■ 決勝トーナメント1回戦

ACLの決勝トーナメント1回戦。4年連続でACLに出場しているが、過去3年間は、いずれも決勝トーナメントの1回戦で敗れている鹿島アントラーズが韓国のFCソウルと対戦。この両チームは2009年にも対戦しているが、このときはPK戦の末、アウェーのFCソウルが勝利してベスト8に進んだ。鹿島はリベンジを期す。

グループ2位で通過したため、アウェーのソウルでの試合となった鹿島は<4-2-2-2>。GK曽ヶ端。DF新井場、岩政、伊野波、アレックス。MF青木、小笠原、野沢、増田。FW興梠、カルロン。FW大迫、MFフェリペ・ガブリエル、DF西らがベンチスタート。MF本山、FW田代は欠場。

■ FCソウルがベスト8進出

試合は前半からホームのFCソウルが主導権を握る。ウズベキスタン代表のMFジェパロフ、モンテネグロ代表FWダムジャノビッチが中心になって鹿島ゴールを脅かすと、前半38分にFWダムジャノビッチのパスからFWパン・スンファンが右足でシュートを決めてFCソウルが先制する。鹿島は前半はシュートゼロ。前半は1対0でFCソウルがリードして折り返す。

後半開始から鹿島はFWカルロンに代えてMFフェリペ・ガブリエルを投入。<4-2-3-1>に変更して同点・逆転を狙うが、逆に後半10分に左サイドに流れたMFジェパロフのクロスからFWダムジャノビッチに豪快に決められて2点目を許す。その後、鹿島はMF野沢のFKからDF岩政が押し込んでネットを揺らすシーンを作るが、オフサイドの判定でノーゴールとなる。

結局、ロスタイムにもMFコ・ミョンジンに独走からゴールを許して3失点目。終わってみれば、3対0のスコアでFCソウルが勝利。ベスト8に進んだ。一方の鹿島はまたしてもラウンド16で敗退となってしまった。

■ アントラーズらしさは見られず

シュート数は、FCソウルの20本に対して、鹿島は3本のみ。ゴールにつながりそうなシーンもMF野沢のフリーキックの場面くらいで、決定機すらほとんど作れなかった。2年前の対戦では、PK戦に突入する熱戦となったが、この試合の鹿島はいいところなしの完敗だった。

過去3年間のトラウマもあったのか、鹿島の選手は攻守ともにアグレッシブさに欠けており、あっさりと敗れてしまった。「ラウンド16」に対する鹿島の選手の強い思い入れは、至るところから聞こえてきていたが、ピッチ上で繰り広げられたサッカーは真逆で、グループリーグを突破しただけで満足したかのような残念な戦いぶりだった。

実力的には、アジアでもトップクラスのチームであり、ベスト16で敗退するようなチームではないが、ラウンド16が、「鬼門」になっている。震災の影響もあって、グループリーグのスケジュールも変わって、首位でグループリーグを突破できずにラウンド16がアウェーでの戦いになってしまったことも響いたが、鹿島らしからぬ戦いぶりだった。

■ やや不可解な交代

交代を含めた選手起用もうまくいかなかった。前半38分に先制された鹿島は、前半はシュートゼロ。流れを変えるために、後半開始からFWカルロンに代えてMFフェリペ・ガブリエルを投入してきたが、この交代については、やや疑問に感じた。

確かにFWカルロンはボールを失うシーンも多かったが、前半では、唯一、「FWカルロンの頭→FW興梠の飛び出し」という流れだけは、可能性を感じさせるもので、空中戦に関しては、FWカルロンも互角の勝負ができていた。1点ビハインドになって、ロングボールが多くなることが予想される展開だったので、もう少し我慢しても良かったのでは?と思う。

その後、オリベイラ監督は、MF遠藤、DF西を投入。MF遠藤はミスばかりで論外だったが、DF西については、縦への推進力を与えられる選手なので、もう少し早い段階で投入しても面白かったように思う。2点ビハインドの後半35分からの登場となったが、もう少し長い時間プレーさせていれば・・・という気はする。

■ 世代交代の必要性

今、J1の上位クラブは世代交代を必要としているクラブが多いが、鹿島もそうである。MF小笠原、MF本山、DF中田浩、DF新井場、GK曽ヶ端らの黄金世代が30歳を超えてきて、そろそろ厳しくなってきた。依然として、MF本山を除くと、レギュラーでプレーできる力を持っているが、スペシャルな存在ではなくなってきており、怪我も増えてきている。

幸いにして、今オフに、MF本田拓、DF西、MF柴崎を獲得しており、備えはできているが、オリベイラ監督は慎重な人なので、まだ、思い切ったことはできていない。ACLはこれで終了となったが、来シーズンもACLに挑戦するには、同じメンバーではちょっと苦しい。この敗戦が「1つの区切り」となったので、今後、もっと大胆なことがやりやすい空気になる。オリベイラ監督がどこまで手を付けられるかにも注目したいところである。

■ 日本勢でベスト8はセレッソのみ

これでラウンド16が終了したが、鹿島、G大阪、名古屋が敗退したため、日本勢で勝ち残ったのはC大阪のみ。G大阪とC大阪が対戦するという不運もあったが、ベスト8に1チームしか残れなかったのは、非常に残念である。

よくよく考えてみると、リーグ戦の成績は、鹿島が1勝2敗2分け、名古屋が1勝2敗3分けなので、ACLの一発勝負で勝てないのも仕方ないと思えるほどの状況で、「ACLだから勝てていない。」のではなく、「リーグ戦でも勝ててない。」のであるが、それでも、数年前と比べると、J1のトップレベルのクラブが力を落としてきていることは否定できない。

その理由はいくつかあるが、日本人の海外移籍が多くなってきたことも影響している。考えてみると、今年のACLに出場している4クラブに限定しても、ここ1年ほどの間に、MF香川(C大阪)、MF家長(G大阪)、DF安田(G大阪)、DF内田(鹿島)の4人が、海外クラブに移籍している。移籍金やトレーニング費用等の見返りもあるが、単純に戦力としてみると、明らかにマイナスであり、もし、彼らが日本に残っていてACLでプレーしていたら、状況は大きく違っていたことだろう。

海外のクラブに移籍できるくらいの実力のある選手を育てることは、クラブとしても目標であり、海外のクラブに狙われる選手が出てくることは、喜ばしいことではあるが、現段階では、リーグ全体で見ても、その穴を埋められていない。移籍制度が変わったばかりで、リーグ全体も過渡期に入っているので、状況が落ち着いたら、元の状況以上になるとは思うが、3年続けてACLで結果が出ていないのは、気にしないといけないことである。

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