原発事故から3ヶ月以上が経過した6月15日。東京都は1週間かけて都内100ヶ所で放射線量を測定、「東京の放射線量は大丈夫か?」と不安を抱く都民に向け、その結果を公表した。

 その結果は0.04マイクロシーベルト/毎時という数値が半数以上を占め、都内のホットスポットとされていた足立区や葛飾区といった地域でも0.12マイクロシーベルト/毎時。そして最高値は、葛飾区花の木小学校の0.20マイクロシーベルト/毎時だった。

 調査を担当した東京都福祉保健局健康安全部環境保険課の野口かほる氏はこう語る。

「福島県の調査は2キロメートル四方単位で調査をしていましたが、東京都の場合は、それより少し広い4キロメートル四方に区切りました。そのなかから人口密度の低い西部の山岳地帯を外し、その分、人口の多い区や市の測定場所を増やしました。(測定の際は)すべての測定値で30秒間測定を5回繰り返し、平均値で数値を決める慎重な方法をとりました。使った放射線測定器は新宿区百人町の健康安全センターにある高性能のものです」

 かなり綿密な計画のうえで行なわれたようだが、それでも一部の都民が独自に測定した数値とかなり差がある。そこで取材班は、都の調査と同じ100ヶ所で実際に放射線量を計測。その結果、都が公表した数値とあまりにも大きな差が出た。2倍、3倍の差は当たり前。場所によっては5倍近く独自調査の数値のほうが高かったのである。これでは都は、測定したなかで一番放射線量が低かった数値をあえて選んで発表していると思われても仕方がないのではないだろうか。そこで都の担当者に疑問をぶつけると、次のような回答が返ってきた。

「マスコミが使う小型のガイガーカウンターは、もともと高めの数値が出るように作られているんですよ。だから、本格的な放射線量の測定にはふさわしくないんです。でも、まあ、測るのは勝手ですから……。それに、一般の人には放射線量の安全基準がないんです。年間100ミリシーベルトを超えない限り、健康への影響はないんですよ」

 これらの測定値に対し、あくまでも都は「法的には問題ない」という姿勢を崩さないようだが、現在、東京都の市区町村が独自に高性能の放射線測定器を使って、次々と数値を測り始めているという。ある高線量地域を抱える区の環境課職員が匿名を条件にこう語る。

「今回の100ヶ所測定は、独自に放射線測定をしている区民が地域の長を通じて都庁に働きかけたことで実現したものです。ですから、都の発表直後には、あまりの数値の低さに『おまえらは都のウソの片棒を担ぐのか!』というクレームが入りました。今のところは都に遠慮して、独自調査から100ヶ所測定の場所を外している区や市が多いのですが、それをいつまでも許す国民はいないでしょう」

 国や東京都が発表する数値よりも、市や区、または個人で測定した数値が常に大きいという不可解な現象。はたして真実はどこにあるのか。

(取材/有賀 訓)


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