――ブラジル戦では、太田選手も何本か良いクロスを上げていました。
「回数はさて置き、チャンスに関われたのは自信になりました。練習時間が限られ、ぶっつけ本番に近いメンバーで戦ったにもかかわらず、僕のクロスにピンポイントで合わせてくれましたから、代表の選手はやはりレベルが高いと思いました。同時に欲も出ますよね。正直、もっとボールが欲しかったですし、クロスを上げまくりたかった」
 
――クロスと言えば、アギーレ体制でのデビュー戦(10月10日のジャマイカ戦)で投入直後に放ったあの一撃は印象的でした。(編集部・注/89分、柴崎のショートコーナーから相手をひとりかわすと、左足のピンポイントクロスで小林のヘディングシュートにつなげた)「アギーレ監督には『無理に上がるな』と言われましたが、(投入された直後)すぐCKになって自分のところにボールが来た。向こうは僕の特徴なんて知るはずもないですし、前にスペースがあったので勝負しました。あそこでバックパスして終わるのと、仕掛けてクロスを上げるのとでは違う――。瞬間的にそう判断しました。もう少し深い位置までえぐっても面白いかなと考えましたが、ドリブルに入る前から間接視野でゴール前の本田選手と小林選手を捉えていたので早めのタイミングで蹴りました。上手く小林選手につながって良かったです」
 
――瞬時の判断で示した勇気が、ブラジル戦の先発出場につながったと思います。いずれにしても、あのクロスは“太田宏介”をアピールするうえで重要な一本でした。
「僕自身もそう感じます。実際に試合後、細貝選手に『ああやってシンプルに上げたほうがいいね』と言われましたからね。あのクロスがあって、そういう会話が成り立つわけで、もっとアピールできればコミュニケーションの輪は広がります。ただ、ブラジル戦も含めて振り返れば、自分のプレーがゴールにつながっていないのは反省点。その意味でクロスの質を高める必要がありますよね。10月の代表活動で『上手くなりたい』欲も出てきましたし、ここからグッと飛躍したいです」
 
――クロスの質は、すでに十分高いです。
「そう言ってもらえるのは素直に嬉しいです。左足を警戒されているシチュエーションでも、マーカーとのギャップを突いてそれなりのクロスを上げている自負はあります。でも、ゴールにつながる回数が本当に少ない(苦笑)。正直、FC東京の試合では『合わせてくれよ』という時が少なからずありますよ。練習の段階からそういう要求はしていますけど、なかなか形にならなくて……。少し、もやもやしているところはありますね、自分のキック精度に対しても。クロッサーとしては平山選手の負傷離脱がめちゃくちゃ痛いです。ピンポイントで合わせてくれる彼がいたら、チームのゴール数ももっと伸びていたかもしれません」
 
――アシストへのこだわりは相当強いですね。
「アタッカーが上位を占めるアシストランクに食い込みたいとは、常に思っています。とにかく、クロスを上げ続けて『自分はここに出す』と意思表示していくしかないですよね。蹴り方とかを変えて味方が迷ってしまうのは嫌ですし、これからも信念――上げるタイミングや蹴るポイント―を曲げずにスキルアップしていきたいです」
――アギーレ監督のサッカーについてはどう考えていますか?
「正直、分からない部分がまだ多いです。10月の代表活動で掴めたのは、攻撃はある程度自由、守備はまず後ろの4枚でしっかり守る、その2点ぐらいでしょうか。継続して呼ばれれば吸収できるところも増えてくると思いますけどね」
 
――攻撃はある程度自由ということは、SBとしての役割はそこまで明確化されていないのですか?