巨人監督の原辰徳氏に関するスキャンダルが発覚した。この話は野球とは全く関係がないので、こちらで紹介することとする。

スポニチの記事から。

巨人によると、原監督が現役だった88年ごろの女性問題で、06年に2人組の男に1億円を要求され、支払いに応じたという。しかし、相手が反社会的勢力であるとの認識はなく、そのような勢力と交際したこともないとした。球団が警視庁に聞いたところでは、2人は暴力団員などではなかったとしている。
2人組の男は女性の日記のコピーを示し、そこには他に88年前後に現役で、06年当時コーチを務めた2人の名前も記されていたという。原監督は恐喝と感じたが、この2人が06年にコーチになっていたことから、「表に出たらチームがガタガタになる。自分も監督を辞めなければいけなくなる」と球団には相談せず、借金などで現金を工面し、個人事務所社員を通じ1億円を届けた。
球団が問題を把握したのは09年。当時の関係者と名乗る別の男が球団事務所に現れ、嫌がらせ行為を繰り返したことから調査に乗り出した。球団が原監督にただしたところ、過去の事実を明かし、警視庁へと届け出た。ただし、09年時点で、2人組のうち1人がすでに事故死していたため、原監督は被害届の提出を見送ったという。

これに対し、朝日新聞は今朝、2人組の男の1人、および捜査関係者への独自取材をもとに記事を書いている。

・2人組の男の1人は「自分は元暴力団だ」と認めた。金は死亡したもう一人の男が受け取った。死亡した男も暴力団員だった。

・2009年に、死亡した男の舎弟が、巨人軍に対して「日記を返してほしい」と要求。このときに、讀賣、球団側ははじめて事実を把握した。警視庁に届け出たのでこの男は逮捕された。

・2009年に原辰徳氏は「暴力団追放キャンペーン」に協力し、ポスターにも出ている。

この対応の早さには、朝日もこのネタを把握していたことが分かる。

2006年から2009年までは、社会的地位のある中年紳士、原辰徳氏が、不倫事件によってよからぬ連中に恐喝されたという事件である。讀賣、巨人は関係がない。

2009年になって、事情を知った暴力団の男が、もうひと稼ぎしようと巨人に話をねじ込んだ。讀賣、球団側は警視庁に届けた。公的企業として当然の対応だ。男は爆弾騒ぎまで起したが逮捕された。

問題は、この事件を巨人軍が公にしなかったことである。この年の「暴力団追放キャンペーン」に原辰徳氏が協力していたことも問題があろう。

原辰徳氏は、この醜聞を『週刊文春』に持ち込んだのは、清武英利氏によると断じ、清武氏に宛てて手紙を公開している。なかなか味のある文章だ。

清武さんへ

巨人軍の選手、OB、関係者を傷つける報道が相次いでいます。たくさんの暴露が行われ、 巨人軍関係者を混乱させ、選手、OBを苦しませています。私は監督という立場で心を痛めてきました。
こんなことがなぜ続くのか。清武さんのほかに、いったいだれがいるのか。
今回は、私のことで良かったと思っています。
巨人軍の低迷期に清武さんと会い、同じ釜の飯を食い、同じ目的に向かって、悔しい時も、 うれしい時も本気で涙を流してきました。ファンに愛され、強くある巨人軍をめざし、リーグ3連覇、 日本一も成し遂げました。
巨人軍を育て、守り、築いてきた偉大な先輩方がたくさんいられます。未来へ夢をつなぎ、 巨人軍の八手を願っている方もたくさんいられます。清武さんもその一人だと信じます。
巨人軍の一員だったことを誇りとして、これからを歩んでください。
まだ間に合います。
               

原辰徳

これに対し、清武英利氏は、即座に事実無根と反論している。

率直に言って、原辰徳氏が、女性(定宿にしていたホテルの関係者らしい)と不倫関係にあったことは、大したことではないと思う。有名なスポーツ選手にはよくあることだ。

問題は、この話を蒸し返された時の巨人軍の対応だ。なぜ暴力団関係者が球団を脅したのか、その事実関係を世間に公表しなかった。

日本を代表する巨大メディア企業グループの一員であり、公共性の強い企業である。身内をかばうよりも、反社会勢力に対して毅然たる態度を取るべきだった。また原氏を「暴力団追放キャンペーン」に協力させたことも批判の対象になろう。世間を欺いたと言われても仕方がない。

隠ぺい体質、事なかれ主義は日本企業の悪弊だと言われているが、言論の府たる大新聞社の直系企業でもその程度なのだ(朝日新聞も大差はないとは思うが)。

もし清武英利氏が、この一件を『週刊文春』に持ち込んだのだとしたら、かれは私怨を晴らそうとしたただの卑劣漢に過ぎなくなる。11月の「清武の乱」では、野球界改革の旗を翻したと思ったが、その旗は汚泥に塗れたということになる。

ただし、この件に関しては清武氏以外にも秘密を知り得た人は暴力団関係者も含めたくさんいる。清武氏とは断定できないのではないか。

原辰徳氏が、社会人として世間の批判を受けるのは当然のことだ。人倫にもとる行為をした挙句、裏社会に屈したのだから。しかし、個人で裏社会に抵抗するのは並大抵のことではない。

あえて言うが野球人原辰徳は巨人軍監督と言う職務を全うしてほしい。それ以外に彼の取るべき道はない。

それよりも、この手のスキャンダルをめぐって情報源を詮索する泥仕合はいい加減にやめた方がいい。天下の大新聞社が、いかに人に言えない恥ずかしい秘密をたくさん持っていたのかが、露呈しつつある。情報源について詮索すればするほど、情報系企業としてのリテラシーの低さ、駄目さ加減が露呈していく。

読売グループは外に向かって吠える暇があれば、メディア企業としてまともな会社になるべく、人心を一掃すべきではないか。

「やつだ!清武がまたやったんだ!」渡辺恒雄老人の咆哮が聞こえるが、結局、身から出た錆である。

  • 原辰徳氏は、お仕事を頑張ってほしい|日々是口実2012-025
  • 「微妙な関西弁」どないやねん?|日々是口実2011-024
  • 「花は咲く」を歌う人が語りかけてくるもの|日々是口実2012-023
  • 仏像泥棒は、地獄に堕ちろ!|日々是口実2012-022
  • 今どき、松下政経塾に何を期待するのか|日々是口実2012-022