フットボールは本当に戦争なのではないか？

AFCチャンピオンズリーグ2011。全北現代対Ｃ大阪戦は、そのように感じさせられるをえないものだった。

Ｃ大阪のキム・ボギョンが負傷退場させられたプレーは、“一生懸命プレーするなかで、ついファウルしてしまった”という類のものではない。
【必要以上の力を用いて相手競技者を負傷の危険にさらす】という、フットボールから除外しなければいけない、退場となるプレーだ。

播戸竜二は、「（向こうの）作戦とまでは言わないけど、ああやって激しく来るなか、受けたらまたやられるというのがあった」と振り返った。播戸が感じた相手のプレーは、ルールの精神である『安全に、そして公平に』という概念に反するものだった。

「あれぐらいの激しいプレーは当然」という意見もあるが、ラフプレーとフットボールコンタクトは同列に語るものではない。同様のファウルをしたデ・ヨングが、欧州で非難の嵐を浴びたように、選手生活を危険に及ぼすプレーは撲滅すべきものだ。

UEFAやFIFA、さらに南米さえも、今年のコパアメリカを見れば一目瞭然で厳罰を処している。

無謀、あるいは過剰なファウルプレー。さらに、「日本の地震をお祝い（し）ます」というエンターティメントとはかけ離れた横断幕。

UEFAチャンピオンズリーグは、その地域の選手は誰もが目指すブランドだ。しかし、AFCチャンピオンズリーグは、いまだその域に近づけず、かつビッグビジネスとしても成り立っていない。それも、こういった野蛮な行為が横行するゆえにではないかと感じてしまう。

「勝てばなんでもいい」などというサッカーはない。強さだけでは、バルセロナのように広く愛してはもらえない。アジアのフットボールを盛り上げるためには、『リスペクト』の精神を身につけ、フットボールの本質を理解しなければいけないのではないだろうか。

◇著者プロフィール：石井紘人　Hayato Ishii
サッカー批評、週刊サッカーダイジェストをはじめ、サッカー専門誌以外にも寄稿するジャーナリスト。中学サッカー小僧で連載を行い、Football Referee Journalを運営している。著作にDVD『レフェリング』。各情報はツイッター： @FBRJ_JP。