■復興への希望となる、コバルトーレ女川U-18の奮闘

7月3日、クラブユース選手権東北決勝リーグ、ベガルタ仙台ユースに立ち向かったのは、真っ白なユニフォームを身にまとった選手たちだった。3月11日、彼らのユニフォームは津波によって流されてしまった。今大会に向け、ユニフォームは新調されたのだが、それらはなんと遠くイングランドから送られてきた義援金で揃えたものだというのだ。日本だけでなく、世界とも深い絆で結ばれて戦うクラブ、コバルトーレ女川。U-18チームの奮闘が復興への希望となっている。

コバルトーレ女川は東日本大震災で津波によって、壊滅的な被害を負った宮城県牡鹿郡女川町をホームタウンとして活動しているクラブである。当然、クラブも壊滅的な被害を受けた。海のすぐそばにあったクラブハウスは津波により姿を消してしまい、選手寮も半壊状態となってしまった。奇跡的に選手・スタッフは全員無事ではあったが、チームとして活動できる状態ではなく、東北社会人2部南リーグに所属するトップチームは活動停止へと追い込まれた。来年のリーグ参加の意思を表明してはいるものの、いまだに活動再開時期は未定であり、現実的に極めて厳しい状況にあると言わざるを得ない。

■着実な成長を遂げてきたクラブ

06年のクラブ発足以来、09年には東北社会人1部リーグ昇格を果たすなど着実な成長を遂げてきた。ただ、クラブとして大切にしてきたのは、トップチームの強化だけではない。サッカースクールや地元保育園への訪問サッカー教室といった地域貢献活動や、クラブ発足と同時にU-18やU-15の育成チームを立ち上げて育成強化にも力を注いできた。

だからこそ、クラブは「子供は1年間活動しないと選手としてダメになってしまう。とにかく好きなサッカーをさせてあげて、元気にしてあげたかった」(檜垣監督)ということで、震災から1カ月後に育成カテゴリーの活動再開に踏み切ったのだ。

決して満足のいく練習ができているわけではない。毎日1時間程度の練習しかできず、1ヶ月間のブランクがあったため、コンディションを整えることはできていない。そして何より「震災による精神的な被害が大きい。サッカーに集中できないところがある」(檜垣監督)。サッカーをすることはできても、"選手たちを鍛える"ところまではなかなか持っていけない。そういった中での再スタートであった。

それにも関わらず、チームは快挙を成し遂げてみせた。予選リーグで快進撃を見せ、クラブ史上初となる東北決勝リーグ進出を果たしたのだ。「女川の町に少しでも明るい話題を提供できてよかった」と檜垣監督は満面の笑みを見せた。

ただ、それはクラブが地道にチームを強化してきた蓄積の証でもあった。今年の高校3年生はU-15を立ち上げた時の1期生。5年間選手たちを鍛えてきた成果が結果となって表れたのである。

■厳しい戦いの中で際だった選手の頑張り

しかし、決勝リーグの壁は厚かった。初戦の塩釜FC戦で1対4の敗戦、第2戦の山形ユース戦では0対9という大敗を喫している。そして迎えたベガルタ仙台戦。「絶対に勝ちますよ」と檜垣監督は意気込んで試合に臨んだものの、実力差は明白だった。序盤から圧倒的に仙台にボールを支配され、コバルトーレは防戦一方の展開を強いられた。

いつ点が入ってもおかしくない流れの中、際立ったのはコバルトーレの選手たちの頑張りだ。ゴール前で体を張ったディフェンス、1対1で抜かれても最後まで追いかけようとする気迫。「1分1秒を無駄にしない」「とにかく全力を出し切る」。選手たちのプレーにはそういう思いが詰まっていた。8分、34分に失点し、前半だけで2点のビハインドを喫すものの、コバルトーレの選手たちのひたむきな姿勢に変化はなかった。39分にはGKからのロングボールに抜け出したFWの選手がクロスバー直撃のヘディングシュートは放つなど、一矢報いてやろうと選手たちは戦い続けた。後半にさらに3失点を喫し、結果的に0対5という大敗で終わったが、内容を見る限り、5点で食い止めたことは「健闘した」と言えるものだった。