ワールドカップ開幕前もなかなか試合に勝てず、グループラウンド3連敗もあるのではないかという悲観的な意見も多かった日本代表でしたが、ワールドカップが始まってみると初戦のカメルーン戦に勝って弾みをつけると、次戦のオランダにこそ敗れたものの、3戦目のデンマーク戦に3-1で勝利し、見事予選グループ突破。決勝トーナメントこそパラグアイ相手に点を奪えず、PK戦で敗れることとなってしまいましたが、チーム一丸となって闘い抜いて得たベスト16は、客観的に見て評価に値する結果だったと思います。

やはり大会直前だったとはいえ、現実的に守備から入る戦い方を選択したことはワールドカップを戦い抜く上で大きなターニングポイントだったのではないでしょうか。継続性という点ではこれまでの戦い方と違うものだったと思いますし、見方を変えればもう少し早く決断できていれば、より戦い方に見合った選手選択もあったのかもしれません。ただ、こういった方針転換がないまま真っ向からワールドカップの試合に臨んでいたら、厳しい結果に終わっていたのではないかと感じます。

ワールドカップの試合を見ていて感じたことは、(特に南米の)個々の守備意識の高さ、1対1の守備能力の高さです。ここがしっかりしていると大崩れしないチームになりますし、攻撃に人数を掛けられます。日本は他の強豪国に比べると1対1の守備能力が若干足りないと感じましたし、そこでアンカーに阿部を置いて、周囲とのカバーリングを意識した守備でフォローして守る形を作り出しました。これによって守備に安定感が生まれ、竸った試合展開でチームが勝機を見いだせる大きな要因となったのではないでしょうか。

一方で先に失点しないことを意識し、チームとしてはやや重心を後ろに置いた戦い方を選択したことで、必然的に相手がボールを持った時間帯が長くなって、そこからチャンスをうかがう戦い方になりました。本田とそれをフォローする松井・大久保を起点に遠藤や長谷部が絡んで駒野・長友の攻撃参加を引き出すその攻めは、形を作るという点では一定の評価ができるものとは思いますが、それをゴールに繋げる攻撃の厚みやフィニッシャーの不在は否めず、本田・遠藤といった直接FKを決めることのできるキッカーの存在は、大きかったと感じました。

今大会の戦いぶりから考えると、今回のような戦い方でも欧州中堅国クラスなら十分戦えるとは感じましたが、個の能力が高い南米や欧州の強豪に対して、今後どうやって対抗していくのかという部分は、4年後までに考えねばならない課題だと思っています。組み合わせ次第では予選を突破するだけの力はあるチームにはなりましたが、今大会で見れば相手が直接FKを警戒してきた場合に得点を取る手段に乏しく、ベスト16は見えても、ベスト8やベスト4を目指すには、もっと点を取るパターン、戦い方を増やす必要性を感じました。

今後も組織的な戦い方がベースになるのは間違いないでしょうが、個の能力のベースを引き上げること、メンバーが変わってもある程度のレベルを維持できるだけの層の厚さを作っていくことも必要です。特に得点を期待できる前線の軸となるFW、世界で戦うとなると高さだけでなく機動力も兼ね備えたCBは4年後までには出てきて欲しい。今いる選手たちは今まで以上に意識を高く持って周囲に好影響をもたらせてくれるようでしょうし、今回はできることをやりきったからこそ、できたこと、できなかったことが今まで以上に鮮明になったのではないでしょうか。

今大会はいろいろ決断するまでに時間が必要な要因があったのか、最適なメンバー構成という点では十分でなかったかもしれませんが、今の日本代表ができることはある程度やりきった印象はありました。これで4年後に向けてリスタート。それまでに何ができるのかよくよく考えること、特に将来に向けて育成の方向性をきちんと定めていくことも重要なテーマになります。同時に日本代表が現段階でできるだけの成果を出したからこそ、それをどうJリーグに繋げていくか、サポやチーム、リーグが一丸となって考えたいですね。

記事をブログで読む