「このマンガがすごい!2009」オトコ版1位を獲得した「聖☆おにいさん」。モーニング・ツーで連載中の、聖人の日常を描いたギャグ漫画である。

 無事世紀末を乗り越えた「ブッダ」と「イエス」。働きづめだった自分たちへのご褒美とばかりに長期休暇を取ってアパートをシェアし、東京は立川での生活を満喫している。浅草へ観光に出かけ、秋葉原でショッピングをし、お祭りやクリスマスを楽しむ2人。それは本当にありふれた日々なのだが、ブッダとイエスというだけで本人たちにも予想のつかない愉快なことが起こる。

 この作品におけるブッダとイエスとはただの記号やあだ名ではなく、あのブッダとあのイエスのこと。ブッダは少しでも徳の高いことを行ったり言ったりすれば後光が差すし、イエスは感情が高ぶると水をワインに、石をパンに変える“奇跡”を起こす。当たり前のようにブッダはブッダであり、イエスはイエスなのである。

 漫画ならではのキャラクタライズも絶妙。ブッダは倹約家であり家事が得意なしっかり者として、一方のイエスはブログに精を出しコスプレに興味を持つ今時の若者風に描かれている。これが意外としっくりきており、現代社会にあの2人がいたらこんな感じだろうか、などと馬鹿げたことを考えてしまうほど不思議なリアリティがあるのだ。

 この作品は、国民のほとんどが無宗教であろうこの国でだからこそ成功した漫画である。これが例えば他の国で、他の宗教の聖人を登場させていたら大問題となっていたであろう。宗教に頓着しないと同時にMANGA大国としても世界に名を馳せる日本ならではの名作である。

 ありきたりな毎日を、会話を中心に描き出しているこの作品は、雰囲気だけなら「THE3名様」に近い。しかしそれよりもずっと毒がなく、多くの人に受け入れられる仕上がりとなっている。宗教モノと勘違いして毛嫌いするのは早合点だ。

 とはいえ、この作品は仏教やキリスト教の有名なエピソードをある程度知っていた方が断然楽しめる。涅槃や聖痕といったキーワードを押さえて置くだけでもまったく違うので、興味をもったなら一度調べてみるのもいいだろう。聖人であるはずのブッダとイエスがぐっと身近に感じられるに違いない。

 明日23日はコミックス最新刊である3巻の発売日。大人気となっている作品だが、まだたったの3巻なのである。今ならば大人買いをするにしても金額も重量も大したことはない。早めの決断が吉だ。

(編集部:三浦ヨーコ)


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