幸先よく先制した日本だったが…<br>(photo by Kiminori SAWADA)

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  イビチャ・オシム前監督なら、「肉でも魚でもない」とでも振り返っただろうか。1−1の引き分けに終わった、6月10日のカタール戦である。

  モチベーションを持ちにくい試合だったのは間違いない。ウズベキスン戦以降の選手たちは、予選突破の感想や本大会への抱負を何度も聞かれていた。チームの周辺は、明らかに騒がしかった。モチベーションをあげにくいだけでなく、集中力を保ちにくい環境でもあったのである。

  疲労もあっただろう。ウズベキスタンから帰国して、中3日のゲームである。コンディションが万全であるはずがない。

  ジャッジにも恵まれなかった。短髪が特徴のモハマド・サリー主審は、04年のアジアカップ準々決勝で、PK戦のゴールを変えたあの主審である。最近では昨年10月9日のUAE戦(1−1)を裁いた。日本からすると相性は悪くないはずだが、この日は首を傾げたくなる場面がいくつかあった。

  中澤佑二がPKを取られた場面などは、どちらがホームかと突っ込みたくなる。PKについて聞かれたGK楢崎正剛は、「厳しいですね」と即答した。「ジャッジがあまり日本に向かないのはしょうがないし、アジアのなかではよくあることだから、それを想定しながらやってましたけど……」

  難しい試合になる条件がここまで揃ってしまったことを考えると、1−1の引き分けは妥当だったかもしれない。カタールが昨年11月の対戦より、かなりアグレッシブだったことも考慮しなければならない。20歳前後の若手を積極的に登用したことで、粗削りだが迫力のあるチームになった印象がある。

  しかしながら、看過できないシーンもあった。たとえば41分である。センターサークル内の中村俊輔が、同じくサークル内の阿部勇樹へボールを下げる。阿部も最終ラインへ下げようとしたが、このパスを狙われてボールを失う。カタールが4対2の数的優位で日本のゴールへ向かった局面は、相手のシュートミスで辛うじて事なきを得た。

  バックパスや横パスを狙われる場面は、キリンカップから繰り返されてきた。チリ戦の38分にも玉田の横パスをカットされ、決定的なシーンを作られている。

  能動的なミスによるピンチなら、まだしも納得はできる。だが、一度ならず冷や汗をかかされたパターンを繰り返すのは、チリ戦が反省として生かされていないと言わざるを得ない。モチベーションや疲労を言い訳にできないミスであり、こうしたミスを減らしていれば、もう少し引き締まったゲームになったのではないかと思う。

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