばOKだったのです。ACLで日本のチームを下したのが日本出身の選手であるなら、それはそれでナイス活躍だったのです。

Jリーグが流行ろうが廃れようがそれは考えず、総体としての「サッカー」を見ていくという視線。先日、Jリーグの観戦者の平均年齢が40歳を超えたというニュースがありましたが、Jリーグだけで考えるならば危機感が募るものの、そこで止まっていてはいけなかったのです。「サッカーの観戦者」の平均年齢はまだ調査されておらず、先の調査だけでは材料は出揃っていません。「演歌ファンが高齢化!」というニュースと「日本の音楽が衰退」というニュースとが必ずしも一致しないように、たかが1ジャンルの調査を見ただけで、何かを判断できようはずもなかったのです。

ゼロの人をいきなり「Jリーグ」というジャンルで1にするのは一足飛びで、ゼロの人を「サッカー」に対して1にしていくことがファーストステップだった。そのステップはすぐにJリーグに寄与貢献しなくても、巡り巡って還元される。そういう意識での歩みが欠けていたかもしれません。国内サポーターと海外厨、Jリーグサポーターと代表厨の対立みたいなものも、まさにその意識を欠いた中での不毛なものだったのです。もともと不毛なのはわかっていましたが、「ロックとジャズが罵り合う」ようなものだと再認識すると、滑稽なほど不毛なものだった。

そのことをハッキリと認識させてくれるのが「サッカー、全然見ないんです……。もう『Jリーグ』とか意味がよく分からないし(笑)」という名言だと思うのです。「全部サッカーなのに何か細かく分けてるんですね…意味わかんないですね…」という率直な感情を、サッカーファンとしても真摯に受け止めたいもの。肌の色や宗教や国籍や性別で人間を区分しないように、「Jリーグ」「日本代表」「ブンデスリーガ」「欧州チャンピオンズリーグ」「バルセロナ」「地域のリーグ」「地域の少年団」「草サッカー」でも区分しない。

「Jリーグを見よう」ではなく「サッカーを見よう」という誘い。

「Jリーグは面白い」ではなく「サッカーは面白い」という案内。

「Jリーグ初観戦」ではなく「サッカー初観戦」への導き。

結果として手頃な選択肢が近場のJリーグだったとしても、最初からJリーグありきという意識でいるのとは、導く側も導かれる側も変わってくるように思います。森川葵さんもJリーグの意味はわからなくても、サッカーは認識してくれています。そこを拡大させることをファーストステップにしていきたいもの。「スポーツ、全然見ないんです……。もう『サッカー』とか意味がよく分からないし(笑)」でないだけでも、ずいぶんイイ位置からのスタートが切れて、やる気出る感じですからね。そのうち、いつかどこかで森川さんも1回くらい来てみようかなと思ってくれるかもしれませんしね。その日は意味とか考えさせず、気楽に楽しんでもらいたいものですね。

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3月7日頃から日本でも続々と「サッカー」が開幕します!お楽しみに!