ノルウェータブーであり闇歴史! 孤島で子供たちを襲う暴力『孤島の王』

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ノルウェーという国には、どこか不穏な空気が漂っている。

2011年には極右思想を持つキリスト教原理主義者とされるアンネシュ・ベーリング・ブレイビクによる無差別連続テロ事件が起ったが、その火種は前々からあった。

1980年代後期のノルウェーでは、悪魔崇拝やファシズムを謳った過激な音楽ジャンル、ブラックメタルが誕生。

バンドメンバーやファンたちによる教会放火事件や、中でも人気の高かったバンドであるメイヘムやバーズム、エンペラーによる自殺や殺人などが相次ぎ、牧歌的印象高いノルウェーにヘヴィな影を落とした。

最近では、民間伝承として古くから語り継がれてきた妖精・トロールの実在を暴いた衝撃のドキュメンタリー映画『トロール・ハンター』が製作され、ノルウェー政府がトロールの存在を隠蔽していたという事実が明らかになった。

そんな中、ノルウェーのさらなる闇を暴く実録映画が公開される。

1915年に実際に起った、軍隊による子供を対象とした虐殺事件を映画化した『孤島の王』である。

オスロ市南方75kmに位置する孤島・バストイ島には、1900年から8歳〜18歳の少年たちを更生させるための矯正施設があった。

健全なる成長を促すことを謳いながらも、実際には子供たちに対する虐待が日常化した恐怖の施設となっていた。

映画では、大人たちの理不尽な暴力の数々に耐え切れなくなった少年たちの蜂起を、史実を基に描いていく。

監督のマリウス・ホルストは、バストイ島の矯正施設で少年期を過ごした人物と偶然出会ったことから本作製作を決意。

なぜならこれら事実は、現在のノルウェーでは知られざる歴史となり、埋もれてしまっていたからだ。

「バストイ島での少年たちによる反乱は、事件当時の新聞にも小さいながら記事として扱われていましたが『島の中でどのようなことが行われていたのか? 反乱の原因は?』ということまで考える人はいませんでした。

非行少年を収容する施設という先入観もあり、取り立てて特別な出来事とは思われなかったのです」と説明する。

ついに怒りを爆発させた少年たちの反乱に対して、政府は軍隊を投入。

独立後のノルウェーで軍隊が投入されたのは、たったの2回。

そのうち1回が、今回の子供を対象とした大虐殺なのである。

これにはホルスト監督も「この事実を知ったときは、大変なショックと驚きを覚えました。

なぜ子供たちに対して、そこまでする必要があったのでしょう」と怒り心頭だ。

製作のために費やされた時間は何と10年。

劇中には、子供に対する大人=権力者による蛮行が映し出されるが「あまりの残酷さ故に、劇中に入れ込むことができなかったエピソードもあります。

恐ろしすぎて言葉に出来ないし、記事可は不可能です」と声を震わせる。

「この島での抵抗と反乱、またその影にあった内情を世界に知ってほしい」というホルスト監督の悲痛な叫びが画面の隅々から聞こえてくる。

バストイ島の少年矯正施設は1970年に閉鎖。

同時に、その存在は人々の記憶からも消え去った。

恐ろしいことだらけのノルウェーだが、ホルスト監督曰く「住み心地もよくて、いい国だよ」とのことだ。

映画『孤島の王』は4月28日より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国公開中。