今季初の決勝に進んだ浅尾美和。7年目のシーズン、過去JBVツアーでの優勝はない。"教官"楠原の指導のもと、悲願の初優勝なるか!

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 ビーチバレー国内ツアー第6戦ペボニアカップは1日、大会3日目を迎え、お台場海浜公園(東京都)にて男女とも準決勝などが行われた。

 男子準決勝は井上真弥・長谷川徳海組(フリー)が日本代表の白鳥勝浩(湘南ベルマーレ)・青木晋平(フリー)組をストレートで下し決勝進出。同じく代表の朝日健太郎(フォーバル)・今井啓介(フリー)組も西村晃一・モカ・モイシス組(WINDS)に敗れた。

 女子は注目の浅尾美和(エスワン)・楠原千秋(ユナイテッドホールディング)組がツアー第3戦の覇者、草野歩・ヘザー・ロウ組(フリー)に敗者復活戦で勝ち、準決勝も日本代表の浦田聖子(千の花)・西堀健実(丸善食品)組をフルセットで破る大金星。浅尾は約1年ぶりの決勝進出。ツアー初優勝をかけ、日本代表の田中姿子(エコ計画)・溝江明香(産能大)組と対戦する。

 見違えるような動きだった。サーブで狙われ連続失点、第2セットは9点しか取れなかった初日の負けは何だったのか。「初戦は(楠原)千秋さんと組むことで緊張していた。自分の悪いところが全部出た」と浅尾は話す。

 今季のシード権を持たない浅尾は、松山紘子(SAND BLOCK)とのペアを解消。2度のオリンピック経験を持つ楠原と組み今大会に出場した。しかし楠原は一線から退き、トレーニングも行っておらず、楠原が浅尾に「持っているものを伝える」ことに重きを置き戦っている。

 敗者復活戦の相手は草野・ヘザー組。第3戦のツアー優勝ペアに対し、押し気味の展開。動きのよくないヘザーをサーブで攻め、ポイントを重ねる。浅尾も相変わらず狙われるが「レシーブを上げさえすれば…と気が楽になった」と連続失点することなくレシーブをこなした。楠原の攻撃も冴え渡り、硬い砂と目まぐるしく変わる風にも戸惑っていたヘザーが苛立ち始めると勝負アリ。ストレートで下した。

 準決勝は浦田・西堀組。日本代表チームであり初日に簡単に負けた相手。しかし進撃は続く。サーブのいい代表チームだが、浅尾も調子を維持しレシーブをこなしていく。楠原が絶妙なトスを上げ浅尾が強打を決める。終盤にはブロックも飛び出し第1セットを奪った。第2セットは西堀のサーブが冴え取り返えされるものの、第3セット。シーソーゲームとなったが、徐々に追いつめられていったのは「指導の課程」で参戦しているチームではなく、やはり負けられない日本代表チーム。最後は自滅した。

 浅尾は会見場で明るかった。明日は自身のツアー初優勝がかかっている。「迷いなくブロックに跳んでいます。千秋さんが指示してくれるので、自分のできる仕事をしっかりやればいい。千秋さんと組むと上手くなった気がする(笑)」「サーブも攻撃も千秋さんが冴えているから、自分はブロックに跳んでるだけ。何にもしていない(笑)」

 ただ、浅尾は気づいているだろうか。微風ながら方向も強弱も目まぐるしく変わっていたコート(ネットを挟んで風の方向が違うこともあった)、楠原はワンプレイごと常に風をチェックしていた。レシーブのポジションに着くと、エンドラインとサイドラインとの距離を必ず見た。簡単なトスアップでも、ツーアタックのフェイントを入れ相手の反応を見て、攻撃のチャンスを探った。常に相手のポジションを考え、ボールの落とす所を決めていった。

 楠原が伝えようとしているのは、そんなプレイの緻密さではないだろうか。それは試合の中で浅尾に伝わっているのだろうか。明日に向け、楠原は言った。「勝ちにこだわるあまり、内容のない決勝にしてはいけない」

 楠原と組む意味、指導を乞うた意味。何かを得なくてはいけない浅尾にとって初優勝以上に重要な決勝となる。